第2話、屍の王
崖の上からは王都に続く開門が見える。私達は屍の集団が積み重なり揺れ動く異形な光景をみた。
開門の上からは火炎放射器で応戦する様子も伺える。
私達は何とか助かった。だが彼らは窮地のようだ。私の胸の奥からは何か熱い物がこみ上げてくる。その時私の口から出た言葉に皆は耳を疑ったようだ。だが皆の結束は固かった。
ラスティーユ:仲間を助けに行こう。
リリア:あぁいい考えと言えないが行こう。だがもう少しで夜が明ける朝になれば山岳を行った仲間と合流できるはずだ。それまでに小川で我慢できない臭いを洗い流し疲れを取るため少し寝よう。
ルシルダ:念のため見張りは各隊から交互に出そう。
レド:はぁーあ俺らを見捨てた司令官を助けに行く羽目になるのか。こんな端金に釣られて来なければよかった。
ファーゼル:確かにな、だが何も知らない王都の連中を守るのが我らの役目だ。
そのために税金で飲み食いしてるんだろ。
レド:へいへい雇われ剣士はつらいなぁー。
リリア:無駄口叩かず野営の準備をしろ。手の空いてる奴は食事の支度だ。
所で兵糧を運んでいた小隊は無事か?。
バレル:はい残念ですが大半は逃げるときに穀物の袋が破れて失いました。
残っているのは僅かですが粟と麦と干し肉くらいです。
それもこの人数で捌くなら二日位しかもたないでしょう。
リリア:二日か厳しいな。
戦争で一番大事なものをあげるとするならば睡眠と飲食だ。
ブルガリアの胸壁から流れる猛烈な寒さを凌ぎなおかつ体内でガードナーを作りだす力は一人前の男が一日に必要な摂取カロリーである。
兵糧の残りからすれば半日ももたないだろう。今私達は空腹に悩む腹ペコ剣士なのだ。
幸いにもアクアラインから流れる清流が腹を満たした。
マリーオーネの山岳を超え敵陣に先方として向かったクラナイトという低俗な連中の帰りを待つ時間はなさそうだ。
寒さで飢える前に私達は率直な決断を強いられることとなる。
そんな中野営地のテントは暴風が吹き荒れ冷たい風が容赦なく襲う中ルシルダは奇妙な疑問を投げかける。
テント内にて・・・
ルシルダ:敵はどうやって陣形を組み屍の集団に伝達をしているんだろう。
あんな大軍を一人で操るなど不可能だ。
リリア:私も思ったが奴ら死んでいるが命令は聞いているようだ。
一見獰猛に見える連中だが何かあるのは確かだ。
ラスティーユ:奴ら屍兵に群がる蠅が気になる。もしかして蠅の羽音で伝達網を操るのではないのだろうか?。
ルシルダ:そうか私昔子供の時虫飼いという連中と一戦交えた時奴らは虫を使って攻撃したり自分の傷を癒したりする技を会得していた。
ファーゼル:それじゃ今回の司令塔は虫飼いが絡んでいるのか?。
ルシルダ:それは分からないけど。
その時だ大柄の男黒剣士が身の丈を超す誓いの剣を振い声をあげる。
怪鳥のガウディ:いやぁーあそこで死体を担いで敵を掻い潜るとはさすが我らのリーダーは凄いぜ。あの赤い長髪くぅーいいね。
俺もあんな知恵があれば兵糧を守れたかもしれんな。
オルバド:そうだなだが本当に今生きてるのは不死鳥のリリア様のおかげだぜ。
ラスティーユ:おいおい全部いいとこどりはリリアか私が考えた策だぞ。
バレル:まぁまぁそれよりラスティーユ姉さんの意見レドの烏型ガードナーに乗せて仕入れた情報を司令官に届けなくてはね。
レドは干し肉をかじりながら言う。
レド:無理無理俺のガードナーは眼はいいがそんな飛行距離無いんだ。
その声を聞いた怪鳥のガウディが言う。
怪鳥のガウディ:何だお前飛行部隊で弱小の烏坊やじゃねぇか生きてたのかよふははは。
レド:何だともう一回言って見ろ。
バレル:喧嘩はするな罰則をくらうぞ
リリア:レドを馬鹿にするあんたは伝達を無事に司令官の元に届ける自信があるんだろうね。
怪鳥のガウディ:あぁ俺のガードナーは世界一周くらい朝飯前だぜ。
