☆ライバル☆
「アイ、聞いてよ〜」
落ち込んでいる様子のルイ。
ルイもゲームの中での友達で、元々はレンの友達だったが、
3人で行動しているうちにあたしも仲良くなった。
もちろん顔は分からないが、喋り方も行動も男っぽくて、
頼れるカッコイイ存在だった。
最初会った時に、男だと勘違いしてしまったくらいだ。
そんなルイと、なぜか恋愛の話になって、
しかもいきなり相談なんてされてビックリした。
やっぱ女なんだな〜って、初めて実感したときだった。
ルイはあたしより5つも年上で、すでに結婚もしてるって聞いていたから、
どんな相談なんだろって、ドキドキしてた。
「実は、レンのことずっと好きだったんだ」
・・・えっ。
ルイは、今のダンナとうまくいってないことを話してくれた。
お金をためたら離婚して、レンのところに行きたいって。
ダンナとは、セックスレスで、離婚の話もほぼ決まっている状態らしい。
正直、なんて言えばいいかわからなかった。
ルイはあたしの気持ちも知らず、話し続けた。
レンのことを、命の恩人って言ってた。
何度も自殺を考えていたルイは、毎回レンの言葉で救われてた。
「辛くても、死ぬことだけは考えるなよ」
「生きる目的が分からないなら、俺のために生きろ」
そうやって優しい言葉をかけてもらって、救われてた。
誰だって、そんなこと言われたら期待しちゃうよ。
もしかしてレン、色んな人にそんなこと言ってるの?
あたしは泣きそうなのを必死に堪えた。
「ねえ、アイ?」
自分の名前がパッと画面に表示され、我に返る。
「もしかしてアイもレンのこと好き?」
ふいにそんなことを聞かれて、あせった。
「いや、あたしの中でレンは頼れるお兄さんって感じかな」
本当のことが言えなかった。
あたしの今の一言で、ホッとしているルイを見たら、なおさら。
胸がギュッと締め付けられる。
辛い、辛い、どうしたらいいか分からない。
ルイは、あたしがレンと出会うもっと前からレンのこと想ってて、
あたしの知らないレンもいっぱい知ってて・・。
ゲームを切って、すぐにレンに電話をした。
「もしもし、どした〜?」
レンの声を聞いた途端、涙があふれだした。
「ルイが、ルイがね、レンのこと・・」
泣き声で自分でも何を言ってるのか分からないくらい。
ちゃんと喋れてなかったが、レンは静かに聞いてくれていた。
レンは、ルイが自分を好きだということを、知っていたらしい。
あたしは、レンがルイに取られるかもしれないと思って、
不安でしかたなかった。
「ルイが俺のこと好きってゆってても関係ないやんッ」
鼻水をすすりながら、レンの声に耳を傾ける。
「好きってゆわれても俺の気持ちが変わるわけやないし、
俺はアイが好きやで?だから心配せんでいいやん☆」
レンのその言葉を聞いて、少し安心した。
たった一言、「好き」って一言、それだけであたしの不安はなくなった。
・・よかった。
あたしは、レンの言葉を信じて、電話を切った。