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近⇔遠距離

作者: 74

登場人物とか

主)

・原沢優弥 ♂

→(計算だと)25歳、会社員、唯大好き

・中野唯 ♀

→25歳、ガンで闘病中、体調良さげに振る舞いがち

副)

・唯母 ♀

→唯のお母さん、60歳くらい

・中野部長 ♂

→実は唯のお父さん、優弥はその事実を知らない。

唯と唯母が優弥探しをしてるのを知らなかったため、なにも知らない。



今日、はじめて君を見つけた。


眠そうな目を擦りながら小さな欠伸を幾度となく繰り返している。


ふわふわの髪の毛を揺らしながら電車に揺られる君は、僕の心を確実に掴んだ。


次の日も、その次の日も君はいた。


楽しそうに友達と話をしている君を、僕は遠くから眺めるだけ。

それだけで僕は幸せな気分になった。




数日経ったある日。


視線を感じて振り向く。

ゆるりとした視線の先には君の目があり、不意な出来事に驚いた僕は、咄嗟に目を反らしてしまった。


悲しげな目をした君がとてもかわいくて、もしかしたら…

なんて考えが頭をよぎった。


そんなこと、あるわけ無いよな…


それから数週間、彼女の存在を感じながら、なにをするわけでもなく、ただ電車に揺られていた。


彼女を眺めているうちに、僕はあることに気付いた。


前より、距離が近くなってる……?


満員に近い電車の中は人がたくさんいて、同じ車両とはいえど、彼女とは乗降口が違う。



僕は淡い期待を抱き、今日も電車に乗り込んだ。



日が過ぎるたびに少しずつ近くなる君との距離は、遠いようで近い、なんとも不思議な距離だった。



僕はいたって地味なヤツだ。

秀でたところがあるわけでもない。

ましてや不細工でもない。

いわゆるフツメンってやつ?


