第1話、結束する者達
そんな中アベルはウェスタンフォードに赴任するため門番と小競り合いをしていた。
毒舌のアベル:はなせっちいいよるがーはなせっちいよるがー僕を誰だと思っているんだ。と短い足をばたつかせ足掻く。
子供の背丈しかないアベルは門番の男ジェームスに軽々と首根っこを持ち上げられ門の外につまみ出された。
アベルは泥まみれになって潤んだ目で門番の男ジェームスを見上げた。
ジェームス:ここは子供が来るところではないんだ。それに嘘はいかんな自分が国家職務の大臣だって今頃の子供はそういう巧みな嘘もいうのかねぇー。
毒舌のアベル:だから何回も言うが僕は今日からここに赴任する大臣のアベルだぁーここに書状もあるんだぞ。と小さな鞄から泥まみれになった書状を手にし言う。
門番の男A:ジェームスさん確か今日あたりだったか貴族の方々がここに視察にくるそうですよ。
ジェームス:マジかそれはいかん子供よお前との話は終わりだしっしと手でアベルを追いやった。
その時だ豪華絢爛の馬車が通りかかる。
それに乗る月夜の重臣マルクと偶然アベルは目が合った。
マルク:おいおいそこの者確かアベル大臣ではありませんか。その姿どうされました。
毒舌のアベル:マルク殿ここで会えたのも何かの縁を感じます。酷いもんです僕を怪しい子供と間違え城にも入れてもらえずここの門番は本当に頑固で強情です。
マルク:そうですか警備体制が厳しくなったせいでしょう。すみませんねアベル殿ご苦労かけます。
おい門番この方はアベル大臣だ早く風呂と着替えを持て来い。
ジェームズ:えぇーこの方が高名なアベル大臣ですか。はいただいま
門番の男A:あれが神話の生き証人アベル様か想像とは違うなぁー。
こうしてようやくウェスタンフォードの土を踏んだアベルであったが怪しい影は忍び寄っていた。
そんな中太陽が沈み闇が広がる日食の日に北から侵略者が現れる。
彼は屍の馬に跨り死者死霊を連れ腐敗臭を漂わせる兵士の大軍を連れてきた。
彼ら屍の集団は農村を焼き払い家を破壊し女子供も容赦なく殺した。
ある農婦は息絶えた子供を胸に抱き泣き崩れ死んだ子供は不死者となり力なく泣き崩れる農婦を手にかけた。親を簡単に殺す非道な行為に屍の集団を率いる男、墓場の剣士レオルドは笑う。
血も涙もない残虐さでそこにいる全ての者を殺し軍を進める。
農村襲撃から生き残った農婦らは剣誓会に陳情した。黒剣士らは直ちに大陸防衛線を引き、屍の集団を率いている者で通称墓場の剣士レオルドと対峙した。
その全責任を任された男黒剣士ロウハンは覆面剣士コルセットと共に優秀な黒剣士を集めた。
その中に酒に喧嘩好きな女黒剣士ラスティーユ、この物語の主人公も登場する。
黒山羊亭にて・・・
私は一人でウォッカを飲みながら手の上でナイフを転がし壁に縛られた親友にナイフを投げつける。
ラスティーユ:いつになったら借金を返してくれるんだいなぁレド。
レド:まってくれって明日には大きな仕事が天から舞い降りてくるって死んだ婆ちゃんが枕元でそう囁くんだ。きっとこれは何かいいことのまいぶれだって。
ラスティーユ:私は神は信じないし死んだ奴がどうこうぬかすのも信じちゃいない。
もしお前の婆ちゃんが何か告げるとすれば私の借金をお前が汗水垂らして返せってことぐらいか。といいナイフをレドの頭上スレスレに投げ突き刺した。
レド:ひぃーやめてくれぇー金は返すって
ラスティーユ:ふんそう男が嘆くことか許してくれって言うのは死ぬ前にそういうもんだ。
