第四十話 生死の境
記念すべき四十話です。
そして、残り数話の予定です。
その空間の時が止まったかのようだった。
その場にいる全員の動きが止まっていた。ただ、真琴の体内からあふれ出た血液だけが、床に血だまりを作る以外、動いてはいない。
その数秒後に我に返った護と充、香月が、走り始めた。さらにその後にはコクとビャクが形を保てずに消えていく。
真琴の眼鏡がずり落ちて、床に落ちた。乾いたことんという音が嫌に部屋の中に響いた。眼鏡がなくなったその瞳が淡く光を放ちはじめる。翔の力に触れて、真琴の『抑制』の力が発動する。翔の身体に、強大な『抑制』の力がそそぎこまれる。ずるりと、真琴の身体から翔の手が抜け落ちた。それにつられ、新たな血が床へとこぼれおちる。
そして、二つの身体はその場に崩れ落ちた。
「翔!琴ちゃん!」
「充、要一の奴呼べ!!後、優にも連絡!!」
「今かけてる!あ・・・要一、今すぐ・・・・。」
「琴ちゃん!琴ちゃん!琴ちゃん!!!!!」
「おい翔!翔!!だめだ、こっちもピクリともしねー。」
それから、すぐに優が手配した救急車のサイレンが聞こえてきて、優と数人のスタッフがその場に現れた。
「優、こっちこっち!」
護が真琴に負担がかからないように抑えめに叫んだ。
「何があったのこの部屋は!?嵐でも通り過ぎた?」
「いいから、こっちが先!特に琴ちゃんはマジ死んじゃいそう!!」
「え・・・・っ・・・すぐに搬送するよ。たんかと、あと酸素!それから救急車に止血剤準備して!」
「はい!」
言われたスタッフ達はすぐに準備に取り掛かった。優はすぐに、真琴に向き直ると、床に真琴を寝かせ傷口を見た。
「こりゃ・・・ひどいね・・・。何に貫かれた?」
「手。」
「手!?・・・って・・・まさかそれで翔の手に血がついてるとかじゃないよね?」
「その通り。翔がやったんだよ。」
「んな!?そりゃこうなるわな・・・。ちょっとこれは危険だなぁ・・・要一には連絡した?」
「なんか病院に行くからって・・・今からここくるより、病院行った方が早いからってさ。」
「わかったすぐに搬送する方がいいんだね。で?翔はなんなの?」
「意識不明ですねー。」
「そりゃ見ればわかるさ。なんでそうなってんの?暴走したなら前見たく混乱してても意識はあったでしょうに!」
「琴ちゃんの力でね。たぶん体の機能低下してるんじゃないかって、香月が言ってた。」
「真琴君の能力?この子一般人じゃなかったの?」
「違ったみたいだよ、琴ちゃんの能力は『抑制』。」
「え・・・じゃあ、真琴君が・・・・。」
「そう『白姫』。わかりやすいでしょ?」
「そう言う事を言ってる場合じゃないけどね。ま、翔の方はそんな急ぎでもなさそうか。とりあえず真琴君だ。死なせるわけにはいきそうもないし、僕は医者だからね。」
「優頑張って。」
「琴ちゃん死なせたら許さないよん?」
妙にテンション高い気がするのは、無理してるからかなと優は思った。そうこうしているうちにたんかと用意してと言ったスタッフが現れ、真琴が運び出されて行った。
「翔は、怪我とかなさそうだし、誰か下まで運んでくれる?」
「わかった。香月がやるよ。」
「お前も手伝うんだよ、俺一人で運べるわけあるか!!」
「俺は琴ちゃんの付き添いするからね。充よろしく。」
「わかった。ほら、香月そっち持って。」
二人はそれぞれ救急車に乗せられ、優の勤める病院に向かった。
久々の登場の優。
病院とか詳しくないんで、担架とか適当ですので、ご了承ください。