page 11 -ニ人の夜ー
「ね!花火しよ!」
「えっ?花火?」
「うん、さっき潮騒で買ってきちゃった!」
「いつのまに・・・」
「あはは、なにそんなにびっくりしてんのよ!」
「じゃ、火つけるよ」
「あぶね〜から、俺がつけたる!」
「拓斗、やさし〜!」
「なにいってんだ!ちゃかすんじゃね〜よ!」俺は海憂のおでこに軽くデコピンをした。
「いた〜、なにすんのよ〜あはは・・・」海憂の笑顔は最高に綺麗だ・・・。
俺は、花火に火をつけた。
花火の炎はどこまでも碧く、金色に変わっていくそのさまはどこかはかなく、薄暗い海岸を照らしていた。
「きれい〜・・・」
「海憂のほうがもっと綺麗だよ・・・」
「今、なんて言ったの?」
「な、なんにも言ってね〜よ!」俺はそんな言葉を言った後、みょうに照れくさくなって鼻の頭を掻いていた。
「なんだ、海憂、好きだ〜とでも言ってくれたのかと思った、うふふ・・・」
「なんだそれ!」
「海憂」「うん?」
「俺から、俺から離れるなよ、いつでも俺の横で笑ってろ・・・」
拓斗が照れくさそうにそう言った。
「うん、でも・・・」「うん?」
「でも、私でいいの?私なんかでいいの?私はあなたよりも5つも年上で、こんなおばさ・・・」
「海憂、俺は年の差なんて関係ないと思っている、俺は今、俺の目の前でこうして笑っている海憂に恋をしたんだ」
私の言葉をさえぎるように拓斗が言った。
「ありがとう・・・そんなにまで私のこと思っててくれて・・・」
「海憂、約束」「約束?」
「うん」「なに?」
「もう、年の差なんて気にするな!海憂が年上だろうとそうでなかろうと俺の気持ちは変わらない、だから気にするなよ」
「うん、わかった、今のままの私をあなたが受け入れてくれたこととても嬉しかった」
「うん・・・」
「そろそろ行こうか・・・」「うん」
海憂の家はそこから少し歩いた小高い丘の上にある。
今、流行のログハウスってやつでウッドデッキがあって暖かみのある佇まいの家だ。
玄関の前には海憂のサーフボードが2、3個立てかけてある。
その中には、初めてデートをしたあの時に買ったあの青いボードが置いてあった。
そういえば、あの時、彼女と初めてキスしたんだったな、初めて彼女の名前を俺が呼んで海憂が泣いてくれたっけ・・・
玄関を通りぬけたあたりからなんだか急にドキドキしてきた・・・。
海憂の部屋に通されてから、俺の鼓動はますます高鳴った、やべぇ〜理性をなくしそうだ・・・まじ・・・やべぇ・・・
彼女の部屋の片隅に置いてあるベッドの上の海を思わせるような青い色のベッドカバーが俺の気持ちをますますヒートアップさせていた。
「今、コーヒーでも入れるね・・・」海憂が部屋から出て行こうとした時、俺は自分の気持ちが抑えられなくなった。
部屋から出て行こうとする彼女の腕を取り彼女の体を引き寄せた。
「た、たくと?」
「みゆう・・・」驚いた顔をしている彼女の唇に自分の唇を合わせた。
海憂の香りがするその部屋で俺は彼女を抱きしめた。
小麦色の肌はどこか男っぽいけれど意外なほどに華奢な彼女のその体は俺の腕の中にすっぽりおさまっている。
「みゆう、みゆう・・・」「たくと・・・」
「ずっと、ずっとこうしたかった・・・」「たくと・・・」
その日の夜、俺たちは初めて1つになった。
お互いのその肌のぬくもりを感じあい、確かめ合い、俺たち2人はいつまでもベッドの中で抱き合っていた。