その時だ陽気な音楽が流れる酒場に相応しくない赤髪の女黒剣士リリアが現れる。
彼女は不死鳥の異名を持つ優秀な黒剣士だ。
不死鳥のリリア:ふん雑魚ばっかでお馴染みの負け犬ども戦争が始まるって言う時にここの黒剣士らは間抜けだなふははは
ファーゼル:リリア様の言うとおりだこんな所で油売ってないで早く行こう。
バレル:皆さま待ちに待った傭兵のお仕事ですよぉー。と背の低い男黒剣士が叫ぶ。
バレルはブカブカの上着の袖を振り回し踊りながら依頼書を配る。
その依頼書を見たとたん皆は口を揃えて報酬の値段に驚く。
真っ先に驚いたのは壁に張り付けにあい酷いめにあっていたレドであった。
レド:婆ちゃんありがとうこれで俺も真っ当な黒剣士になれる。
見ろよこれで借金チャラだどうだラスティーユ俺の正夢の力はくははは。
ラスティーユ:戦争に行って命があれば五千万ルークか。
しかも隊長はあの有名な龍心のロウハンか。
バレル:生きる伝説ですよラスティーユ姉さん。
レド:ロウハンと言えば一級の黒剣士その左胸にはダイアモンド製の勲章が輝くという。
リリア:黒剣士の階級は胸の勲章ブローチの石の高価さに因んでつけられる。
最高クラスの黒剣士なんてお目にかかった事はないな。
そんな方と戦場で熱く熱くなれるんだぜといい体からメラメラと炎を燃やす。
その炎は赤い髪をさらに赤くし危うく黒山羊亭を全焼させるかと思うほどであった。
ファーゼルは急いでリリアにバケツに入った水をぶちまけリリアを鎮火させた。
ずぶ濡れのリリアは雨に濡れた子犬のように身をブルブルさせ言う。
不死鳥のリリア:こんな高収入は滅多にない。皆現実を考えろ。
私達の持てあましてきた時間、全て取り戻すならハイリスクハイリターンな戦争上等じゃないか。
今の自分の濁った眼でもう一度見てみろ。戦う敵も無く錆つきそうな剣を見ろ。
鍛えてきた肉体を見ろこんな時のための物だろうが。
こんな堕落した生活とはおさらばだ。さぁ行くぞ私達は黒い先鋭に入団する。
ラスティーユ:おいおい敵がどんな奴と言う情報も無いのに危なくないか。
こんな高収入絶対何かあるって。
リリア:あれあれれ鬼のラスティーユと呼ばれた貴方様がびびってるの。
ラスティーユ:なんだともういっぺん言って見ろ。
バレル:はいはい喧嘩はそこまで案内役は私がかいました。
皆さんは街の中央広場に向かいますよ早く早く。
王都ディアバールは何層にも分かれ民家や兵舎がある。円状のクレーターの中に築かれた都市で一番最下位には木漏れ日しか射さぬ薄暗い中央広場がある。
その真ん中には聖母マリアンローズの石像が悲しそうに立っている。
マリアンローズかつてディアバールの街を侵略者から守り抜いた英雄である。
数百年前ディアバールが侵略者に包囲され陥落寸前にまで追い詰められた。
陥落寸前市民は一人の女黒剣士マリアンローズに縋った。
彼女は自らのガードナーに思いを託し自分の命と引き換えに茨でディアバールを覆った。
その茨の守りは鉄壁で焼き切るのも不可能であった。
茨に傷を入れればそこからまた新たな茨が生え強固となっていく。
陥落寸前だったディアバールの守り神となったマリアンローズの命は失われたが敵の兵糧が尽きるまで茨は再生し続けたという伝説が残っている。
茨を体に纏い自分を犠牲にしてまで一国を守り抜いたその姿は誰もが一度見れば胸に何かこみ上げてくるだろう。
それなのに悲しい表情をしている。
