第五話 シュークリーム恐るべし!
少々女装ネタが入っております。(少々?)
まぁ真琴がそうなるんで、気味悪くはないと思いますが、苦手な方はスルーしてください。
「ま・・・護さん!!」
「んふふ、琴ちゃん可愛い。」
「可愛いじゃないです!!なんで僕がこんな恰好しなきゃなんないんですか!?」
僕、中澤真琴はこの目の前にいる、にこにこ鈴城護にいきなり拉致られ・・いや連れられて現在知り合いだという人の洋服店にいます。それは百歩譲っていいとしよう。でもこの店、女の子の服しかないですよ護さん!?
「言ったでしょ?今日一日俺に協力してって。」
それは、今朝にさかのぼることになる。ソファーでくつろいでいた真琴のもとに、にっこりと笑った護が現れて、今日の予定を聞いてきたのだ。真琴は正直家事が終わったら暇人なので正直にそう言った。
「そう、ならさ、俺に協力してくんないかな!!もちろんただでとは言わないけど。」
「いえ・・・そういうことなら。護さんには僕の荷物運んでもらったっていうあれがありますから、いいですよ?無償で引き受けますけど・・・・。」
それから手をつかんで連れ出され、車でここにきて今に至るのだ。
「いったい何の協力なんですか!!なんで僕こんな・・・こんな・・ワンピースなんか・・・。」
「うん、琴ちゃん女の子にしか見えない!」
「そうじゃないですよぉ!!」
「これなら大丈夫。琉ちゃん!しばらくこの服借りてくよーん!」
「借りてくなんて言わず、もらってってください。鈴城さんにはお世話になってますから。」
「そぉ?やり、人徳人徳。」
「にしても、鈴城さん女の子のタイプ変わりました?」
店長の男が真琴を見ていった。ちなみに名前は波川琉弥さんだそうです。
「琉ちゃん、違う違う。この子は男の子です!」
「うっそ・・・・。へぇー、でもなんで男の子にワンピース?」
「僕もそれ聞きたいです。」
「琴ちゃんの力が必要なんだよ。じゃ、遠慮なくもらってくねー!」
再び真琴は護に手を引かれ、店を後にしどこかに向かった。そして、再び車が止まったのはとあるビルの前だった。近くの駐車場に車を止め、二人はそのビルの裏口から入っていった。係員の人に護が何かを言うと、控室の方に通してもらった。そしてその中の一室に着いた。
「ここって・・・・?」
「ここはね、モデルさんの控室。DDって雑誌知ってる?」
「結構有名ですから・・・。」
「今日ここでそれに載るモデルさんの撮影あるんだよね。でね、さっき言った店は今日の衣装提供してる店でね、琴ちゃんには撮影協力してほしいんだよー。」
「どういう協力ですか?」
「ま、それはまたあとで。」
そういって護はドアをノックした。中から返事があり、護がドアを開けてその中に入り、真琴もその後について入っていった。中にはまぁ、美形さんがいることは容易に想像できたので驚きはしないし、もうこの三人と一緒にいるからよくわかんない免疫ができた。
「あんれ、護君じゃん?なに?俺の逃亡に協力してくれる気になった?さっきから、逃げ出そうとしてんのにさ、係員に見つかって出来ないんだよね。護君なら簡単だろ?」
「ざんねーん!俺は要一の撮影の協力に来たんだよー!!」
「帰れ!!そんなことなら帰れ!!」
「安心しなよ要一。要一がなんで撮影いやがってるのかわかっててここにいるんだよ?しかもその打開策を俺は持っているのだ―――!!」
「なんだよ、その打開策って・・・。」
「この子で――す!!!」
そういって、護は真琴を自分の前に連れてきた。
「・・・・だ―――――か―――――ら――――――俺は女は嫌いなの!!だから撮影やんないって言ってんのが分かんないわけ!?」
「え・・・・・?」
「くぷぷぷぷっ・・・要一、お前この子が女に見えてる?」
「あったりまえだろ?どっからどう見たって・・・・・・・・・っえ・・・・・・?」
「ふぎゃっ!?」
ド―――――ンと護が真琴を要一の方に押した。真琴は突然のことに止まることができずに、要一にぶつかって、上に押し乗ってしまった。