「こんな僕でも…恋、するんだな…」

ボソッと呟く。


彼女の笑顔が忘れられない。

かわいすぎる…。

僕のものにしたい。


おっと、これじゃ僕が危ない人みたいじゃないか。笑


でもまぁ、人を好きになることがなかった僕は、告白をしたことがないし、手に入れたい、なんて考えたこともなかった。

過去に一度告白されたことはあるが、なんとなくのまま付き合って、二週間くらいで別れた。

そこまで気持ちがなかったんだ…。


それに比べて今回はどうだろう。

こんなにも人を好きになるなんて考えたことがなかった。


またいつか、いつか…

僕の気持ちを伝えよう。好きの気持ちを教えてくれた君に、僕のはじめての好きを。

そう思った今日、君が




隣にいた。




「な、んで…っ!!?」

あ、やば。


 「へっ?」

なんのことやら理解してない表情の君。


「あっ、いや…なんでも…ない…です…///」


………やってしまった…。


 「そう…ですか……あ、顔…赤いですよ?大丈夫ですか??」


心配してくれる君がとてもかわいくて、僕はおかしくなった。


咄嗟に彼女の手を握っていた。


 「えっ!?…あのっ…手…////」


赤くなる彼女の頬が視界に入り、僕は我に帰った。


「ごっ、ごめん!!///」

慌てるように手を離した。


 「あ、謝らなくても大丈夫…です///」


僕自身、なんでこんなことしてしまったのか分からない…




数秒の沈黙



「「あのっ!」」

二人の声が重なった




「……プッ…アハハッ(笑」


 「なっ、なんで笑うんですかっ!///」


「ごめんごめん、なんか慌ててるのがかわいくて…プッ(笑」


近くにいるため感じる微かな体温と、ふんわりとした甘い香り、ゆるゆると揺れる長い髪の毛。

照れながら頬を膨らませている君は、いつも以上にかわいかった。


 「もうっ!///」

プイッとそっぽ向く君。


「…ごめん…ね?」

ちょっと甘えた感じで謝ってみた。

自分のことながらかなり気持ち悪い…。笑


 「!!!……しっ、仕方ないから許してあげますっ!///」

おー、びっくりしてる。

照れてるとこもかわいいなぁ…。笑


「プッ…ありがとう(笑」


 「また笑った!!」


「あ、ごめん…つい…」


 「もう、仕方ないですねぇ…」


「ごめんごめん」


 「もう………あ、もう降りる駅だ…」


いつも以上に時間の流れが速いみたいだ…。


「まぁ、また明日会えるよ」


 「そう…ですね…」

彼女の顔が一瞬だが曇った。


「?……あ、よかったら明日も僕と話、してくれないかな?」


 「……いいですよ(ニコッ」


「それじゃ、「また明日」」


また明日。

そう約束して彼女は電車を降りた。



彼女は降りた後、電車の中の僕を見ていた。過ぎていく電車を眺めながら




 「好きです」




そう呟いた。

その声は雑音に掻き消され、僕の耳には届かなかった。




僕は待った。

明日会える、淡い想いを抱きながら。


春が、夏が、秋が、冬が過ぎた。

君を待って三年が経った。

いつまで待っても君は来ない。


僕は高校を卒業した。


社会人になり、七年が過ぎた。

社会人になった今も、君に会える、そう想い続けながら、電車通勤をしている。


「忘れられちゃったのかなー…」


時々泣きたくなった。

いや、家で涙を流した。


君を待ち続けて十年が経った。


いつも通りに電車通勤を続けていると、ある年配の女性がこっちに歩み寄ってきた。


 「あのぅ…」


「あ、はい、どうしましたか?」

出来るだけの笑顔で返事をした。


 「いきなりすいません…この写真の男の子、知りませんか?もう十年も前の写真なんですけれど、探しているんです…」


学生服を着たその《男の子》は、どこかで見た顔をしている。




間違いない




「あの…これ、僕です。この制服、この髪型、十年前の…僕です!」


そう聞いた途端、その女性はその場で泣き崩れた。



 「ごめんなさい……本当に…本当にごめんなさい…」

いきなりのことに僕は心底驚き、戸惑いを隠せなかった。


「えっ!?あの、大丈夫ですか!!?」


 「ごめんなさい…あなたに話があって…ずっと探していたんです…」

涙ながらにその女性は話をしてくれた。



 「実は…」





僕はすべての話を聞いた。



この写真は娘が十年前に撮ったものだということ。

この女性は《唯》、もとい大好きだった彼女の母親であると言うこと。

彼女は僕に会いたがっているということ。




そして彼女は今、病院にいるということ。





自然と涙がこぼれた。

「嫌われた訳じゃなかったんだ…」


なにも告げられることなく僕の前からいなくなったのは、嫌われたのではなく、別れた次の日から闘病生活が始まっていたからだと言う。


 「唯は…娘は、あなたのことをずっと想っています。なにも告げずに別れてしまったこと、何年も待たせてしまったこと、全てを後悔しています…。」


「そんな…」

胸が詰まるような思いだった。


 「……唯は今、高槻病院の306号室にいます。」


女性の言葉を聞いた直後、僕は走り出した。





「ハッ…ハァ…ハァッ…!」

全力で走った。


いい歳した大人が汗だくで、しかもスーツ姿で走ってる。


「…靴…擦れっ…いっ!…てぇな…くそっ…!」革靴で走る僕

よく考えると駅に自転車、置いてきた…


どれだけ走ったか分からない。

高槻病院まで何kmあったっけ…?