そんなマリアンローズの苦悩に満ちた人生を覆すように中央広場は開戦への熱気に溢れた。
見渡す限り屈強な黒剣士が数名の仲間を引き連れている。
そんな中でも片目に眼帯をしその奥に深い傷を隠す隻眼のレイアースが叫ぶ。
隻眼のレイアース:酒に堕落したポンコツの野郎どもやお譲ちゃんらに言っとく。
戦場は死ぬ場だ臆病者はいらない。私と肩を並べて戦うには私が提示した最低条件をクリアする事だ。黒剣士に必要な体術ガードナーを使えるかだ。
お前達も黒剣士のはしくれならもちろん自分の体外に宿しているはずだ。
淡く輝く宝石をそれは黒剣士に生まれた家系の子供なら生まれた時必ず外科手術で体外に埋め込まれる。
その宝石通称エランダの碑石という。
私はそれを使いこなせる者を求める。まぁガードパートナー略してガードナーを使いこなせる者だ。ここに集まった諸君にはガードナーの形は問わない私に見せてくれ。
形状や種類によって各班に配属してもらい戦闘技術を学んでもらう。
一ヶ月後には晴れて君達は正式な黒い先鋭の雛となり戦場に赴いてもらうことになる。
その時に報酬は自動的に君達の口座に振り込まれるだろう。
これから言うことは黒い先鋭の合言葉だ。命を燃やせ剣よ、命を繋げ剣で、勝利の美酒は我らが飲む。
それが我ら黒い先鋭だ。さぁ見せてくれお前達のガードナーを・・・。といい鷹のガードナーが背後で両翼を広げた。先端の薄紫の羽が光に照らされ風に舞い散り淡い炎となり消える。
その演出に誰もが息を飲む。大きな鷹が頭上で羽ばたくと誰もがそれを眼で追った。
それを見て集まった黒剣士ら野次馬らは叫ぶ。
野次馬黒剣士ら:うぉぉおやってやるぜ。カッコいいぜ隻眼のレイアース隊長。
クレゾール:さぁ並んでください。こちらの部屋でガードナーを召喚してください。
トランスできる貴族の方の入団はガードナーは必要ありません。
貴族の方はこちらに進んでください。
貴族の男:誰かと思えば黒羊王のクレゾールじゃありませんかこれはこれは頼もしい。
ラスティーユ:クレゾール??誰だそれ
レド:お前黒羊王クレゾールを知らないのか。田舎者だねぇー全く。
奴はあんな小柄な体型して二トンはある黒羊に変身できるのさ。因みにディアバール共和国の貴族全員が獣や珍獣に姿を変えられるのはご存じかな。
ラスティーユ:えぇーそうなの全然知らなかった。
リリア:田舎者ねで所で貴方ガードナーくらいは出せるのよね?。
ラスティーユ:そもそもガードナーてなに?
リリア:えぇ!!お前のへそに開いているピアスがエランダの碑石じゃないのかよ。
ラスティーユ:えぇこれがあのガードナーの器なのかい。と驚く。
レド:俺は耳のピアスがそうだけど何ラスティーユはガードナー無しでその強さ!!。
バレル:姉さん怪力だけで今まで黒剣士名乗ってたの!!。いてて姉さん
ラスティーユ:怪力女って言うな。とバレルの耳を抓った。
誰か教えてくれないかガードナーってどうやって召喚するんだ。
レド:うーんどういえばいいのかなただ頭に思い浮かべて宝石に光体を作りだすのだが。
リリア:イメージが大切だね。私は大空を羽ばたく不死鳥をイメージしたな。
レド:リリア空飛べるのはいいよね。俺も自分が空飛べたらいいなって子供の頃思っていたんだ。
だから俺は庭によく遊びに来ていた烏にしたけど。
バレル:僕は力強い肉食最強のライオンだね。
ラスティーユ:うーんそんじゃ私は負けない。どれよりも強い空も飛べる龍にする。
でどうやるの???
