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page 27 −会いたいー

海憂みゆう第2章ー

拓斗のいる東京からここ石吹島に帰ってきてから1週間が経った。

その間に彼からの連絡は毎日のようにわたしの元へと届いていた。

わたしは何度もその電話を取ろうと思った。

でももしその電話を取って彼の声を聞いてしまったらこの子を1人で産んで1人で立派に育てようという決心がにぶってしまう。

彼にまた負担をかけることになってしまう。

1週間ののち、電話は2度となることはなかった。これで本当に彼とのことは終わってしまうんだろうな・・・

そう考えたら涙があふれた。

「赤ちゃん、ごめん、ごめんね、泣き虫ママで・・・」


いつしか時間はゆっくりと流れ彼との別れから半年ほど経っていた。

わたしはその日大きくなったお腹をかかえ、海岸沿いをゆっくり散歩していた。

近くのコンビニに立ち寄った時、ふと目にした雑誌に彼のことを伝える記事が載っていた。


★古坂拓斗 映画撮影快調に進む!


ここのところ体調をくずしていたわたしはその記事に堂々と映っている笑顔の彼の写真を見て嬉しかった。

「拓斗、頑張ってるんだな・・・わたしも頑張らなきゃいけないな・・・」そう思ったとたん涙が出た。

拓斗会いたいな・・・会いたいよ・・・拓斗・・・

なにをメソメソしてるんだろ・・・赤ちゃんに笑われちゃうよね・・・。

海憂、もうひと踏ん張りしなきゃね・・・。

拓斗が頑張ってるんだから、わたしもこの子を守るため頑張らなきゃ・・・。


それからほどなくしてわたしは子供を産んだ。

身長48センチ 体重2800gの男の子だった。

わたしはその子に海斗かいとと名づけた。

最初のうちはなにがなんだかわからずただもう無我夢中で彼を育てていた。

夜泣きをしたりきゅうに熱をだしたり、寝る暇なんかないほどにただただ夢中になって・・・。

わたしと拓斗の間にできた、海斗・・・愛おしくてしかたがない・・・。あなたはわたしの宝物だよ。

なにがあってもあなたのことはママが守ってみせるからね・・・


海斗が寝返りをうち、そして這い這いをし、つかまり立ちをし、かたことの言葉を話すようになり

少しずつ大きくなっていく姿をみてわたしはこの上なく幸せを感じていた。

この子を守ってきてよかった、この子を育てられてよかった、わたしは海斗さえいればなにもいらない。

海斗が元気でわたしのそばにいてくれるだけで、それだけでいい。

わたしは海斗に育てられているんだな、彼がいるから強い気持ちでいられるんだ・・・


「海斗、お散歩にいってみよう!」

「あい」かわいらしい手がわたしの手をつかむ。

わたしは海斗の真っ赤なかわいいほっぺたにキスをして海斗と一緒に海へ散歩に出かけた。

「まぁま〜まぁま〜」海斗がわたしの手をにぎりながらよちよちと歩き出した。

海斗、大好きだよ!


わたしは小さな海斗の手を握り、拓斗との思い出がいっぱいの海岸を歩いていた。

「海斗、ここはね、ママとあなたのパパとの思い出がいっぱいいっぱい詰まっているところなんだよ」

「?」幼い海斗はちょこんと首をかしげて不思議そうにしていた。


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