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ダークな感じさそれでいい  作者: 濱上翼
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第3話、正義の行軍

墓場の剣士レオルドとのにらみ合いはその後二日続いた。

屍の集団を新たに作成するためオルバー海峡の西に位置する崖まで兵を引く。

夜通し監視の目を休めることはない。そんな静かな戦いの中マリンフィルから西の方角にあるエルバー砦が謎の紅十字架を掲げた軍隊に制圧された。

その様子を聞いたコルセットは唸り言う。

コルセット:ロマリア帝国か・・・

コルセットはそう呟くと昔の事を思い出していた。

20年前ロー大陸王都ロマリアにて

幼い少年が黒焼けになって発見される。その子の名前はルイス無二の親友レッドロー大佐の一人息子だった。

俺がその子を手にかけてしまったのだ。

ルイスは無邪気なそこら辺にいるような少年だった。ただ少年が違っていたのはロマリア人なのに炎を出す力が無いことだ。その時俺は自分の炎を出す体質を克服し普通の人間になることを目指していた。俺の望みは炎に呪われた体との決別だった。

ルイス:いいなコルセットさんはロマリア人じゃないのに炎を好きに操れて。ねぇねぇ僕にもそんな力どうやったらできるかな。

コルセット:そんな力必要ない人を痛めつける技など。聞いてくれ少年よ炎人族は皆最後は自ら生み出した炎に焼かれ死ぬんだ。こんな力何がいいものか。

ロマリア人は焼け死んだりしない。自在に炎を指から出し操る。炎人族と何の違いがあるのだろう。それを知りたいがためこんな果てまで来たのだ。

レッドロー:そう息子に難しい話はやめてくれまだ10歳だぞ炎人族の末路など知らないんだ。

その時だ本部からレッドローに連絡がありその場を後にする。

レッドロー:すまないコルセット本部から呼び出しだ。息子の面倒を頼む。

コルセット:あぁいいよ

レッドロー:ありがとうルイス直ぐ戻るからな。とルイスの頭を撫でる。

ルイス:はい

レッドローがいなくなりルイスは言う。

ルイス:コルセットさんお願いです僕にその力分けてください。

このまま僕は炎を出せなければ農民になる。そんの嫌だよ。僕は正義に紅十字を背負って戦地で戦うんだ。男に生まれて戦うことができないなんて嫌だよねぇお願いだ力がいらないなら僕にくれよ。

コルセットは難しい顔しルイスの手を握る。

コルセット:こんな子供が俺に頼んでいる。もしこの子が特異体質ならワシの苦しみは無くなるのだろうか。いいだろう俺の炎の力分けてやる。といい覆面を脱ぎ全身から煙を出し着火した。