リリア:そうかその力見せてもらおう。今からガウディを情報伝達部隊の隊長にする。
後方支援頑張ってくれ。
その頃王都に続く第一関門は屍の集団の猛攻により陥落しロウハンらは後退を強いられた。
ロウハン:くそぉークラナイトどもから全然連絡がない。
コルセット:むむむ西に配備していた若き黒剣士1000名の行方も不明だ。
奴らが死体を積み上げて開門を次々に落としていくぞ。援軍はまだか。
黒剣士:申し上げます黒い先鋭三黒柱、隻眼のレイアースと黒山羊王クレゾール、袁王ジャックハードらが苦戦、直ちに第二関門を解錠されたしとの連絡が来ております。
第一関門中央路にて・・・
隻眼のレイアース:その頭吹き飛ばすよ!!クレイジーボムといい地面に拳を叩きつけた。
その衝撃に地割れから紫の光が吹きあがる。それに飲まれた屍兵は形を残さず浄化した。
それに劣らず月夜の重臣の息子クレゾールが貴族だけに許された力、変身能力トランスを使い黒山羊の姿に変貌した。彼は黒く鋭い角で屍兵を退けた。
クレゾール:荒れ来る敵を押し返せフォールドタックルといい数百の屍兵の群れに飛び込み力技を見せ屍の集団を門前まで押し退け黒く鋼鉄の強度を誇る肉体と腕力で屍兵の腐った頭をぶち取り投げ捨てる。
ジャックハードは大猿にトランスし雄叫びをあげながら屍の群れを剛腕でなぎ倒す。
彼ら彼女らの勇士に覆面剣士コルセットは唸る。
その頃ラスティーユら小隊の知らせを聞いたロウハンは援軍として参上した紅玉の騎士らに言う。
ロウハン:ラッパ隊で大きな音を立て敵の伝達を混乱させよう。
オスカー:原始的だそんなことで敵が引くとも思えん。
それより地理尻になった者を集め海岸沿いで挟み撃ちをしてはどうか。
その策を考えたやたらと利口なやつに伝令を送れ。
紅玉騎士:はっでどのような伝令を?
オスカー:ウッドの十字路に向かいクラナイトと合流せよ。
ロウハン:ヨーク山脈の山村兵クラナイトなど戦力になるのか?
それより北側に向かわせた黒剣士を呼び戻し合流させてはどうか。
オスカー:それはだめだオルドー海峡の岸辺に野営する主犯格墓場の剣士レオルドを討ち逃がしてはだめだ。この戦い奴の首をあげてこその勝利だ。レオルドに度肝を抜かれたが本来の作戦で行こう。なぁーに私達が援軍としてきたのだ奴らの好きにはさせん安心してくれたまえふははは。
一方墓場の剣士レオルド陣営にて・・・
墓場の剣士レオルド:卑劣な共和国の王の首が欲しい。奴は下僕ながら主を騙して王を名乗る奴だ忌々しい。我が座るはずだった王座は汚されている。
ボーカジャッカ:その通りであります旦那様
蝙蝠人間レム:奴は卑しき者で王と名乗るに相応しくありません。本来ユー大陸の王位は我が主の者誰がなんと言おうともです。
雪原の魔女スノール:しかし敵も中々やります。魔女の英知ガードナー技術を操る黒剣士が厄介です。もっと泥兵を増やしましょう。
屍兵には荷が重すぎる。奴らも剣の心得はある屍兵は伝達が遅く動作も遅いのが難点です。
しかし泥兵は不死身に近い斬ろうが突こうが焼こうが殺戮は止まらない。
奴らも直絶望し屈するでしょう。我らが王レオルド様に。
ゴブリン兵:紅王万歳紅王万歳レオルド王に栄光を
墓場の剣士レオルド:ふははは忌々しい種族など皆殺しだ。我に楯つく者は容赦するな。
我こそ本当の王ということを歴史に刻ませてやるは。
一方死体の山を駆け上がる泥兵に黒い先鋭らは苦戦していた。
レイアース:何だこのドロドロの生き物は!!私の攻撃が効かない。
一時第二関門まで撤退し隊を立て直す。
ロッシュ:あいよ姉さんといい黒いボディーのバイクを滑らせ後ろにレイアースを乗せ退いた。
クレゾールとジャックハードも後を追いかけ第一関門は悔しくも陥落した。
ロウハン:敵も馬鹿ではないようだ。どうやって進撃を食い止める?。
コルセット:むむむむ考え過ぎて頭がハゲそうだ。
