page 1 -放課後ー
これはまだ俺が18歳の若僧だった頃の話です。
あの頃の俺は、まだ何も目的もなく、中途半端な気持ちで1日1日を送っていました・・・。(文中の場所等は架空の物です)
登場人物
☆古坂拓斗 高校3年 茶髪にピアス、そこそこイケメンの今時の高校生
今のところはフリー 恋にあまりマジになるタイプではなかった
☆帆苅海憂 23歳 プロサーファーを目指している 男っぽくさっぱり した性格の持ち主だが恋には一途なタイプ
☆津山 圭 23歳 海憂の彼氏だが3年前、海の事故で寝たきりに
☆成瀬愛実 拓斗の幼なじみ 拓斗の事が気になるようではあるが幼なじみで あるがゆえそれが恋なのか友達なのかはっきりしていない
☆斉藤雅弥☆高木翔人☆糠信謙太 拓斗の同級生
☆関耕作・聡美(せきこうさく、さとみ) 拓斗がバイトをしている海の家 潮騒 のオーナー
☆潮永俊大学2年 ☆前本康27歳 3歳の男の子のよ きパパであり海の男
☆鈴本涼平大学2年 海の家、潮騒のバイト人
☆八坂充 拓斗をモデルとしてスカウトしそれから拓斗がモデルの仕事をやり やすいようにいろいろサポートしている
☆山根誠 拓斗のマネージャー 仕事に厳しい反面 拓斗の兄貴のような存在 俊敏マネージャーという噂も
「おはよー!」「おっす!!」「はよ〜!」
「ねぇ〜拓斗〜、今日学校ふけたら渋谷でも行かない?」愛実が言った
「渋谷?だりーなぁ〜 でもどうせ暇だから、まぁ いっか!」
「OK!」
「じゃぁ〜いつものとこでね〜!」
「お〜」
「なになに、今日もデート?」雅弥が笑う。
「違う違う、そんなんじゃないよ、愛実とは」「まぁ、しいていうなら腐れ縁ってやつ?」
「ふ〜ん、そんな感じじゃねー気もすんけど・・・。少なくとも愛実はな・・・」
なにいってんだか・・・。愛実とは小学校、中学校、一緒で俺にとっちゃ普通の友達だし、 たいした関心もない まぁ、連れて歩くにはかわいいけど・・・。
今日もだりー授業が終わった。なんかつまんねぇ〜超つまんねぇ〜・・・。何かおもしろい こともそうそうないしなぁ〜。
「拓斗〜!」愛実が叫んだ。でっかい声。
「どこ行く?」後から雅弥たちも着いてきた。
愛実が言う「逆ハーレムだ・・・」
プッ!思わず笑ってしまった。
それから俺たちは009へ寄って愛実のつまんねー買い物につきあって、センター街を抜けていつも溜まっているモックに寄りこんだ。
「ねぇ〜拓斗」愛実がポテトをほおばりながら話しかける。
「うん、なに?」「今年の夏休みどうしてる?」
「えっ?だって今年の夏は受験対策だろ?」
「え〜、拓斗ってばそんな事考えてたんだ〜、いが〜い!」
「なに、おかしいかよ?」「だって拓斗からそんなマジな話聞くとは思わなかった〜」
「は〜?」
なんだいったい、俺はどんな風にみられてるんだ?
「ねぇねぇ〜あれはあれ?」「なに?」「ほら、あれだよあれ、ほらモデルの仕事・・・。」「あ〜」
そう俺はどういうわけかこの渋谷の街中で去年の夏にスカウトされ、少しばかりモデルの仕事なんてやっていた。
だからってどうって事もなく、多少のお金が入ってくるから適当にやり過ごしていた。
ただ、そんな仕事をいくいつかこなしているうちに芝居っていうか演技っていうか俳優にでもなれたらいいなぁ位の気持ちはどこかにあった。
「実はさ〜俺、八坂さんのつてでさ、いくつかオーデション?なんての受けてさ〜その1つの事務所からどういうわけかOKもらちゃってさ〜」
「え〜すごいじゃん!」「へ〜こんなちゃらんぽらんなやつ、よく引き受ける気になったね〜その事務所」
「おい、どういう意味だよ〜。」「べつに〜」
愛実は少しばかり不機嫌になった。「でも、それってまじすごくない?」雅弥が言った。
「でも、親なんかは大学行けってしつこく言うし、でも俳優?っていうかそういう世界に憧れってのもあってさ、正直迷ってるんだよね〜。」
「でも、拓斗はさ〜大学なんてしょうに合わないし、勉強嫌い!って言ってたジャン・・・」
「まぁ、それはたしかにそうなんだけどね・・・」
「っていうか〜愛実はどうなんよ?まじな話さぁ〜?」
