つまりはソシャゲなのだけど
4年も前に書いていたやつなので自分で立てたフラグが分からない…
外では夕焼けこやけが鳴っている。
パソコンを弄らずに土曜日を過ごしたのは久しぶりかもしれない。
悠希が鬼気迫った様子で電卓とシャーペン片手に作業をしていたので、私も遊ばずに宿題をやって待っていた。
「質問なんだけどさ、滝ってどのくらいこのゲームのこと把握してるの?」
「えっ、とね…。」
すぐに浮かんだのは勿論、隷属のさせ方。
それだけは父に絶対忘れるなと言われていたのだ。
でもそれを真っ先に言って、悠希が傷付かない筈がない。
「これは分かる!とかでいいからさ?」
「あー…まず、プレイヤーは決闘で相手からゲーム内のお金を巻き上げられる。
そのお金でなんかアイテム?が買える。
集めるとなんか貰える石?があるらしい。
決闘はその石?を貰うバージョンもあるらしいけど私は一個も持ってない。
普通は今くらいの歳かもっと上で初めてゲームのプレイヤーになる。
…ゲーム参加者以外にゲームのことを話せない。」
悠希がふっと頬を緩めた。
「なんかばっかりだね。契約の方法は?」
それは、必要なの?
悠希は変わらぬ調子で尋ねたのだが、私の顔を見て初めて悲痛そうな表情を浮かべた。
そっか、あくまで私が辛そうなのが辛いんだ。
もっと、なんでもないように振る舞わないと。
「ごめんなさい、でもね、手札に九十九神化した万年筆っていうのがあって。」
「…え、そんなの契約した覚えないけど」
「だよね、それに何でこんな、ドブったガチャの中身みたいなのがあるのか分からないし…」
「…ごめん、よく分からない」
「本物呼び出してみれば分かるかしら…」
万年筆にもステータスがあった。
☆1蒔絵の万年筆Lv.1
タイプ:九十九
コスト:1
HP10
攻撃力20
防御力20
回復0
スキル:なし
待機[ON]OFF
「あったよ…でも、どうやって出すの?」
「それもCallなんとかで出るよ。…私のことだっていつでも呼び出せる。」
「じゃあ愛しの悠希に会いたくなったらそうするね。」
私は巫山戯てそう言ってから、呼び出してみた。
「Call、万年筆!」
蒔絵の綺麗な万年筆が現れる。
「できたよ、悠希。」
「え、ああ、うん。そうだね。」
悠希は渡した万年筆をばらし始めた。
ティッシュを一枚とり、刺さっているインクを外してその上に置く。
黒いインクがじわりと滲んだ。
「あった!!」
中を覗き込んでみると、そこには魔方陣らしきものが。
このゲームって、魔法的な何かが関係していたんだ。全然知らなかった。
机の脇のメモ用紙をとり、悠希は寸分違わず描き写した。
悠希の美術の成績はいつも5だ。
…私は2だけども。
「これを何かに描いてみて、手持ちになるかやってみよう。悠希が知らぬ間に血を抜かれたってことはないと思うから、血で描いて成功するかはちょっと微妙だけど。」
「えっ私にこれを描けと。」
「と、トレーシングペーパー。…親にメールして帰りに買って来てもらうね。」
「じゃあ他に今すべきことってある?」
「えっとね、じゃあ説明するよ。まず一番大事な、今の防御陣営からね。」
そういって悠希は私に画面を見せた。
5匹+悠希のアイコンが表示されている。
「えっ、悠希戦うの!!?」
「戦わせるつもりじゃなかったの?」
逆に驚かれた、心外だ。
「だって、危ないよ。怪我したらどうすんの?」
「戦闘が終われば治るし、これから仕掛ける相手なら即回復できるはずだから…。結構使い勝手良いと思うんだけどな私。」
「そんな物みたいな言い方…。またよく分かんないこと言ってるし!!」
「えっとね、今のHPだと250以上のダメージ受けなきゃ、すぐに上限まで回復できるでしょ?こっちと同じくらいの勝率の人なら勝てるはずだよ。他の相手もレベル上げてけば私が盾になれるはず。」
私は詰問したが、悠希はよく分からない言い方でさらりと説明した。
違うのに、私は自分のこと物みたいに言う悠希に怒ったのに。
「…てか特技名が嗚咽って、馬鹿みたいね。」
「それって…」
「他に質問は?」
有無を言わさない態度だった。
「………強い人はこっちに仕掛けてこないの?」
「それは大丈夫、大富豪がホームレス強請るみたいなものだし。」
「なるほど」
言い得て妙というかなんというか…。
「決闘イベみたいなのも今はないみたいだから、強請る意味は益々無いし。」
「あー、よく分からないけど、任せる。」
困りながらそう言うと、悠希はコテンと首を傾げた。
「悠希、もしかしてこういう系のゲームやったことないの?」
「な、何でバレたの。」
「ばれたじゃなくてさ、言ってくれれば気を付けたのに。」
そっか、わざとじゃ無かったんだ。悪いことしたなぁ。
「えっと、じゃあさ、まずーーー」
悠希に見せられたのは、幾つかの攻略サイトだった。
魔力消費の仕組みはこれを参考に、とか。
陣営の組み方はこれを参考に、とか。
人の命が関わってくるようなゲームを、既存のゲームに照らし合わせて説明するのはどうかと思ったが、漸くルールが分かった訳である。