バレル:あらら龍は確かに強いけど実際に見たこと無いからイメージが湧かないよ。
その話に異国の女黒剣士が声をかける。
異国の黒剣士ルシルダ:何かお困りのようね。よかったらこの龍が描かれた本をあげましょう。
ラスティーユ:おぉ助かります。
ルシルダは蒼い瞳で軽く微笑んだ。
私はその本を見て龍の姿を思い浮かべた。しかしへそのピアスには何も変化が無く途方にくれる。
そうこうしている内に私の順番が巡ってくる。
私は仲間から白い眼を向けられながらやけくそで自分流で赤い鱗が生えた奇抜な感じの龍を作りだした。
お腹に力を入れ一気に吐き出し火を纏う小さな赤い龍を肩に乗せた。
それを見た仲間は哀れな眼で見る。
ロウハン:はぁーあれほど教えたのにダメな奴だ。
コルセット:しかしロウハンよ実にいいのは不死鳥を纏った女子だ、君いいねスリーサイズは・・・??。
レイアース:おほんまだ勤務中ですよ指揮官。
コルセット:いやー若くてかわいい子には眼がないので。確か君にも片目が無いよね。
レイアース:この片目は戦で無くしました。しかし勿体無いので矢に刺さった眼を抉り取りその場で食べました。
コルセット:その話は聞きあきたようぇー気分が悪くなってくるやめなさい
レイアース:親から貰った大切な眼ですからね。
ロウハン:セクハラ変態覆面はおいといて私がお前にまた稽古をつけることを約束しよう。
私の稽古はきついぞ。お前に教えることは山ほどあることに気付いた。
お前をスラムで拾ってやったがまさかここでまた会うとな。
ラスティーユ:あの時の人かロウハンって言う名前だったのか。凄い人だったとは。
それから数日が経つ頃私ラスティーユは数名の仲間を引き連れオルドー海峡の西側に配備され
た。
私達の任務は七大都市の一つクロス・バンから船で送られてくる兵糧や物資の警護である。
そんな中私は師匠ロウハンから教わった黒剣士の戦い方を心で思い返した。
小さく電解質でできた赤い龍のガードナーは雨に弱くまた攻撃力は半減する。
また私を中心に半径500メートル内でしかガードナーの攻撃伝達は発揮できず今の私にはガードナーを自在に操ることは不可能なのだ。なれれば何とかできるがこいつは生意気な龍で少々手を焼いている。
ガードナーは固さを強化したり形を変えたりなど自分の身に纏うこともできそれを全身黒武装という。
何とか一ヶ月の訓練を終え一応使えるがこの戦いが初めてなのである。
レド:ラスティーユ聞こえるか。前方は濃霧で何も見えない気をつけろ。
ラスティーユ:あぁだが敵が海峡を船で渡るはずはないだって向こうは死人だろ。
しかし私の想像を超える激戦が始まる。防衛線として設けられた陣にオルドー海峡を歩いて行軍してきた屍の軍団により次々と黒剣士の守りは突破された。
私達が警護する兵糧に火の手が上がる。私達は主力部隊と孤立し追いつめられる。
私はそこで最も激しい戦いを強いられる。
黒剣士が防衛線を引く西側には中央路に続く一本道があり最も重要な守りの要である。
墓場の剣士レオルドが連れる屍の軍団は疲れ知らずで昼夜にわたり攻撃の手を休めることは無かった。
墓場の剣士レオルド:ふははは主を裏切り殺した卑怯者の群れらを許すな。
全員皆殺しにしろ。お前達の命を奪った者らを決して許すなゆけぇー戦え。
覆面剣士コルセット:むむむまさか海を普通に歩いて行軍してくるとは山岳に回した黒剣士らを呼び戻すのも時間がかかる。どうするロウハン。
ロウハン:読みが甘かったこっちは生身向こうは死んでいる事を配慮するべきであった。
オルドー海峡で開戦することとなるとは夢にも思って見なかった。
ここを超えられれば屍の軍団は我らの仲間も取り込み中央路を突破し直ぐに王都ディアバールに激震を与えるぞ。我々の役目は分かっているなここで何とか食い止めなくてはならない。
そこで作戦なのだがオルドー海峡の西の軍団に頑張って働いてもらおうと思う。
王都から紅玉の騎士の増援が来るまでだ。
王都へ続く三つの関門を閉め敵の進軍を止める。だが問題があるオルドー海峡の西に配置した我が軍は締め出される。生き残る確率はほぼないだろう。増援が来るまでは彼らの力を信じるしかない。
ラスティーユ:嘘だろ逃げ場がない。私達は全員見捨てられた。
レド:くそー上官どもは何を考えているんだ。我らに死ねと言うのか。
背後は崖だ逃げ道はない。
ラスティーユ:戦える奴はどれだけ残っている?。
バレル:私達を含め約1000名です。
リリア:指揮は私が取る。
ラスティーユ:こんな大変な時に冗談は言うな。誰がお前なんかに指揮をしてくれって頼んだ。
ルシルダ:ここで喧嘩するより考えを聞こう。
リリア:あぁ私達には前進するしか策はない。敵を横に突破してブルガリアの胸壁まで辿りつくしか生きる道はない。
ラスティーユ:アクアラインを渡るとでもいうのかあそこは獰猛な蛇族の領内だぞ。
見つかれば我らは殺される。
ルシルダ:貴方の考えは大体分かったわ。私は貴方の策に賭けます。
レド:おいおい死人を相手に俺はそこまでいける自信がない。
リリア:敵を全て相手しろとは言ってない奴らの標的は私達じゃないんだから。
ラスティーユ:そうだな
リリア:私達はその場をしらっと斬り抜けるだけさ。
レド:そうだな見せてやろうぜ俺達見捨てられた組の力を!!
