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エピローグ

 「ねえ、いちわ今日のお昼・・・」

 そこまで言って思い出す。そうだ、もうここにはいちわは居ないんだ。すっかり二人での暮らしが自然になっていたため、つい声をかけてしまう。一人に戻って思い知る。いや、解っていた事だ。いちわと二人で暮らしていた事はなんと楽しい事だっただろう。そういえばいちわ、昨日買った服とかも全部置いていったな。今度届けてやろうか、なんてことも一瞬思ったが、いちわの実家がどこなのかを聞いていなかった。こちらからは何もできない。いつかいちわがここに来た時の為に大切にしまっておこう。そう思うが、そんな日は来ないのではないかとも思っている。でも捨てきれない。それはつまりいちわとの思い出を捨てる事になる。そんなことはしたくなかった。その時携帯が鳴った。一瞬いちわからではないかと期待するがディスプレイを見てそんな淡い期待も一瞬で消える。父からだった。

 「もしもし?」

 「私だ」

 父はいつものように声を低くして大好きな刑事物ドラマの俳優の物真似をしている。いつもの事だが今の私にはこの父のお遊びが腹立たしくてしょうがなかった。こっちの気も知らないで・・・

 「なに?」

 私は思いきり不機嫌な声で応対した。よくよく考えれば父が私の心情を察せるわけもないのだから八つ当たりも良い所だ。

 「お前次の日曜は何か用事が入っているか?」

 父は明らかに不機嫌な私の声を聞いてもなんとも思わないようだ。相変わらずのマイペース。これもいつものこと。私が不機嫌であろうが上機嫌であろうが構わないのだ。それでもまあ、不機嫌になっていてもしょうがないので、努めて平静を装って父との応対を続ける。

 「空いてるけど、なに?」

 「うちの会社との提携会社社長さんたちとパーティをすることになってね。お前にも参加してもらいたいんだ」

 私の父は会社をいくつか経営している、いわゆる大企業の社長だ。だからこういった提携会社の人とのパーティというのはよく開かれる。私は社交辞令全開なああいう空間は好まないのだが、断り切れずに私もたまに参加する事になる。今回も先に予定を聞かれて、しかも空いていると答えてしまっている。今更やっぱり予定が入っているとも言えないので承諾するしかない。私に時間と場所を告げると父は早々に電話を切った。いつまでもこんな滅入ってるのも私らしくないし、気分転換にもなるだろう。イヤな気分になるだけかもしれないけど、それでも、今のこの気分を紛らわせる事はできるだろう。


 日曜日、私は指定された場所に時間通りに到着した。

 「ごきげんよう、沙希さん。お美しくなられましたね」

 「篠崎のおばさま、ごきげんよう。おばさまも相変わらずお美しいでございますね」

 精一杯の作り笑いを浮かべて社交辞令をする。どうやらこの場には見知った顔がほとんどらしい。私は適当に顔見知りに挨拶を済ませる。ごきげんよう、○○さん本日もステキなお召し物ですね。どちらのドレスですの?ステキな指輪でございますね。いえいえ、私などそんなに素晴らしい物ではございませんわ。やはり疲れる場所。社交辞令の嵐。私はひとしきり社交辞令をした後、では、ごきげんんようと言ってその輪から離れる。どこかに休めるような場所はないだろうか?そう思い歩き出す。その時、誰かに呼ばれたような気がして辺りを見回す。しかし見知った顔はその周りにはなかった。気のせいかと思い、また歩き出そうとしたが、また誰かが呼ぶ声が聞こえた。

 「沙希ちゃん!」

 気のせいではない。確かに聞こえた。懐かしい声。懐かしい呼び方。まだそんなに時間は経っていないはずなのに、もう何年も会っていないかのような錯覚すら覚えた。私はこみ上げる感情を抑えきれずに、勢いよく振り返る。そこに立っていたのは・・・・

ConcealedMemoryはいかがだったでしょうか?

前回のDeathDesireがちょっとバッドエンドっぽかったので、今回はハッピーエンドにしたつもりです。相変わらずの文章力のなさに加え、今回は見事に沙希もいちわも動いてくれなくて大変でした。

最後まで本作品を読んでいただいた皆様、ありがとうございました。感想なんかをいただけたら幸いです。

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