この痛みから解放されるなら俺はどんなことでもする。

次第に炎はルイスの手に吸い込まれルイスは歓喜した。

ルイス:はははは凄いこれが炎の力かくっだけど凄く苦しく熱い。

コルセットは急いで覆面をつけ焼けただれるルイスを見た。

次第にルイスの全身は真っ黒く焦げ焼け死んだ。一瞬の出来事だった。

俺は罪もない夢に向かって生きる元気な少年を手にかけたのだ。

一時間後レッドローが家に帰り変わり果てた息子を抱きしめ俺に激怒した。

俺は何度殴られようが無抵抗で謝り続ける。

しかし身の危険を感じた時俺はついに覆面を脱ぎレッドローと対峙した。

炎と炎のぶつかりあいで周辺は焦げくさく森林に燃え移り俺は煙に塗れロマリア帝国から逃げた。

20年の時を過ぎ今また復讐に燃える男がブルガリアの胸壁を超えウェスタンフォードを襲う。

毒舌のアベル:いやはやあの燃える赤十字架の印はロマリア帝国兵だぁー本当に奴ら剣誓会と一戦交えるきか正気の沙汰ではない。

門番のジェームス:アベル様ぁー大変ですウェスタンフォードの住民が騒いでいます。

皆マリンフィルに向かう船着き場で渋滞が発生し兵士の殆どが戦いを放棄するとのことです。

毒舌のアベル:なんちかぁー僕を守る兵は一人もいないと言うのか。

こんなことになるなら僕は大臣という職務を放棄するんだった。

船着き場にて・・・

兵士:あの数を相手にどう戦えっていうんだ皆荷物をまとめマリンフィルに退避しましょうさぁー急いで船を出すぞぉー。

毒舌のアベル:ちょっと待てお前戦わずして逃げるは黒剣士の恥ぞ。

兵士:俺は中途採用のペイペイだぞそんなことは知るかさぁー船をだせぇー。

毒舌のアベル:こいつは市民を扇動する敵兵だ。捕らえ牢に入れろ。

兵士:おいおいお前こそ市民の命を考えないお偉いさんだ。自分が良ければいいんだろ。

こいつこそ羊の皮を被った狼だ。こいつは市民の命と引き換えにロマリア帝国と繋がっているんだ。俺は昨日見たぞお前がロマリアの使者に頭を垂れる所をな。

毒舌のアベル:何を言うかえぇーい誰か誰かこいつを黙らせろ。

門番のジェームス:そんなことよりアベル様、敵に投降する準備をしましょう。ここに戦える兵はいません。

毒舌のアベル:なにぃほんとにか僕の記憶が正しければこの地を守備する黒剣士集団がいたはず。

そいつを呼んでこい。

門番のジェームス:そんな昔の事確かに昔は屈強な黒剣士はいましたが高齢化が進みもう黒剣士集団は剣誓会が解体しました。今残っている者はバーナードという男が率いる小隊です。

毒舌のアベル:そのバーナードっていう奴は知らないがそいつと話をさせろ。

門番のジェームス:すみませんそれは無理です。二日前近隣に夜盗が出るのでその取締りをうっかり頼んでしまい留守です。

毒舌のアベルは口をもごもごさせ怒り狂う。

毒舌のアベル:僕の周りに集まるのは本当に役立たずばかり僕には本当に人徳がない。

敵に白旗を振る準備にかかれ。まさか無抵抗の市民を殴り殺すほど敵は残忍ではないということを祈るばかりだ。

門番のジェームス:わっ分かりました無条件降伏の用意にかかります。

こうしてウェスタンフォードは一時間もかからず降伏した。

城を明け渡すとアベルは頭を垂れレッドロー大佐の足で頭を踏まれアベルは蹲る。

レッドロー:何だ何だ情けない黒剣士という種族はこんなに情けないのか。

敵に命乞いはっ笑えて来るぜ。

毒舌のアベルは泣きながら声を上ずらせ答える。

毒舌のアベル:ぼっ僕は黒剣士じゃない。例え市民の命を犠牲にしようが僕だけは助けてください。

市民:このクソ大臣お前は剣誓会の恥ださっさとくたばれ。

市民:お前それでも国家に雇われた大臣か。

レッドロー:うん?大臣だとお前黒剣士のお偉いさんか?

毒舌のアベル:ひっいえいえ僕はそんな偉くなんかありません。この者達は何か勘違いをしている。僕は野蛮な黒剣士じゃない鬼族きぞく出身の地方役人です。

黒剣士からはこき使われる役職です。

レッドロー:ふむそうかこいつと少し話がしたい捕虜は地下牢に繋げ。

老人:自分ばっか生き残ろうとは愚か者め。必ずや天罰は下るであろう。

レッドローはその老人に向かい指から火を出し老人の心臓を逸早く打ちぬいた。

それを見たアベルは引きつったような表情を浮かべ黙りこむ。

レッドロー:ふぅー俺は気安く天罰だの神だの言う奴は嫌いでね。で泣き虫大臣、これからお前がロマリア帝国に対し服従するなら命は助けてやろう。

毒舌のアベル:服従します。

レッドロー:服従の証をここえ皇帝陛下のみなもと誓ってもらうぞ。衛星通信機をここえ。

小さな化粧箱のような物が手渡されその中から光と共にハロルド皇帝陛下の顔と声が現れ聞こえた。

皇帝ハロルド:忠誠を誓うか。名を何という。

毒舌のアベル:はいアベルです陛下

皇帝ハロルド:うむよろしい無条件で降伏し民の血を一滴も流さなかったその慈悲に対しお前に役職を与える。

レッドロー大佐の副官補佐の役職を与える。

毒舌のアベル:ははぁー恐縮です身の余る思いです皇帝陛下万歳。

皇帝ハロルド:それではアベル副官補佐にデビルアーマーを数千与える。それを従え初陣をきるがよい以上だ。

毒舌のアベル:はーはぁーと頭を垂れた。

副官のリロイ:それでは私に仕えてもらうぞこいアベル作戦会議だ。

アベル:はいリロイ様

アベルは大広間へリロイを案内し大きな地図を指さし言う。

アベル:マリンフィルという街があります。ここから一番近い軍用施設完備の街です。

そこを落とせば王都へ繋がる中央路へ行けます。しかしその途中死の沼地と呼ばれる所があります。ここには少し厄介な者がいましてそこを通らないで迂回すれば王都へはすんなりと行けましょう。

