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page 14 -帰る日ー

その日の朝、俺は海憂の部屋で目ざめた。

そこにはもう海憂の姿はなかった。


キッチンへ行ってみると朝めしが用意してあった。そのすぐそばに置き手紙が置いてある。


*拓斗へ


 あんまり気持ちよさそうに寝てるからわたしはこのままテストに行ってきます。

 絶対絶対、合格してみせるね・・・。そして、あなたのこと見送りにいくね・・・

 あなたがくれたブレスレットしっかり付けていったよ。これを拓斗だと思って頑張ってきます。

                                         

                                         −海憂ー *

                  P.S I LOVE YOU


海憂頑張れよ・・・

俺は海憂の部屋をあとにし、海の家 潮騒へとむかって行った。

今日が俺がここで働く最後の日だ。


「おはよ〜っす!」

「お〜おはよ〜!」「はよ〜!」

「いよいよ、今日という日が来ちまったな・・・」雅弥が寂しそうにつぶやいた。

雅弥の彼女、美咲ちゃんは一足先に東京に帰ったという。そか、美咲ちゃんは東京人とうきょうじんだったけな・・・。

俺はそのことがすごく羨ましくてならなかった。俺だって、俺だって海憂をこのまま連れ帰りたい・・・。


「お〜い、みんな、集まってくれ〜!!」おやっさんが言う。

そこには、飲み物やら、やきいかやら、やきそばやら、海の家 潮騒の名物?がところせましとおかれていた。

「さぁ〜て、みんな 集まったか〜?」

「お〜い、拓斗、雅弥、今日までご苦労さんだったな、気持ちばかりのお別れ会をやるぞ!」

「まじっすか?」雅弥が驚いた口調で言った。

「かんぱ〜い!かんぱ〜い!」

「2人とも東京に帰ってもここのこと、ここで知り合った人たちのこと忘れるなよ!」

「は、はい!絶対に忘れません」

「ほんとか?雅弥?」「わはは・・・」みんながいっせいに笑い出した。


「拓斗、おい、拓斗!」康さんが血相を変えてやって来た。

「あ〜康さん、どうしたんすか?そんなにあわてて・・・」

「みゆうちゃん、テスト会場に来てないんだって!」

「えっ?だって、今朝、置き手紙置いてありましたよ、テストに行って来るねって・・・」


トゥルルル・・・トゥルルル・・・

突然、康さんの携帯が鳴った。

「みゆう、みゆうちゃんかい?なにしてるんだよ?テストはどうしたんだ?」

あわてる康さんの声が聞こえる。

「えっ?なんだって、死んだ?」

えっ?死んだってなにが?誰が?俺は海憂の身になにかおきたんじゃないかと心配でならなかった。


「拓斗・・・」

「康さん、いったい何があったんです?海憂になにがあったんです?」

「いや、みゆうちゃんじゃない・・・圭ちゃん、圭ちゃんが今しがた亡くなったそうだ・・・」

圭ちゃん?それは海憂の元彼、津本 圭さんが亡くなったという知らせだった。

「康さん、海憂は海憂は大丈夫なんですか?」

「みゆうちゃんは、泣いていたよ、電話口で泣いていた・・・」そういう康さんも顔中涙でクシャクシャになっていた。

「俺、海憂のとこに行ってきます」俺が走り出そうとした時、康さんが俺を止めた。

「拓斗、今はそっとしといてやってくれ・・・彼女のためにも 頼む・・・」


俺は、しんみりしてしまったその場にただ立ち尽くしていた。

それでも時間は待っていてはくれなかった。


「じゃな、拓斗、雅弥、元気でな!また遊びに来いよ!」潮騒の仲間達が手を振っている。

そこに海憂の姿はなかった。海憂の携帯も繋がらないままだった。


そんな中でも、容赦なく東京へ帰る時間は近づいていた。俺と雅弥はただ無言のままでいた。

「じゃ、俺はここで・・・」雅弥が言った。

「拓斗、なんて言っていいかわからないけどみゆうさんにきっとまた会えるって・・・」

雅弥はそれだけを告げて電車から降りていった。


プルルル・・・プルルル・・・俺の携帯がふいになった。

着信 ☆海憂☆ 海憂からの電話だった。

「もしもし、海憂、海憂、大丈夫か?海憂!」

「た・く・と・・・」

「海憂・・・」

「拓斗、今日、送りにいけなくってごめんね、キスしてあげられなくてごめんね」

「なに言ってんだよ!」

「俺の方こそ、海憂がつらい時、そばに居てやれなくってごめん、支えてあげられなくてごめん」

「たくと〜」彼女が電話の向こうで泣き崩れていくのがわかった。

「海憂、いいか、海憂、俺たちはどんなに離れててもいつも一緒だ、お前が生きている限り俺たちは一緒なんだぞ、わかったか?」

「うん、うん・・・わかった」

「つらい時はいつでも電話して来い、俺がそっちにいける時には必ずお前に会いに行くから・・・」

「うん、わかった、ありがとう、拓斗 愛してる・・・」

「俺も愛している・・・」


夏が終わりを告げる頃、1通の手紙が俺の元へと届いた。


*拓斗へ

 拓斗、元気ですか?

 わたしは元気です。

 この夏のあなたとの思い出をしっかり心に刻んで一日一日を大切に生きています。

 康さんやおやっさんたちに囲まれて時には励まされて支えられて一生懸命頑張っています。

 たまに東京の方を眺めてはため息がでちゃうけどね・・・。

 本当はあなたの元へと飛んでいきたい・・・。

 話したいことは山ほどあるけれど今日はここでやめときます。

 あなたに会いたくなってしまうから・・・。

 じゃ、元気でね・・・。

                                   −帆苅海憂ー*



 海憂 会いてぇなぁ〜

 海憂 ずっとずっと愛しているよ・・・

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