その言葉にコルセットの娘ゼドロフが答える。
ゼドロフ:一見泥兵は無敵そうでも最大の弱点が見える。奴の原動力を断てばいいの。
体のどこかに電磁クリスタルがあるはずよ。
そこを狙い討ちにすれば楽勝よ。黒い先鋭の攻撃手段戦闘バイクを使って重火器で攻撃し進軍を止めるのがいい方法ね。
コルセット:子供が大人の話に入ってくるなお前はまだ黒剣士見習いだろ立場を弁えなさい。
ゼドロフ:いいじゃんお父さんはいつもいつも私を子供扱いにしてベーと舌を出し挑発した。
コルセット:はぁーすまんなこんな時にロウハン。
ロウハン:重火器で応戦か少し武器庫を見てこい。
コルセット:本気かあんな子供の案を飲むのか。
ロウハン:だめもとでも時間が稼げる。西の砦にも伝達しろ。確かあそこには大臣がいたな。
西の砦ウェスタンフォードにて
丸い瞳に涙を滲ませる小坊主、毒舌の異名を持つアベル大臣は今日も職務に追われ眠気覚ましのドリンクを片手に大量の資料を読み漁っていた。
毒舌のアベル:こんな最果てに飛ばされ早何十日、僕が赴任して争い事は一度も起こって無いと言うのに。中央のマリンフィルから援軍要請が来ている。
ここは素直に兵を出すべきなのか。しかし相手はあの不死身の男レオルドだぞ。
全然昔と考え方は変わってないのだろう。あの時裏切った僕を絶対許しはしないだろう。
とても危険な香りがする男だ。
最近の情報では紅王リュークの生き写しのような残虐な性格で農村を二つ陥落させ罪もない人々を虐殺した。実に恐ろしい。もし援軍を出してこちらに矛先が向かえばこのウェスタンフォードは血の海だ。その時判断を誤ったとなった場合最悪僕は死罪うぁぁぁぁんどうしたらいい。
黒剣士:アベル大臣、エルバーの砦より使者が来ています。どうしますか。
毒舌のアベル:うるさいっちぞ僕は今それどころではない。数少ない兵力でどう戦を進めるかの決断を下そうとしているのだ。
黒剣士:はっしかし急用との事会見なさっては。
その言葉と同時に大柄のヴァンウルフ族の男戦士ダリルが言う。
ダリルは赤い毛を纏い暑苦しい姿であった。
ダリル:ウェスタンフォードは本当に熱い。
毒舌のアベル:誰が勝手に入っていいと言った。
ダリル:うるせぇチビ俺はロマリア帝国の使者として参った。
無条件でウェスタンフォードをあけ渡せばここに住む者全ての命を助けるそうだ。
そうロマリア帝国ハロルド様は言っている。もうじき剣誓会の力は衰えるだろう。
その時の身の振り方十分にお考えあれ。
毒舌のアベル:なんちか僕に敵に寝返れってか。
ダリル:そうですこれは天命とお考えあれ。
同時刻マリンフィルにて・・・
月夜の重臣と呼ばれるディアバール共和国最高貴族の会議が開かれた。
月夜の重臣マルク:ふむで今回の会議の内容は?
月夜の重臣シャリークラウン:会議を始める前にレオルドの目的を知りたい。
なぜ奴が今になって王権を取り戻そうとするのか。
月夜の重臣アークヘル:数百年前の恨みだろう我らが紅王リュークから奪ったこの土地が目的ではないのか。
狼王ダーク:奴の目的の一つは紅眷族が残した七宝の奪還だろう。
深紅の首飾りブラッディ・アイ、世界を破滅させる槍バルバロスの槍、今だ所在が分からぬ物五つ魔剣ロストカリバー、大陸弾道砲別名シリウスの雨、無敵戦艦白鯨、暴食ガードナーネフェルティティ、破滅の書だな。
これら全てを手にした者は王となれる我らはそれを二つ所有するが適合者は現れぬ。
やはり紅の血筋が絶えた今それらを起動させるのは不可能なのかもしれない。
だが墓場の剣士レオルドの血を手にすれば我らに怖いものはない。
全軍をあげて墓場の剣士レオルドを捕らえよ奴の死を持って数百年前の戦いに終止符を打つのだ。
同時刻オルドー海峡にて・・・
墓場の剣士レオルドは昼夜休みもせず第二関門攻略に向け動き出す。
墓場の剣士レオルド:さすがに敵も疲れが見えてきたか。
