第29話、歩く災害と失われた文禄
漆黒続く名も無き森の片隅に黒い刃を抱き骸となる男は一時代を築いた。
それを冷たく見下ろす紅の眼差しがある。
その傍らの錆びた黒剣を手に取りその魔女は塵に変えた。
そして魔女ハロウェンは茨に囲まれた大陸をふと見上げた。
ハロウェン:この者の解き放った怨念を集めて超えて行かねばならないのか。
どんなに悔しい事だろうなアレイスよとその悲しそうな骸に手を翳し吹き飛ばした。
ハロウェンは騒めく心を落ち着かせながら語る。
お前の一撃は重かった、傷が癒えるまで150年は費やした。
お前の最後は栄光とは程遠いいのだろうな。無様に野ざらしにされて・・・
さすがに剣一つでは広大な大地を統一できなかったのだろう。お前の最後は仲間に裏切られてここで眠っているのだな。
高貴な貴族の私に太刀をいれたのはお前だけだ。この傷を胸に抱きお前の死を囁こう。
その魔女ハロウェンは歩く度に大地を焦がし憎しみに満ちた眼で茨の守りを攻略するべく一人歩く。
腕周りはある茨に囲まれた監獄で虫の大軍を焼き払いながら進む。
しかし茨は再生し続ける終わらぬ攻防は続く。
ハロウェン:しかしよくできた守りだ。鋼鉄の剣でも火でも通らぬか。
ここは大地が乾燥して全ての水分は茨が吸い取っているようだ。空でも飛べぬ限り出る方法はない。
完全体じゃない私一人では茨の監獄から出ることも難しい。
アレイスの怨念の力を借りて体力を回復しよう。と炎を引きづり後ずさる。
予言では銀色の男が訪れるだろう。ハロウェンは未来を眼の中で感じ吐息を吐く。
大地の裂け目では鋼鉄の強度を持つ食えぬ昆虫が蠢く。
まさにここは虫の監獄である。
夜のは恐ろしい姿をした鳥が飛び回る。ハイエナのような動物も多く生息している。
野生溢れる茨の大地に一人取り残されたハロウェンは君主の最後の姿を思い浮かべる。
150年前の出来事だ。
アレイス率いる黒い先鋭とマリアンローズ率いる部隊がその時絶大な勢力を伸ばす我ら紅眷族に抵抗を見せこの地で決戦した。
私はリューク王の命令でこの地の開拓を命じられた。
アレイス率いる黒い先鋭は姑息にも海を船で渡り王都を侵略する。
紅王リュークは夜盗崩れの輩に破れたという報告を受け私は剣を握り王都に向かい5万の大軍を進行させた。
しかし王都付近の川はせき止められアレイスが赤い眼差しで私達と対峙した。
その時見たのは王の首であった。傍らには私の仲間の首が三つ並んでいた。
アレイスは紅王リュークの首を軽く投げ渡すと怨念に巻かれた黒い剣ロストカリバーを抜く。
アレイスの後ろでは鬼族を取りまとめた小柄な男アベルが叫ぶ。
アベル:王の首は思ったより軽かったぞ。と鼻で笑う。
ダーク:鬼神も首だけでは何の力もないようだ。
ローザ:この王もクソの役にも立たない御託を言っていたなぁーなんだっけか。
フローラ:力押しの王などこの世に必要としない。民衆を殺して行く王は王であらず。
アベル:投降するなら今の内だぞハロウェン。
そしてハロウェンを怒らせる出来事が目の前で起こる。
私が開発したガードパートナー通称ガードナーの技術を夜盗が巻き付けていたのだ。
そして背後からアレイスが単独で5万の軍勢に交じり私の背を斬りつける。
大地を破壊すほどの凶刃が私のプライドを崩す。
鮮血が舞い散ると私はアレイスを睨み返す暇もなく倒れ意識を失った。
その後は覚えてない私の血が大地を焼き5万の大軍は怒声を上げて向かう。
制御を失った5万の大軍に押し切られ背後からも紅軍が三名の武将を筆頭に3千騎を連れディアバールで挟み撃ちとなった。
援軍は当分望めず残ったアレイスら6000名の軍団とディアバールで籠城する。
マリアンローズも足に負傷し戦える武将は少ない。
アレイス:後方からは三万弱、前からは3千騎か後方の仲間も今頃死闘を繰り返しているのだろうな。
剣一つあれば勝てると思っていたが威力がだんだん弱くなっていくのを感じる・・・。
振るたびに髪が白くなっていく。
マリアンローズ:私が守りを築いている間体力を回復させろ。とアレイスを励ます。
その二人を見てダークはせせら笑った。
ダーク:茨に呪われた女騎士なんかに励まされるとは相当アレイスも弱っているな。
どうせ茨の女も俺達の盾になるのにアレイスめ恋してやがる。
兵士:ロドム様がせき止めた川の破壊に成功し戻りました。
三万弱の軍勢はしばらくは攻め入ってこないでしょう。
アレイス:はぁーそうかあの力自慢のロドムが任務を正確に果たして帰ってきたか・・・。
狼人ダーク:後は茨の成長を待つばかりだなとナイフでマリアンローズの心臓を一突きにして川へ投げ入れた。
