プロローグ
とにかく逃げよう。追いつかれないところまで、どこまでもどこまでも。あれ?逃げる?なにから逃げるの?なんで逃げなければならないんだろう。逃げる必要はどこにもないよね?そうだ、私は逃げてるんじゃない。これは逃走なんかじゃない。私は旅に出るんだ。長い長い旅に出るんだ。私は手に入れるんだ。私の宝を。だからそう、これは逃走なんかじゃないんだ。
「まてええええ!!!」
その声に振り向くと二人の男が私を追いかけきていた。やばい!追いつかれる!こっちは自転車だってのになんで追いつかれそうなのよ!あの人達足早すぎ!!もうすでに20分は走ってるっていうのに・・・恐ろしい体力だわ・・・・っていうか本当に人間なのかしら・・・・こうなったらプロジェクトC作戦しかないわね・・・!まずは曲がり角を何度か曲がって敵の目を欺く。そしてわざとらしく別れ道に自転車を乗り捨てる。あまりのわざとらしさに追っ手の二人は自転車がある道とは逆に向かう。逆に私は自転車が乗り捨ててある方の道に逃げる!こんな事もあろうかと、この日のために考えに考えぬいた作戦!予想通りお馬鹿な二人は私がいる方とは違う道に行ったようだ。完璧だわ。完璧すぎるわ、プロジェクトC!やっとまくことができた・・・・まったく、しつこいにもほどがあるわよ・・・でも、これでやっと一歩踏み出すことができた。私を邪魔する人は誰もいなくなったわ。これで思うぞんぶ・・・
ゴン!
なんてことだ・・・・勝利の余韻に浸りながら歩いていたら電柱にぶつかってしまった・・・・うぅ〜・・・・私ってドジだ・・・・私はあまりの痛さにうずくまってしまった。額を抑えてう〜〜う〜〜〜・・・・と呻く。幸先良いやら悪いやら・・・・とにかく、うずくまっていてもしょうがない。歩こう。私の旅はまだ始まったばかりなんだから!って・・・あ・・・あれ・・・・?た・・・・立てない・・・・どうしちゃったんだろう・・・っていうか・・・目の前が真っ暗くなってきた・・・・・あ・・・桜綺麗・・・・
どうでも良いことを最後に考え、私はその場に倒れ込んだ。