泥兵には投げやりは効かぬぞ。ご自慢のガードナーでの攻撃も限界が見えてきている。
黒い先鋭黒剣士:門の隙間から泥兵がなだれ込んでくるぞ。
土石流となった泥兵は分厚い門を破壊し次々と泥水の中からその姿を見せる。
門を破ったのを見計らい屍の馬に乗った屍騎兵がなだれ込んできた。
第二関門虎ノ門で激しい攻防が繰り広げられる。
紅玉の騎士らは盾を前に出し一列に並び屍騎兵に対処した。
オスカー:怯むなぁー全員レッドグラスを解放せよ。
その声に紅玉騎士の眼から赤い涙が流れ眼を赤く光らせ怪力を発揮する。
一人で700キロ以上ある屍馬を薙ぎ払い。朱雀のガードナーで泥兵を焼き払った。
それを見たロウハンは声を失う。
ロウハン:あれが限界点まで鍛えてなせる技レッドグラスの力か凄いぞ次々に敵を倒してくぞ。
覆面剣士コルセット:むむむなんと赤い風が吹き始めた。これが全ての欲を無くしただ戦うためだけに生きた人なのか。まるで鬼だな。
どす黒い血を流し倒れる泥兵、屍騎兵を嘲笑うように集団でレッドグラスになった騎士らは敵を押し返した。
軽鎧と盾に敵の矢を受けても止まることは無かった。ただそこにいる敵を必然と狩る。
彼らには恐ろしさはない。仲間が結束し怯むことはなかった。
だが疲れと飢えで倒れる者も現れる。
次第に攻防は屍の集団に軍配が上がることになる。
3日続いた戦いの犠牲者は数知れない。そこでロウハンは黒剣士の疲れを取るため後方に残していた黒剣士と総入れ替えし敵の進軍を阻止しようと試みる。
しかしついに痺れを切らした墓場の剣士レオルドがそこに立ちはだかる。
墓場の剣士レオルド:こんな所で3日も時間を削るとは。
黒剣士:しねぇー
黒剣士:墓場に帰れ
二人の勇士がレオルドに剣を向けるしかしレオルドは血のように赤い眼で睨み眼力で向かってきた黒剣士二人の頭をふっ飛ばした。
それに驚いたオスカーは言う。
オスカー:あれが紅眷族だけに許されたブラッディ・アイか!!。
墓場の剣士レオルド:ふん見て分かってであろう、お前達がどう足掻こうと皆殺しは決定されている。死んで仲間になり我を王と称えよくはははは。と両手を開き笑った。
ロウハン:迷い事をと言い放ちレオルドの頭上に向かい剣を放つ。
コルセットは覆面を脱ぎ全身を炎で包み東方の炎人コルセットの異名を見せる。
墓場の剣士レオルド:ほぉ勇ましい者が二人もと言いロウハンの剣を剣で受けた。
ロウハンの剣撃で地面は陥没し同時にコルセットの火拳を受け止め言う。
墓場の剣士レオルド:炎人とは珍しいとっくに滅んだ者かと思っていたぞ。
二人とも死ぬ前に名を名乗れ。
ロウハン:龍心のロウハン
コルセット:東方の炎人コルセットだ。
墓場の剣士レオルド:我はこの世の王レオルド=バルバロスといい両手の剣を手の中で回し一瞬にして二人を攻撃した。
ロウハン:早い何という速度だ。ガードナーで鎧を作ってもこの痛手。と肩に血を滲ませ言う。
コルセット:確かに剣の速度は見えないだがこの私には実体が無いぞ。
そんな攻撃で私は殺せんぞ。
墓場の剣士レオルド:ふはははだがお前には欠点がある。その自らの炎で焼け死ぬというな。
確か炎人は自ら炎を放出する体質だったな。冷却用の覆面を脱いで3分しか戦えない種族だ。
なんとも可笑しな種族だ。覆面姿の時はただの人より劣るという。
そんな手負いとなった二人でこの我を倒せるのか?。
我の剣儀を見て生きていた事は心に残しておこう。さぁ遊びは終わりだ。
ロウハン:間合いに入ったな龍心打ちと叫び攻撃した。
龍のガードナーをレオルドの心臓目がけて円を描き射抜いた。
龍心打ちでレオルドの心臓の動きが一瞬遅れるとコルセットが顔面目がけて被弾を繰り出す。
焼けた肉の匂いが漂うとレオルドは怒りの表情を見せる。
コルセットの頭を手に握る二刀で払い吹き消した。