「う〜ん・・・私も拓斗と似たようなもんかな・・・。」「テヘ・・・」愛実が舌をぺロっと出して笑ってみせた。
愛実は笑うと左頬にえくぼが出来て目の辺りがクシャクシャになる。とびきりの美人とは思わないけど。なんかホッとする笑顔の女だ。
「俺はさ〜、石吹でバイト〜」「えっ?」皆がいっせいにすっとんきょんな声で言った。「石吹って、沖縄の石吹島?」
「そうだよ、他にどっかあるか?」「海の家って事?」「そうそう・・・」「へ〜」愛実がぽかんとした顔で雅弥を見ていた。
そこへ、さっきまでチーズバーガーに食らい付いていた翔人と謙太が「俺ら〜ちょっこと部活でてそこそこ受験勉強なんかして
あとは、なぁ〜」「なぁ〜」「やっぱこれっしょ!」翔人と謙太は自分の小指を立てて自分の彼女の事をいってみせた。
「勝手に言ってな!全くもう・・・!」愛実はなかば怒り気味にあきれたようにそんな2人をみていた。
彼女か〜まぁ、それはそれで羨ましい気もするが・・・。しかし呑気な2人だ・・・。
雅弥の家は俺たちが住んでるこの街でそこそこの工場を経営している、けっこう儲かっているらしい。
雅弥はかねがねやつのおやっさんの工場を継ぐと宣言してたな。
だったら海の家のバイトなんていい社会勉強にでもなるんじゃね〜の。
「ふ〜ん、そかそか、海の家ね〜、いいんじゃね」
「だろ〜、そこでだ、実は〜 その海の家でさ、もう1人男のバイト探してんのよ」
「へ〜そうなんだ」「なっ!拓斗やってみね〜?」「へ?なんで俺よ〜」
「だってお前、男の俺でさえ惚れる様な色男だろ?」「なに、気持ち悪いこと言ってんのよ!?」
「げ〜、きもい!雅弥、そんな趣味あったの?ありえな〜い!」そりゃそうだ、俺だってそんな気はない。冗談じゃない。
「ジョーク、ジョークよ!」「でもさ〜、拓斗位の面構えならさぁ〜、拓斗がそこに居るだけで、女の子が寄ってくるかもしんないだろ?」
「したらよ〜、海の家も儲かっかもしんねぇし、バイト代も上がるかもしんねぇ〜べ!」「俺は客寄せパンダかつ〜の!!」
「あはは・・わり〜わり〜」
「でも、バイトの話はまじよ、まじ。」「だって海の家の仕事って、めんどうそうじゃん、暑そうだし〜」
「まぁ、そういうなって、海でよ、客の注文とってそれを客に渡したり、ボード貸し出したり、浮き輪貸し出したりしてよ〜
んで、適当にかわいい子ナンパして適当にいただいて・・・」「なんだ、そのてきと〜って!」
「そうだよ、女をなんだと思っているのさ〜」
愛実の顔はふくれっ面だ。そりゃ、そうだよな・・・。雅弥ってばデリカシーないっていか、空気読めないっていうか・・・
「だってさぁ〜だってそうだろ?」「なにがだよ?」夏の海に遊びに来るような女ってさ〜ナンパ目当てかそうでなきゃ、彼氏持ちかいくらかくたびれかけてきた家族連れみて〜なのが多いじゃん。」俺は時折、雅弥の考えている事がわからなくなる。
お前の頭ん中はどんな構造してんだ?女の事ばっか考えてんのか?これが未来の社長かよ〜。
「そんなに気張らずさくっと、さくっといい女、いただき〜みたいなぁ〜」
はぁ〜いつまでも言ってろ!
「でもさ〜拓斗」「うん?」「このままただぼ〜と夏休み過ごすよりは、」「うん」
「何かしらの経験とかしたりしてさぁ〜それが良くても悪くってもお金になるんだったらそれもなんかよくなくない?」
「まぁ〜そういう事もありえなくはないね・・・、。」「だろ〜これで決まり〜」
「おいおい、気が早いなぁ〜、で、いつ頃から行きゃ〜いいわけ?」
「あっちはもう観光シーズンだから早ければ早いほうがいいみたいなんだよ」
「だいたいどの位、行けばいいの?」愛実が聞く。
「2〜3ヶ月位だと思うよ」「え〜、長いなぁ〜」
うへ〜そんなに長いのか〜、このバイトは受けるべきではなかった気がしてきた・・・
その時、俺はそんな風に思ってはいたけれど、だからって断る事でもないのかな・・・?なんて漠然と考えていた。
きっとその時から俺はなにか運命みたいなもの、俺の一生に関わるなにかをそこに感じていたのかもしれない・・・。