そんなことを考えながら走り続けた。




走り続けること約40分、やっと高槻病院に着いた。

「ハッ…つ、着いた…ハァッ」


休憩する暇なんてない。

僕は彼女のいる306号室まで早足で向かった。



〈ガラッ〉



病室のベッドに君はいた。


彼女の身体には幾つかの管が繋がれ、透明な液体を体内に取り込んでいる。


もともと白かった肌はもっと白くなっている。

白というより蒼白い。


彼女の目は、開かない。


「ゆ…い…ゆい…?」

赤くなった目を彼女に向け、声をかけた。


靴擦れで足が痛い。

だが、彼女の顔を見れた、それだけで足の痛みはどうでもよくなった。



 「…だ………だ…れ…?」

掠れたような声で彼女は返事をした。


「僕だよ…僕…優弥だよ…」


 「ゆ……う…や…?」


「十年前に電車で君に一目惚れした優弥だよ…」


 「あ…あの人…優弥って…名前…だったんだ…」

彼女は涙を溢しながら何度も僕の名前を呼んだ。


 「優弥…ゆう…や…ゆ…やっ…」

僕の名前を呼び続ける君。

そんな君は、僕に嬉しい言葉を投げつけた。


 「優弥……き……す…き…です…好き……」



胸が苦しくなった。


「僕も……唯…大好きだ、十年前から…ずっと…ずっとだ……」


顔がぐちゃぐちゃになりながら僕の気持ちを伝えた。


管だらけの唯を抱き締めることが出来ない代わりに、精一杯言葉を投げ掛け、強く手を握った。


唯は身体に力が入っていない。

けれど、弱々しいが精一杯握り返してくれた。



唯はガンだそうだ。


かなり重度で、もう手遅れだ、と医者は言う。


残った時間はそう長くはない。


余命3ヶ月


もって半年


そう告げられた。


僕は心に誓った。

十年も待ったのに残り時間がたった三ヶ月なんてだめだ。

一年は唯を生かしてやると。


僕はその日、唯の手を握りしめたまま眠りについた。


「おやすみ唯。明日はちょっと出てくるから待っててね」


まどろみながら瞼を閉じた。




「おはよう唯。それじゃあちょっと行ってくるね」


僕は寝ている唯を残し、病院を後にした。


プルルルル プルルルル…


「……あ、もしもし、営業部の原沢優弥です。営業部長の中野さんを呼んでいただけますか?」


僕は会社に電話をかけた。

昨日無断欠勤してしまったので、謝りの電話と、長期休暇をもらうためだ。


 『中野だ、原沢くん、どうしたんだ?』


「いきなりすいません…お話がありまして…」


昨日無断欠勤してしまった理由

大好きな彼女がガンで生い先が短いこと

付き添うため長期休暇が欲しいということ


出来るだけを中野部長に話した。


 『…そうか…大変だったんだな……よし、会社には私から話をつけておこう。復帰出来るようになったらまた電話でもかけてくれ。大変だとは思うが頑張れよ。じゃ』


…ツーッ ツーッ


中野部長が話の分かる人でよかった…


「さて、次は市役所だ。唯が待ってる、早くしなくちゃ」



僕は心に決めていた。


「すいません、婚姻届、貰えますか?」


 「はい、少々お待ちください」


楽しみで楽しみで仕方がなかった。


 「こちらになります、どうぞ」


僕は婚姻届を貰った。

二人の繋がり。


「ありがとうございます」



次で最後の買い物。



「細くなっちゃった唯の指に合うリング、探さなくちゃな…。」


結婚指輪と婚約指輪。

選んだ指輪はいたってシンプルで、薄ピンクのダイヤが3つ埋め込まれているものと、水色のダイヤが1つ埋め込まれたものだ。


唯にあげたらどんな顔をするだろうか。

気に入ってくれるだろうか。

いや、唯なら喜んでくれるはずだ。



さぁ、君の元へ帰ろう。



「ゆーいー!ただいまー!」


 「おかえり…なさい、優弥…さん…」


「さん付けはなし、昨日も言ったろ?」


 「だって…」


「だってじゃないんだよぉー!」

なんか僕、だだっ子みたいだな…。苦笑


「まぁいいや、唯、これ書いといてね」

そういって差し出した婚姻届。


手にとってまじまじと見つめる唯。

はっきりいってかわいい…。笑


まじまじと見つめていると思えば、ふっ、と微笑み、


 「…はい」


と短く返事をくれた。


「それと…唯、こっち向いて?」


なんのことか分からないようで、困った顔をしながらこちらを向いた。


「唯……こんな野郎でよかったら僕を君の旦那にしてください。…あとこれ、もらってくれる?」


差し出した小さな婚約指輪。

唯がぼろぼろと溢す涙と、同じ色をしたダイヤの指輪だ。


言葉が出ないのか、涙を流しながらコクコクと、一生懸命頷いている。


「よかった…」


 「優弥…あり…がとう…ありがとう…」

顔がぐちゃぐちゃになるのも気にせず、二人で泣いた。

手を握りしめ、ゆるゆるとだが身体を抱き締めた。



《残りの君の時間、僕がもらうね…》



そう呟き唯を抱き締めた。




それから数日後、僕たちは式を挙げた。


急にも関わらず集まってくれた友達。

勝手に決めた結婚に、親はびっくりしていたが、事情を話すと笑顔で了承してくれた。

唯の友達も大勢集まってくれた。



「僕たち幸せ者だね?」


 「そうだね、………だから」


「ん?何か言った?」


 「ううん、なんでもないよ」


「そっか」


なーんて、実は唯の言ったこと、聴こえてたんだけど。



《十年も想い続けてたんだから》



そう聞こえたのは唯には言わないでおこう。


 「なに笑ってるの?」


「いや、なんでもない。唯、愛してるよ?」


 「…知ってる」

照れ笑いした彼女はとても美しかった。



君の命の期限は僕たちの愛の期限ではない。

この身体が朽ちても君を愛し続けるよ…。


「愛してる」

そういって瞼に口付けを落とした。




end.




読んでいただきありがとうございました!


小説書くのって難しい…(;゜ω゜)←

処女作…

読みにくすぎる…。笑


本当に読んでいただきありがとうございました!!!_〇/ ̄∠ズサァ


よかったらアドバイスとかよろしくお願いします(●´ω`●)♪


74。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ストーリーがとても良かったです。 前書きの説明から、最後は死んじゃって終わるのかなーと少し不安だったのですが(死にネタあまり好きではないので)、幸せな最後でよかったと思います。 [気になる…
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