アレイス許せよ仲間のためだ。と冷淡な眼でアレイスの表情を伺う。
ロドムもへらへら笑い何が起きたかも分からない。
茨の糧となったマリアンローズを追うようにアレイスの顔は涙で汚れていた。
絶望と悲しみと怒りのさなかアレイスはダークの冷淡な行動に睨み返す。
アレイスの眼が赤く光ると黒剣士の最高位レッドグラスに変貌した。
茨の幹がそれを養分にして一夜で成長する。皆は外壁からよじ登る兵隊を押しやり一夜を明かす。
皆は疲れ切った様子で地下の食糧庫に集まり口論となった。
アレイス:なぜそこまでして生きなければならないのだ。一体何のための戦いなんだ。
出鱈目王を殺すのが目的じゃなかったのか。あの3000騎は一体どこからやって来て逃げる船まで焼き払われて彼女は死んだ。そして俺達はこんな狭い所に追いやられて・・・。
ロドム:人はいつか死ぬよ。
アレイス:黙れロドムその舌斬りとってやろうかと掴みかかる。
ローザ:食料も残り少ない10日でケリをつけないとなぁー。と手の中でナイフを転がす。
ダーク:さすがに鋼鉄の鎧を纏った軍馬相手じゃ天下のアレイス様の剣では殺せない。
救援が来るまで餓死しないことを祈ろう。
フローラ:心配するところが違います荒れ果てた大地に恵みの雨がいつ振るのか。飲み水は全部茨の守りに消えました。
2日後・・・雨は降らず喉の渇きが襲う。仕方なく軍馬の生き血を飲み防ぐ。
ダーク:このまま俺だけが生き残れば、フローラが死ねば女王は誕生しないくくく。
未来の女王いつまで耐えられるのやら俺は獣でよかったぜ。
ロドム:あぁー真水が飲みたい水ぅー。と舌をべろべろさせ喘ぐ。
アベル:僕はお酒を隠し持っているのでいいけど絶対に皆にばれないように飲まなくては。
アレイス:気がおかしくなりそうだいつ雨が降るんだと空の樽箱を蹴り上げ言う。
ローザ:人間は弱いなぁー
全員:お前はいいよなヴァンパイアで!!。
10日後、光が見え始める黒猫剣士モノクロームと狂獅子ブラッドロアらが3千名を蹴散らし活路を見出す。
レオルド:後方の軍勢は全滅か。あの猛将二人を討ち取り俺もここで死のうか。と一騎で駆け抜ける。
レオルドは二刀を構えブラッドロアと激しく斬り合う。後ろからは黒猫剣士のモノクロームが歩み寄り三者が卓越した戦いを見せる。
崖に追いやられたレオルドは二刀を振り回すがブラッドロアの槍に胸を突かれ軍馬は黒猫剣士モノクロームの刃に怯えレオルドは落馬し悔しそうに二人を見上げる。
ブラッドロア:投降するなら命くらいは助けてやろう。
レオルドはその言葉に怒りを覚え立ち上がるがブラッドロアの槍先がそれを断る。
槍先にはじき返されたレオルドは悔しそうに言う。
レオルド:必ず復讐してやるぞ。
モノクローム:そうかその言葉受け取ったと一刀で胸を斬られがけ下へ転落する。
紅王の息子レオルドはモノクロームの一撃を食らい崖下へと消えた。
ブラッドロア:さて未来の王女を迎えに行くかと軍馬の手綱を引き3万の軍勢でディアバールの茨の守りを切り裂き進み駆け抜ける。
しかし未来の王女フローラは喉の渇きに耐えられずに逝ってしまう。
王座陥落のまま時代は流れていく。
その後アレイスも不覚だったのだろう。あざとい仲間に連れだされ命を奪われたのだ。
3人の刃、ヴァンパイアの女王ローザ、汚れの王ダーク、鬼の子アベル、がアレイスを呼び出し
殺害を試みる。
アベル:この世の覇者アレイス様重いでしょうから剣をお持ちします。
アレイス:あぁ・・・
アレイスは水分不足から考える力もなく命より大事な剣を手放し、初めて恋した人を失った悲しさを背負い茨の門を潜る。
アベルは口達者にロストカリバーを奪い、ダークは背後からアレイスを羽交い絞めしローザが姑息にも短刀でアレイスをメッタ刺した。
ローザ:そんな状態で世界を任せられるか。甘いんだよ私は晴れて一等地の王女だ。
ダーク:楽しかったぜお前といれて・・・
アベル:アレイス僕は皆に脅されて・・・
アレイス:俺は全てを失うのか・・・。と意識朦朧の中仲間の声を辿る。
ダーク:誰か来てくれ残党にアレイスがやられた。
蝙蝠人間のレム:アレイスをどこに運べばよろしいでしょうか。
ダークは舌打ちし蝙蝠人間のレムに小銭を投げて茨の向こうへ行けと言わんばかりに告げる。
アベル:こいつがアレイスを殺したぁー誰かきてくれぇーと騒ぐ。
その後あざとい男ダークは王となり今の時代で汚れの王と蔑まれ一人の女黒剣士の剣で倒れた。
夢で見た勇ましい女黒剣士の事を今でも思い浮かべる。
この茨の監獄から出るのは100年後かそれまで眠りにつこうと白い繭の中に入った。