リロイ:なぜ死の沼地を通れない。我らには重火器装備の機械兵団があるのだぞ。

死の沼地など焼き払ってやればいいだろう。

アベル:死の沼地にいる沼地の龍族を過小評価しない方がいいと思います。

彼らは少数ながらも一人で鬼八百の力を持つ種族です。

彼らを怒らせればどんな災難があるか考えるだけでも恐ろしいことです。

リロイ:我は現代文明を生きる者だ過去の産物など破壊すればいい。

我らロマリアに恐れる者はない。我の行く手を阻む者は誰であろう死んでもらうまでだ。

アベル:しかし

リロイ:くどいぞアベル副官補佐、二日も時間をロスすることは許されないのだ。

一刻も早く忌々しい黒剣士らの首をロマリア帝国皇帝陛下に捧げる事が重要なのだ。

沼地の龍など恐れることはない。我らロマリアの力に屈服し道を素直に明け渡すだろう。

さぁ時間が無いぞアベル副官補佐、沼地の龍とやらと開戦だ。

数時間後ロマリア帝国軍はウェスタンフォードから進撃を開始した。

デビルアーマーと呼ばれる黒く紫がかった機体が特徴の機械兵団を従えリロイは死の沼地を行軍した。

しかし行軍途中沼地に足を阻まれ行軍速度が落ちていく。

それにリロイはイライラし行軍を止めた。

リロイ:水陸両用の機械兵団でもこの沼地の泥濘は行軍を妨げる。

これでは敵に囲まれれば我らはハチの巣になるだろう。

アベル:しかし都合よく沼地の龍の姿はありませんこのまま行っても大丈夫でしょう。

その時だ背丈の高い草をかき分け数名の戦士が現れる。

戦士らは下半身泥につかり手には武器を持っている。

謎の戦士:誰に断りなくこの道を汚すのか。

リロイ:どこの言葉だ誰か分かる者はいるか。

咄嗟にアベルは10カ国語を話せる特技を見せ謎の戦士の問いに答える。

アベル:我らはロマリア帝国だお前達に害を与えることはない。

我らの敵は忌々しい黒剣士だ。沼地の民よ安心して退かれよ。

沼地の戦士:片言だが生意気な発音だな。我らの地を誰の許しを得て通っているのかと聞いているんだ小僧。

アベル:背は低いが小僧ではない。僕はロマリア帝国副官補佐のアベルだ。

僕達は通りたい場所を自由に通るだけだ。誰に許しを乞うのだろうかこっちが聞きたい。

沼地の戦士:我らの神アスラの許しを得ることなくこの地を汚すことは許されない。

早々に立ち去らなければ開戦と見なす。我らは一滴の血を流さずお前達を殺すだろう。

アベル:ふん面白い沼地の龍の力ぜひ見てみたい。

沼地の戦士:いいだろう後悔はするなよ一度抜いた剣は鞘には収まらない。

そう告げると沼地の戦士の一団は退き背の高い草が多く生えた隙間から鋭い矢が飛んできた。

それと同時に心臓を騒ぎ立てる音がロマリア帝国兵の体に駆け巡る。

リロイ:何だこの胸からこみ上げる声は誰か止めてくれ声で体が引き裂かれそうだ。

それを見た黒い鎧兜に包まれた男戦士ジークフリードが言う。

ジークフリード:木霊か戦士を鼓舞する古の術だ。

アベル:死ぬぅー死んじゃう声に殺されるぅーとジタバタと暴れる。

ジークフリード:来るぞ。銃剣隊構えろ。

その言葉と同時に雄叫びをあげた龍の兜を被った戦士が泥の上を歩いて飛び跳ねこちらに短い槍で攻撃を始めた。

ロマリア帝国銃剣隊らは一発銃弾を打つ間に龍戦士らは泥を跳ね上げ駆け回り短い槍でロマリア帝国兵の急所を突き刺し短刀で首を掻っ切って回った。

血に汚れた沼地からは沸騰する音が聞こえその中から足を絡め取る泥の手が無数に襲いロマリア帝国兵を泥の中へ引きずりこんだ。

リロイはその突然の奇襲に機械兵団の重火器で応戦した。

しかし銃口目指し泥が駆け巡り流れ込むとロマリア帝国機械兵団は機能を失い。

ただの鉄くずとなった。沼地の龍の戦士らは追撃の手を休めず容赦なく襲う。