墓場の剣士レオルド:ガードナーで心臓を打つとは驚いた。普通の人間には通用する技だろうが
残念我の心臓はもう機能してはいない。この場に及んでその程度の技を繰り出すとは少々驚いて戸惑ってしまった許せ。
コルセット:くそぉー奴を倒す方法は無いのかこちらも限界がきている。といい炎の色を蒼くさせ言う。
ロウハン:化け物めがコルセットお前は覆面をつけて逃げろ。私が時間を稼ぐ。
オスカー:まだ私もいるぞ。
隻眼のレイアース:私もです皆で倒しましょう。
クレゾール:僕も
ジャックハード:死に場所はここでも構わないぜ。
墓場の剣士レオルド:愚かな奴らめいいだろう全員骸に変えてやろう。
コルセット:私には余り時間はない速攻で行くぞ。といい蒼い炎を手に集めた。
コルセットは全身の炎を一気に右手に集め蒼炎の爪と名付けた技を使った。
蒼い炎が踊り燃える5本の指はレオルドの肩に食い込むとレオルドは悲痛の表情を浮かべた。
コルセット:どうだ屍の王よ私の技の威力はいくらお前が死人だろうがこの痛みに耐えれるかな。
肉が焼ける焦げくさい臭いにコルセットの表情は明るくなる。
だが次の瞬間コルセットは一回転させられ地に伏せた。
墓場の剣士レオルド:数百年我の体に触れた者はいなかった。といい髪の毛を赤い無数の蛇に変え真っ赤に染まった眼で地に伏せたコルセットを見下ろす。
ロウハン:いかんコルセットあの姿になったレオルドに触れてはいかん。神話が正しければ触れる者を消滅させるという。
墓場の剣士レオルド:この姿にさせるほどの戦士が現れるとはサラマンダーそれが我の特殊な変身能力の名前だ。
サラマンダー化したレオルドは髪の毛を無数の赤い蛇に変えゆらゆら動かす。
そして口から勢いよく死滅の炎が吹き荒れる。
その炎に触れた者は麻痺し焼け死ぬという。
コルセットは全身に自分が放出する炎でレオルドの炎に立ち向かい二つの炎は合わさり大爆発した。
サラマンダーの炎はコルセットの全身に巻きつきまるで蛇が餌となる生物を絡め取るかのようであった。炎で焼かれ締め上げられコルセットは必死に足掻き海の方へと急ぐ。
歩くたびにヒシヒシと体が悲鳴をあげコルセットの意識を奪うほどの激痛が走る。
コルセット:あの炎はやばい炎が炎を喰らうかの如く。体中は痛いし何なんだよあいつの炎の力は・・・。
墓場の剣士レオルド:間抜けな奴め次はどいつが死にたいのかな。
それを見たジャックハードは猿人化しレオルドに向かい剛腕を放つがレオルドの真っ黒いガードナーに攻撃を阻まれレオルドの体に触れることなく吹き飛ばされ舌を出し気絶させられる。
その様子を見て恐怖を覚えたロウハンは残る仲間に言う。
ロウハン:オスカー、レイアース、クレゾールよく聞け全員束になっても勝てないかもしれんがそれでもいい俺に時間をくれ。
その問いに三人は頷き一斉に剣を抜いた。
ロウハンはオスカーにコルセットの覆面を託し片腕に全力を溜め始めた。
唸り声が木霊する中レイアースとクレゾールはレオルドに向かい戦いを挑む。
その時だ墓場の剣士レオルドの背後からラスティーユを筆頭にした小隊が屍の集団を吹き飛ばしながらレオルドに挑む。
挟み撃ちになったレオルドの顔は一瞬強張ったが笑みに変わた。
墓場の剣士レオルド:下賤な黒剣士らが何人集まろうがこの我を倒せはしない。といい両剣を交差させ抜き放った。
墓場の剣士レオルドは剣と剣をすり合わせ辺りに衝撃波が駆け巡る。
大地を裂くほどの威力がある衝撃波で数名の黒剣士は吹き飛ばされたが百戦練磨のレイアースはその中で剣をレオルドに向け放った。
その衝撃はレオルドの体を地面に沈め黒山羊化したクレゾールの剛腕がレオルドの鳩尾を抉る。
背後からはラスティーユ、レド、リリアが雷と風と炎の混ざりあった3色のガードナーの攻撃を放つ。
凄まじい威力のある攻撃に墓場の剣士レオルドは白目をむいて倒れた。
ラスティーユ:奴をやれたか?