リリア:脅えた心が熱くなったようだな行くぞ生きるぞ。といい中央で剣を合わせた。
ラスティーユ:ちょっと皆待てここにいる連中の大半は見習い黒剣士だぞ。
腕の立つ奴ばかりじゃない。
ルシルダ:弱い者は死ぬそれが黒剣士ですよ。
ラスティーユ:冷たいなルシルダ。お前は強いから弱い者達の事を無視できるんだ。
全員生き残るのは確かに厳しい。だが私達は皆黒剣士と言う仲間じゃないのか。
仲間を大切に思わない奴と肩を並べて戦場には行きたくない。
ルシルダ:じゃあ貴方は脅えてここで屍兵に黙って殺されるのか?。
皆覚悟を決めて黒剣士になったのではないのか。その胸に輝く黒剣士見習いの紋章は飾りなの?貴方が纏う黒いローブは?貴方が持つ血のように赤い誓いの剣は黒剣士の意志ではないのか。
戦争で死を恐れていては誰も救われないわ。私にお前の脅えを伝染させるのはよしてくださるかしら。
ラスティーユ:ふんルシルダお前の言うことは確かだ私も覚悟を決めることにした。
腕に自信が無い者は私の後ろに続け。私がお前達を生かす。
絶対に死ぬ者を出さず生き王都に凱旋してやろう。
その言葉に暗い眼差しの黒剣士らは歓喜した。
ルシルダ:貴方は人を引き立てる物を持っているようね面白いわ。どこまでその甘い考えが通用するか見物だわね。
リリア:もたもたするな皆剣を抜けぇーいくぞぉー。
その激励に堪え黒剣士見習いら1000名は一斉に誓いの剣を抜いた。
屍の群れを赤く染まる誓いの剣で斬り伏せどす黒い返り血を浴び衣服は血で汚れた。
綺麗に纏め上げられた髪も汗と血で汚れ激戦は続く。
屍の集団が放つ異臭に嘔吐しながら戦う黒剣士見習いらの先頭を5人は駆け抜ける。
後方の物資を運ぶ船からは火の手が上がり温風が背後から私達を追い立てる。
リリア:止まるなぁー焼け死ぬぞと叫び前に前に不死鳥の炎を纏った剣で押し返してくる屍の集団を切り崩そうと奮闘する。
足場の悪い砂浜を見習い黒剣士は駆け抜け潮風を浴びながら走る。
首が落ちて動かなくなった屍の兵士を見たバレルは脅えながら言う。
バレル:数が多過ぎる次々と湾曲の間から灰色の死体が呻いている。
ここを横切って行っても前から這い出てきている。しかも足場が悪い後に続いていた黒剣士見習いらも生きたまま腸を抉られ死んでいるんだぞ。こんなの無理だよ不可能だ。
ラスティーユ:だが生き残るしかない。バレル弱音を吐かずにお前の技を使え。と困惑するバレルを励まし言う。
バレルは誓いの剣に猛獣ライオンを憑依させ戦闘を繰り広げるリリアとルシルダに自分の力を木霊させ自分のオーラを与えた。
リリア:力が漲る有難うこれでしばらくは不死鳥のガードナーの火は絶える事は無いだろう。
ルシルダ:何だか温かい。と一言呟き屍の兵団数百の足場を凍結させ動きを封じる。
その間ラスティーユも誓いの剣夜鳴華月を握りしめ青白い電流に塗れた青い花びらを散らせ屍兵を悉く感電させ切り捨てる。