「え・・・え・・・・えええええええ!?」
「ちょ・・・降りろよ・・・おり・・・・・え・・・・?君・・・男?うそだろ・・・・?男?え・・・じょうだんだよな・・・・?」
「あの・・・正真正銘男ですけど・・・すみません今おります。」
謝りながら、真琴は要一の上から降りた。にやにやと、護が真琴の傍らに立つ。
「ど?びっくりした?琴ちゃん、可愛いでしょ?」
「何するんですか、護さん!!!!」
「琴ちゃんに触れば要一も男だってわかるかなーって。でもほら触ってよーなんて言ったって、要一がさわんないことくらい予想できるし、だからこうした方が早かったのだよ。」
「君さぁ、人の扱いひどくない?つか、誰この子は?君の変な思いつきに巻き込まれちゃった不運な子は。」
「中澤真琴君。通称琴ちゃん。」
「つか名前聞いたわけじゃないし、どこの子だよって言ってるの。見かけない顔だし・・・。」
「今俺達と一緒に住んでる子でね?家とは関係ないから。たまたま知り合って、縁があってね。それで今日は俺のすばらしい作戦に協力してって言ったの。ねー、琴ちゃん。」
「たしかにそう言われましたけど・・・こんなことだなんて聞いてないですし!!ていうか、まだ何にもわかんないです!!!」
「あは、それもそうか。その前に、要一の事紹介しようか。この綺麗な人は、長谷部要一。DDの専属モデルで、生粋の女嫌いです!!」
「誤解招くような説明どうも。言っとくけど、あっちの人でもないよ?恋愛しないたちだし。」
「悲しいこと言うねー。初恋とかないの?」
「護君には言わない。」
「ちぇ―――・・まあいいか。でね、女嫌いだもんで、撮影の時とかも基本一人。でも今回のテーマが、冬のデートらしいのよ。」
「デートってことは男女での撮影ですね?え・・・じゃあ、どうするんですか?要一さん撮影できないんじゃ・・・・。」
「そこで、琴ちゃんの出番ってわけだよ。頑張れ琴ちゃん!」
「はい!?」
「つまり、君は真琴君を女として俺の相手役にしようってこと?」
「へ?」
「ピンポンピンポン!!大せいかーい!!!」
「ええええええ!!!!?なんですかそれ!?無理ですからそんなの!!」
「ええ―――でも、もう衣装も着て大張りきりのくせにー。」
「貴方が強制的に着てって言ったんでしょう!?」
「そだっけ?」
「いやですよぉ!!僕にモデルなんか無理ですううう!!帰らせて下さいいいいい!!」
「おねがーい琴ちゃん!!あとで駅前のロン・ポエールで特製シュークリームおごるからぁ!!」
「しゅ・・・・シュークリーム・・・・。でも・・・う・・・でもでも・・・うぅ・・・。」
真琴は脳内で、真剣にモデルとシュークリームを天秤にかけていたが結果は決まったも同然だった。
「やります・・・・。」
「シュークリーム、おそるべし。」
「へっへへーん!!琴ちゃんがクリーム系の甘いものに目がない事は、すでに充情報でゲットしてるのだ!!じゃ、よろしくね、琴ちゃん!俺、しっかり見学してるからー。」
「うえええええええ・・・・要一さん、不慣れですけど、よろしくお願いしますぅ・・・。」
「君も、苦労人だね。ま、指示があるし、その通りにすればいいし、わかんないことあったら聞いてね。」
「はいぃ・・・・・。」
しばらく、要一さん達と話していると、スタッフさんが来て要一さんと僕を呼んだ。カメラマンさんとか、スタッフさんには事前に護さんが話してたみたいだ。なにそれ、すでに決定事項だったってこと?
「えっと、真琴君?」
「はい。」
「かたくなんなくていいからねー。女の子なんだって意識して、あとは要一君に合わせればいいから。」
そういわれても、この18年僕は当然男として生きてきているわけで、どう女の子だと意識すればいいかわかんないし、かたくなんないでとか無理!しかもカメラマンさんの後ろでにやにや顔で立ってる護さんがなんかむかつく。耐えろ、耐えろ真琴!!シュークリームのためだ!!