次の瞬間墓場の剣士レオルドは空中に浮きクルリとこちらを向く。
黒光りする稲妻を放ち髪の赤いサラマンダーを無数に揺らめかせ言う。
墓場の剣士レオルド:最悪の種がよく育ったものだ。撒いた種は自ら狩らねばならぬ。
よくぞ数百年でここまで戦える人材を育てたものだ。今我は感動し歓喜している。
長かった本当に我を倒す者が生まれるまで全力を尽くし狩り殺してやろう。
レオルドはクルリと体を回転し地面に着地すると両剣を横に回転させ一番近くにいたレイアースを一瞬で斬り倒した。
淀む黒いガードナーがレオルドの体に巻きつき刃となってクレゾールの体を貫くと真っ赤な眼で後方にいるラスティーユを見張った。
それを危険と見たオスカーは海水で忌まわしい炎を必死になって鎮火させ項垂れるコルセットに冷却覆面を託しレッドグラスに変貌し剣を抜く。
赤いオーラを纏ったオスカーは一瞬で移動すると剣に気合いを込めレオルドの両剣を受けた。
オスカーの足は地面を引きずり刃からは火花が散る。
レオルドの開眼したブラッディ・アイがオスカーの体を捉えると睨んだだけで体を三回転させた。
しかしオスカーは体勢を立て直すと背後から剣を振り抜く。
その剣は空しく赤いサラマンダーの口で止められオスカーは全身を焼かれその場に倒れた。
それを見たレドが恐怖を口にした。
レド:あいつに勝てるのか、熟練した黒剣士が三人もあっという間にやられた。
その言葉が耳に届いていないラスティーユは剣を抜き墓場の剣士レオルドと対峙した。
ラスティーユ:これでも喰らいな龍衝円舞・螺旋といい赤い龍のガードナーを自分の体を中心とし円を描くように回転させ剣に巻きつけ剣と一体化させ踏み足と同時に全力の突きを放った。
螺旋を描く斬撃が墓場の剣士レオルドの必中する。その威力は台風並みで全ての塵を巻き込み稲妻が肉を焦がしレオルドの屈強な体に痛手を負わせた。
レオルドは地面に両剣を刺し怪しく笑う。真っ赤な視線がラスティーユの心臓を押しつぶそうとする。
私は一瞬睨まれて息ができなかったがロウハンの溜めて放った龍衝打撃の風圧が私の顔を掠め駆け抜ける。
ロウハンが皆の思いを込めた龍衝打撃が海へと着弾し海原を陥没させた。
次の瞬間海は荒れ大波がこちらに向かう。
墓場の剣士レオルドはその光景に高笑いし言う。
墓場の剣士レオルド:見事だお前達は私の予想を超えた。我の負けだふははは。と高笑いし大波に飲まれた。
ロウハン:湿気たサラマンダーはもう使えない後はお前達に託そうといい引きちぎれそうな右手を振った。
ラスティーユはずぶ濡れになりながら剣を取り俯き動かぬレオルドに剣先を向けた。
ラスティーユ:古の王よこれで終わりか。
墓場の剣士レオルド:いいやまだだまだ終わりたくない。例え腐敗した体でも王の椅子に座るまで何人犠牲を出そうとも俺はこの世の王になる夢は果てぬ。
裏切りの歴史を刻んだ卑しき王から王権を奪い返すまで我は何度でも戦う。
ラスティーユ:あんたの過去に何があったかは知らないがお前の負けだ。
投降してもらうぞ。
その時だレオルドの配下蝙蝠男レムが濡れたレオルドに覆いかぶさり言う。
レム:旦那様諦めてはいけません必ず時はきますそれまでお逃げください。
その声にずぶ濡れのレオルドは笑い言う。
墓場の剣士レオルド:そうだな諦める所だったよ。半身削られ動くこともできないがまだ死んではいない。
墓場の剣士レオルドはゆらりと立ち上がり地面に投げ出された剣を掴んだ。
そして真っ赤な眼で睨むと後方で揺らめき佇む屍の集団に伝達を送る。
墓場の剣士レオルド:さぁ一気に王都まで駆け抜けるぞ。数ではまだ我らが有利お前に止められるかなくはははは。
ラスティーユ:くっ貴様ぁーと剣をレオルドに向かい振り抜くが蝙蝠人間レムの片翼がそれを阻んだ。
レオルドはレムの足に捉まり空を飛び後方へ退却した。
夕焼け陰る頃蝙蝠のような羽の出す音を聞きながら私は唇を噛みしめそれを見送った。