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page 22 −罠ー

ひさびさに海憂の元へ帰ってからしばらくして

俺のところに映画の出演交渉がきた。


「いい話じゃないか、拓斗」山根さんは喜んでいた。

「でも、俺、こういう役はちょっとできませんよ〜」

「なに、言ってんだ、いろんな役をこなして、お前はもっともっと大きくならなきゃ、いけないだろ?」

「・・・・・」


この間、海憂の元へ帰ってから俺は痩せてしまった海憂をみて、彼女をもう待たせるのはごめんだ、なるべく早く彼女と

結婚をしたいとそう思っていた。

今の俺がここにこうしていられるのはすべて彼女、海憂のおかげだから、海憂が居なければ、俺はここまでやってこれなかったから。

彼女に今まで苦労させた分、今度は俺が彼女を守らなければ、彼女を幸せにしてやらなければいけないと心底思えたから。

ここで映画の話なんかきたらまた1年近く彼女を待たせなければならなくなる。そんなことは絶対嫌だ、ありえない。

俺は映画の話を断ろうとそう決めていた。


「拓斗!」

「はい?」

「お前、なに考えてるんだ、映画の話、断ったそうじゃないか」山根さんは俺をどなりつけた。

「いいか、ドタキャンみたいな事をしてみろ、すぐに仕事、ほされるぞ!」

「別にいいです」

「なに、勝手なことを言っている、お前のマネージャーは俺だ、お前に勝手なことはさせん!」

そう言って、山根さんは楽屋を出て行った。


その日は、仕事が早く終わった。俺は足早に家に帰った。


「ただいま〜!」

「あ〜おかえり」

居間のテーブルの上になんだか豪華な白い手紙がポンっと置いてあった。


ーー古坂拓斗、帆苅海憂 様ーー


そこにはかわいらしい文字が並んでいた。

差出人をみてみると、ーー斉藤雅弥、山本美咲ーー


そう、手紙をよこしたその人物は俺の高校の時の同級生っていうか、悪友の雅弥からの手紙だった。


「雅弥君と、美咲ちゃん、結婚するんだって・・・」

「へ〜そうか、もう結婚か〜、まさかあの2人が結婚までたどりつくとは思わなかったなぁ〜」

「そう?わたしは、初めて2人を見たとき、もしかしたらって思ったけどな〜」

「へ〜海憂、すごいね〜、お前は予言者か?」

「女の勘よ、女の勘!」

「へ〜そうですか〜、じゃ、海憂、俺が今、お前に何を言おうとしているかわかる?」

「なに?藪からぼうに・・・」俺は海憂の肩を抱き、彼女の目をみつめ ー 結婚しよう ー と言うつもりだった。


その言葉を海憂に言いかけた時、居間でかかっていたテレビが急にざわめき始めた。

その内容を見て俺は愕然とした。


スクープ! 新人俳優 古坂拓斗(24歳)の恋人は石本麻衣(26歳)だった!!

石本麻衣さんと古坂拓斗さん、深夜の密会か?2人がホテルから出てきたところをキャッチ!


確かにこの日は俺もけっこう酒を飲んでいたし、麻衣もかなり酔っていた。

情けない話、俺は記憶がなくなりそうになっていた。

フラフラっと歩いた先にホテルの入り口だけは見えていた。「やべぇ・・・」そう思って歩き出そうとした俺の腕を彼女は引き寄せ

俺の唇に自らの唇を重ねてきた。「なにするんですか?」「いいじゃない、別に・・・あなたもその気だったんでしょ?」

「何を言ってるんです・・・俺、帰ります」「ちょっと・・・待ちなさいよ!」

<バチバチ>

・・・ 一瞬俺の目の前をかなり明るい光が走った。

それから俺はどこをどう歩いたのか、気がついたら自分の家の前にいた。

なにもなっかった振りをして海憂の元へと帰っていたんだ・・・。

最低だよな、俺ってやつは・・・。


俺は海憂の顔を見ていた。海憂は怒りとも悲しみともとれる顔で今すぐにでも泣き出しそうだ。

「これってどういうこと?仕事って言ってこの人と会っていたの?拓斗、ね、どうなの?」

「海憂、これはまったくの誤解だ、確かに彼女とはお茶を飲んだりお酒を飲みにいったりはしたけれど・・・」

「ほんと?でも、信じられない・・・」

「海憂・・・」俺は彼女を落ち着かせようと思い抱きしめようとした。

でも、「いや、こんなの嫌だよ、拓斗、ぜったい嫌だ!」

そう言って彼女は玄関の外へと飛び出して行った。

俺はあわてて彼女のあとを追った。


「海憂?海憂?」家の近くの公園に彼女は1人で立っていた。

「拓斗、なんだかわたしあなたに対してすごく裏切られた気持ちがいっぱいで、頭に来て外まで飛び出してはみたけれど、

けっきょく、わたしにはあなたのそばにいるほかないんだなって・・・」

「海憂、ごめんな・・・俺に隙があったから、お前に余計な心配させた、ごめん」

「拓斗・・・あなたのこと信じていい?」

そう聞く海憂の言葉をよそに俺は自分がしてしまった愚かなことを後悔していた。


「海憂にその気持ちがあるのなら、俺はそれでそれだけでいい・・・ほんとうにごめんな・・・」

「寒いから、家に帰ろう・・・な、海憂」

「うん・・・」

その時の俺にはこの位の言葉しか思い浮かばなかった。


後でわかった事だけど、この出来事は石本麻衣が個人的に俺を落としいれようとして仕組んだ罠だった。

彼女はそれからしばらくして引退へと追いやられてしまった。

彼女は、俺に海憂という恋人がいることにうすうす気づいていて

海憂に対するジェラシーが元でこんなことをしでかしたんだと聞いた。

でも最終的に悪いのは俺だったんだよな・・・


でもこのことがきっかけで俺と海憂の関係がマスコミに取りざたされるようにまでなってしまった。






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