「では、撮影入りまーす!よろしくお願いしまーす!!」
こうして、撮影が始まった。まぁモデル初体験の僕に、カメラマンさんやアシスタントさんが、わかりやすく支持してくれたし、そんないやなポーズとか取らされなかったから結構楽しいと言ったら楽しかった。
「はい、お疲れさまでした―――――!!真琴君もお疲れ様!」
「お疲れ様ですぅ・・・・・。」
けど、僕にはハードです。疲れきって思わずその場に座り込んだ僕のもとに護さんがやってきた。
「いやぁ、やっぱ琴ちゃんは可愛いよ。要一の隣にいても遜色ないしね。要一もやっぱかっくいー!!」
「そりゃどうも。でも、真琴君よく頑張ってた方だと思うよ?また、こういうテーマの時は来てもらおうかな。」
「っ・・・・え・・・遠慮しますぅ!!!!!」
「さーって、俺らはそろそろ帰ろうか。」
「はい!あ・・・でもその前に・・・着替えたいんですけど・・・。」
「琴ちゃんの服は、家に送ってもらってます!だからありませ――――ん!!」
「はいいいいいいいい!?え・・・えっじゃあ・・・僕このまま帰るんですかぁ!?」
「大丈夫大丈夫!その姿見てうれしい人はいるけど、嫌な人はいないって。じゃ、要一まったねー!!」
「え・・・うっわ・・・よ・・・要一さん、さようなら!!!」
「護君、真琴君、またねー!!」
さわやかに手をふる要一をのこし、真琴はまた護に手を引かれ、そのビルを後にした。
車の中で、真琴は護が買ってきたシュークリームを頬張っていた。生クリームをあふれんばかりに入れられているそれは、ほんとにおいしいシュークリームだった。
「いやー、でもまさかこんなに違和感ないとは、御見それしましたよ、琴ちゃん。」
「うれしくないですよぉ・・・。」
「ははは、でも次号のDDは買わないとね。」
「買わないでください!!!」
「いやいやいや、琴ちゃんファンの一人としては買わないわけにはいかないでしょう。」
「ファンとかいらないですから!!もう・・・こんな恰好・・・笑い物ですよ・・・・。」
「そんなことないない、なんなら今から駅前俺とデートしてみる?うらやましい目で見られるかもだけど、変な目で見る人はいないって。」
「それもどうかと思います・・・・。・・・・なんで僕、成長できないんだろ・・・・。」
「え・・・・・?」
「あ・・・・いえ・・・・。僕、15歳くらいからぱったり身長が伸びなくなったんです。一ミリもですよ?声変わりもしないし・・・だからよく18に見られなかったりしますから、よく疑われたりすることも多くて・・・。それこそ、女の子なんじゃないかって疑われたりして・・・僕は普通じゃないのかな、なんて思ったりするんですよ。おかしいですよね、れっきとした男なのに・・・。」
「まぁ、声変わりしない男ってのもいるんじゃな?微妙に変わるだけとかさ、琴ちゃんまだ若いんだし、これからだって。」
「だといいですけど・・・・。」
家に帰って、まず翔に驚かれたのは言うまでもない。それから護は翔にしばしお説教されてた。どっちが年上だかわからなくなる光景だ。真琴はしばしそれを眺めていた後、自分の今の格好を思い出し、慌てて自分の部屋で着替えた。
「え―――――琴ちゃん着替えちゃったの・・・?」
「あ・・・当たり前じゃないですか!!いつまでもあんな恰好してると思ったら大間違いです。」
「ったく、何が良い思いつきだ。真琴もまずはどんな内容だか確かめたほうが良いぞ?」
「今度から絶対にそうします。」
「俺なんか悪ものになってる――――――!!決めた。今日はピーマンたっぷり酢豚にする。」
「いやあああああ!!それだけはやめてくださいいいい!!」
「いーや。ついでに牛乳出してやるう。」
「やだぁ!!!ピーマンも牛乳もいやああああああ!!護さんやめてぇ!!」
「知ってる琴ちゃん?男はねいやがられるほど、燃えるんだよ。」
「おいおい・・・それなんか違わないか?」
「ぷっ・・・・なんてね。今日は筑前煮と、アジの開きです!」
「うう・・・なんかいいようにからかわれてた気がする・・・・。」
護にはかなわない真琴なのだった。
もう長いのとかいいや。(なげやり)
だって書きたいんですよ。こうなるとどこをカットしようか迷うというか・・・。
読んでくださりありがとうございます。