その鮮やかな戦い方に後方から来る黒剣士見習いらも自信をつけ誓いの剣を赤く染め戦う。
しかし何人かの黒剣士見習いらは油断したのか横波と動態して動く屍兵の怪力に飲まれ命を落とす。
その断末魔を聞いたラスティーユの心の中で信念の糸が切れる音がすると爆発的な力が彼女を支配した。
ルシルダ:何人ついてきて何人生き残ったかしらこれが現実のようね。
ラスティーユ:うるさいうるさい
異臭が漂う戦場にて誰もが神を祈った。リリアは数名の黒剣士を連れ果敢にも屍の集団に斬りかかる。屍の集団の頭蓋骨を砕き倒した。海風に吹かれ汗と血に混じれた戦いが始まった。
浜辺の砂は皮のブーツに纏わりつく間からは大量の砂が行く手を阻む中、私は脅えた仲間を励ましながら進む。
この時まで私も死人が蘇るなど想像もできなかった。屍の集団の頭蓋骨を砕き進む。
その時だ仲間の一人が討ち損じた屍の集団に足を噛まれ血の匂いにつられいくつもの屍兵が仲間の一人を喰らい始めた。
私はその光景に寒気を感じ死にたくないと思う。またこれが夢であるように願う。
ルシルダ:ほらまた弱い奴が死んだ。と冷たい眼差しで言う。
仲間の一人名も知らない黒剣士が叫びながら助けを求める。
黒剣士:誰かぁ~助けてぇー
押し潰された悲鳴に振り向くことなく私は無情にも円陣を組み襲い狂う屍の集団に向かう。
その横でルシルダは言う。
ルシルダ:犠牲はつき物よ貴方の考えが甘いこれが現実。一人の犠牲も出さない戦はない。
ほら来るわよ貴方もあぁなりたいの?。と涼しげな眼差しで言う。
その視線の先にはさっきまで私の後ろで戦っていた仲間が屍の集団に混じりうめき声をあげている。
眼は黒く濁り表情は苦痛に歪んでいる。私は思わず剣を取り元仲間だった黒剣士の首をはね飛ばし言う。
ラスティーユ:許せ
どす黒い血飛沫が誓いの剣を濡らす中敵に囲まれた。
一目先には真っ赤な髪を揺らしてリリア率いる小隊が活路を開こうとするがだめらしい。
私の後ろには100名以上を連れるバレルが見える。
その後ろからは兵糧を運ぶ小隊が屍の集団に阻まれ進めない。
その時なぜか私は蠅を纏った眼の前の屍兵が気にとまった。
その屍兵は蠅をたからせているが気にならないようだ。
私は蠅に特殊な何かがあるのではないかと疑問に思い始めた。
奴ら屍兵はあんなにたかっている蠅には攻撃をせずにいる。蠅はあいつらと同じ異臭を纏っているんじゃないのか、だから攻撃対象に入らないのではと感じた。
私は皆に剣を下し斬り倒した屍兵の骸を抱えあげろと命令を下した。
ラスティーユ:擬態だ!!全員倒した敵に擬態してここを生き抜けろ。
リリアはその声に逸早く答え屍兵を殺し羽交い締めにして突き進んだ。
驚くことにラスティーユの感は冴えていた。屍兵は攻撃目標を無くしたのかうめき声をあげゆらゆらと行軍し始めたのだ。
私達はこうして初めての戦いを切り抜け数名の犠牲を出したがブルガリアの胸壁にたどり着いた。