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松葉菊のこゝろ

作者: 空藤胡蝶

めい:なんか気になる人が出来たかも…

 

むつ:おや、珍しい人からの発言ですねぇ?


みな:姐さん、そこんとこ詳しく!


まゆ:おぉ、めいもとうとうこっちの仲間入り?!


もこ:さぁ、洗いざらい話しなさい!



 先日のチャットを思い出してくすりと笑う。そんな私の現状はといえば、


『ただいま恋愛小休止中です。』


である。なんて言ったら友達に驚かれるだろうか。私、祿泉茉渝(さちい まゆ)は自他ともに認める恋多き乙女である。いっつも「あ、あの人かっこいい!」とか、「あんな人が彼氏だったらなぁ…」とか。とにかく惚れっぽい。そしてそれをすぐに『恋』だとする。

 

 自分で言うのもあれだけど、容姿も頭脳もそこそこ恵まれた私はいろんな意味で《付き合いやすい人》にカテゴライズされる。交友関係は広く浅くをモットーにしているから余計にそう見えるらしい。


 そんな私が最近鎮静化している。…何というかちょっと積極的に動くのを止めたというか、落ち着きというものを得たというか。いや、もともとどこかのんびりとした性格だったため、表面的にはそんなに変わらないかも。


 そんな事を考えていると部活の始まる時間が近づき部員が集まってくる。もうすぐ引退する私たちの学年は仲が良い割に定期的な部会になると揃いが悪い。今日は会計さんが出てくるから少しは人来るかな?と思ったけれどそうでもない。実際私も4限の授業が同じだった子に「会計さんに渡しといて」と領収書を渡された。


「やっほー」


「お疲れ様」


「急に寒くなったよねー」


「ほんと、ってそれ今日薄着だから余計じゃない?」


「朝は平気だったんだけどなぁ。日中もぽかぽかしてたし」


「油断大敵だよ」


「茉渝には言われたくないー」


「何それ、心配して言ったのに」


 そんな軽い会話をしながら友達とお菓子交換。だって今、5限終わりですから。最近野菜不足を感じた私の本日のおやつは野菜チップスだった。…これ、ちょっと硬すぎやしないか?

 

 友達が部長と話し始めたため横で聞きつつ黙々と食べていると久々な顔がちらほら。いや、2人だけど。あの組み合わせで来るのが珍しい。…ん?合宿中は普通だったな、あの組み合わせ。とりあえず距離があったけど、目があったからひらりと手を振って挨拶する。


 片方が私の手元を見たため、食べる?と表情で尋ねながら差し出す。


「お、サンキュー」


 手が伸びてきて1つとった。あ、さつまいも…まぁ数あるしいっか。そう思っていると彼と目があった。つい癖で首を傾けると


「美味しい…?」


 言いながら向こうも首を傾げたので私は苦笑いで返す。私はこの味結構好きなんだけどな…なんて思っているとまた向こうから手が伸びて来た。そのまま袋を取られ、どうするのかと目で追うとそのまま成分表示を見始めたので今度は反対側に首を傾ける。


 やがて満足したのか、ほいっと袋を返される。そこで副部長が部屋の鍵を持ってきたのでみんな部室へと入り始めた。普段は3年がなんだかんだで最後に入るけれど、今日は入口に一番近かったから最初に入る。


 何となく決まっている定位置に鞄を置いて座ると彼が横に来た。クールガイと言われた彼と初めて話したのは実は2年に上がってからだったりする。話してみたら思ったより気さくで。一緒にいてとても自然にいられた。


 でも、彼のタイプは私みたいなのじゃなくって、もうちょっと派手目の子みたいで…彼自身、見た目的にはどちらかといえばそっち系である。それなのに私とも普通に話してくれる。その距離感が心地いい。


 ほら、今もすぐ隣で。周りが騒がしいからちょっと顔を寄せ合って話す。遠くからみたら絵になってるかなぁ。なんて考えてくすりと笑う。彼が不思議そうな顔をしたから何でもないって顔を振った。


そんな彼が手元を見て一言。


「にしてもよく食うな」


…うっ、痛いところをつかれた。お腹すいてるんだもん!仕方ないじゃない。


「…もう少ないから、なくしちゃおうと思って」


あははーと笑いながらなんとか不自然じゃない返事をする。というか一応事実だ。


「はーい、じゃあそろそろ始めるから皆静かにして!」


部長の声にようやく部室が静かになっていく。今年の1年生はとにかく元気なのだ。


「こうして見てると今年の1年本当に多いのな」


「なんだかねー。いっつもこの位いるよ。結局名前覚えきれてないし」


あ、お菓子なくなった。軽く袋を除いてそれからたたむ。あとで捨てよう。


「…こんだけいたらなぁ。つーか3年少ないな」


「最近こんなもんだよ。というかそんなこと言う位なら来なさい」


ここでようやく彼の方を向いた。そして向くタイミングを間違えたと悟る。


「へぇ、今日2限までだったのにわざわざ来た人に向かってそんなこというんだ」


とても良い笑顔で彼が笑った。


「…それは、お疲れ様です」


顔ひきつってないかな。大丈夫かな。


私の反応に当然というように彼が笑みの種類を変えた。


 この距離感が何となく好きだ。だから、久々にこの気持ちは浮上させないでまだしばらく置いておく。


「はーい、それじゃあ出席取りまーす。3年生…」


 しばらく返事がなく名前だけが呼ばれていった。




祿泉茉渝、ただいま恋愛小休止中。






読んで下さりありがとうございます。まゆちゃん、本当はもっとはっちゃけた自由奔放な女の子の予定だったのに何が起きたんでしょうか?


ついでにいうと、次に更新するのはこの子の予定じゃなかったのに。


でも、まぁこれはこれでいいかなぁと思っています。


果たして彼女の状況を小休止というのだろうか…まぁそこはどこか抜けているまゆちゃんですから(笑)


ではでは、続きがあるかは分かりませんがあとがきはこの辺で。

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