沼地の龍戦士は皆一斉に泥の盾を纏い乱射し後退する銃剣隊らの攻撃を退けた。

その攻防の中でアベルは泣きながら自軍をかき分け逸早く逃げ出した。

アベル:僕はこんな所で死ぬわけにはいかないんだ。

リロイ:一度後退し隊を立て直すぞ。

ロマリア帝国兵:撤退 撤退の音を上げろ。

静かな沼地にうるさいほどの撤退を知らせるラッパの音が響く。

慌てたのかロマリア帝国軍を象徴する軍旗は泥に汚れ踏みくちゃにされた。

敵の慌てように沼地の龍戦士は自分らの勝利に歓喜し踊った。

その手に握られた剣は敵の血で汚れ味方の血は一滴も流れなかった。

沼地には数千の動かなくなった機械兵団が沼地に沈み横たわっていた。

デビルアーマーを与えられ殆どを失ったアベルはレッドロー大佐に殴られ頬を腫らし指揮をとったリロイには罰として鞭打ち100回を受けた。

その状況を重く見た赤虎の異名を持つシャロー将軍は言う。

シャロー将軍:最強を誇る機械兵団が一日も持たず敗戦するとは皇帝にどう釈明すればいいのか。

レッドロー:未熟だったとしてもこの敗戦は大打撃です。どうしますか将軍。

シャロー将軍:ロマリア帝国には二度の負けは許されない。飛行型機械兵団を数千機導入して沼地の龍戦士の集落を焼き払え。この際だ我らの恐ろしさをこのユー大陸に住む者らに教えよ。

レッドロー:将軍!!飛行型機械兵団をここで無駄にするのですか。王都襲撃に温存するべきです。飛行型機械兵は普通の機械兵より燃費が悪くこちらには機械兵団を維持する燃料も余りありません。

シャロー将軍:そうだが仕方ない。我らにあだ名す者は容赦しない。燃料の工面は何とか手配しろ。それがお前の任務だ。

レッドロー:はっ輸送部隊と相談します。

同時刻沼地の集落にて・・・

龍の戦士長老テムテム:あれほど言ったのにお前は理解していないのかルシリアスよ。

ルシリアス:我らの地を汚す無法者に引導を渡したまでだ。

長老テムテム:ルシリアスよまだ分からぬか。力によって解決はできないということがだ。

いずれ報復の日が訪れようその時お前は見るであろう。真っ赤に染まった仲間と我が故郷を。

今からでも遅くない道を正すのだ。そうすれば悲しい未来は訪れない。

ルシリアス:あの無法者と和議を結ぶとでもいうのかテムテムよ。それが誇り高き龍の戦士の言うことなのか。

長老テムテム:仲間を守るためプライドを捨てよ。今ならばまだ遅くはない。

ルシリアス:龍の戦士は臆病ではない。敵が攻めてくるなら何度でも戦い勝利するそれが我らだ。

龍の戦士:うぉお!!我らは誇り高き龍の戦士恐れる者は何もない。

長老テムテム:馬鹿なことを神アスラの加護があらんことを・・・。

長老テムテムがそう願いを込めた時辺りに地鳴りが聞こえる。

ルシリアスは短刀を持ち家から出て空を見上げた。

そこには生まれて今だかつて見たこともない大きな鳥が大空を飛んでいた。

両翼の根元から大量の弾薬を落とし集落はあっという間に真っ赤な炎に包まれた。

爆撃で粉塵が飛び家を支える大きな柱に長老テムテムは下敷きとなった。

ルシリアスは必死に声をあげテムテムに呼び掛けるが応答はなかった。

悲しみと憎しみが入り混じりルシリアスは短刀を握り絞めた。

崩落する集落から何とかウッドの森に逃げ延びた龍の戦士らは焼け崩れる故郷を眼下に収めた。

一夜明け眠れぬ夜を過ごす龍の戦士の生き残りらは故郷を機械兵に踏みにじられた。

赤く燃える十字架が描かれた軍旗が焼け落ちた集落後に立てられ龍の戦士は屈辱を味わう。

機械兵団は縦横無尽に行き交い沼地の集落は行軍する兵士の足跡に消された。

ルシリアスは歯を食いしばり悔しさを滲ませながらウッドの森を生き残った仲間を連れ歩いた。

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