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page 19 -初めての嘘ー

海憂みゆう第2章ー

海憂の優しい励ましや言葉に支えられて俺は春の連ドラの撮影を続けていた。

当然、家に帰るのは遅くなり、家にはただ寝に帰るだけのそんな生活が続いていた。

そんな中でも海憂は俺のために夜遅くまで起きていてくれたり、温かいめしもきちんと用意していてくれた。


「は〜い、ここでクランクアップで〜す!古坂さん、お疲れ様でした〜」


{パチパチパチ〜〜〜}大勢のスタッフの拍手が沸いた。


お疲れ様で〜す!」俺は1つの作品を作り上げたことに満足していた。

「よくやったな!拓斗!」

「はい、ありがとうございました」

「いい演技だったぞ!」山根さんもすごく喜んでくれていた。

「だが、これからだぞ、ドラマってやつはいやおうなしでも視聴率ってのが関わってくるからな」

「はい、わかっています」

「うん」

「じゃ、これで、俺、あがります!」そう言って俺が帰ろうとした時

「拓斗!」

「はい?」

「ちょっと紹介したい人がいるんだ」そう言って山根さんが手を差し伸べたその先に石本麻衣と言う女優さんが立っていた。


噂では聞いてはいたが、こんなとこで会えるとは思っていなかった。

すごく美人で、かといってきどっているような人ではなくどこかさっぱりと男っぽい感じの人だった。

まさか、この人が俺と海憂との間に波風を立てていく人とは、考えてもいなかった。


「古坂拓斗君?」

「は、はい・・・」俺は目茶苦茶に緊張していた。

「石本麻衣といいます。よろしくね・・・」

「はい、こちらこそ・・・」

「ね、お茶でも飲んでかない?」

「は〜でも・・・」

「拓斗、せっかくのお誘いだ、行ってきたらどうだ」ためらっている俺に山根さんが言った。

「は、はい、じゃ、お言葉に甘えて・・・」


小さな裏切り行為だった。

その日は撮影が終わったら真っ先に家に帰って海憂とプチ打ち上げなんてするつもりでいたから。



拓斗、遅いな〜、今日は撮影、終わったらまっすぐ帰ってくるっていったのに・・・

せっかく張り切って作ったごちそうがさめちゃうじゃん・・・

 

〜♪♪♪♪♪〜


携帯がなった 着信☆たくと☆

「拓斗?どうしたの?ずいぶん遅いじゃない」

「ごめん、ちょっと撮影延びちゃって、帰るの遅くなりそうなんだ・・・ごめんな!」ガチャ!

海憂に初めて嘘をついちゃったな・・・俺は少しばかりの罪悪感を感じていた。


「−−−−−」切れた・・・珍しく、あわててたな、拓斗・・・

しょうがない、1人で食べるとするか・・・

「いただきま〜す」

「・・・・・」


こんなにたくさんのごちそう、いったい誰のために腕振るって作ったんだろ?

まさか、自分1人で食べることになるとは思わなかった。

テーブルの上に並べられたたくさんの料理を1人で食べるなんて・・・

わたしは拓斗が、一人前の俳優さんになるまでいろんなことを我慢してきた。

彼のために彼と幸せになるために一生懸命ここまでやってきた。

わたしってば彼のいったいなんだったんだろう?

目の前におかれたたくさんの料理を眺めながら、今までの2人のこと考えてみた。

ずっと我慢してきたすべてのものが大粒の涙となってわたしの頬を濡らしていた。

その日、わたしは今までの気持ちを吐き出すように思いっきり声をあげて思いっきり泣き叫んでいた。

なんで、こんな風にその時、思ったのか、なんでこんな風に泣いているのか自分でもわからなくなっていた。


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