第三十八話 激突
それぞれの戦いみたいな感じです。
といってもまじめに戦う気あんのかこいつら・・・みたいな感じです。
その翔の発言に、思わず譲の顔が曇る。
「馬鹿なまねはよせ!そんなことをすればこの子もただでは・・・・。」
「真琴はお前らが守るんだろ?え?血眼になって探してたもんな、それがようやく手に入って、それでここで俺に壊されちゃったら終わりだもんなぁ。幸い此処には能力者がわんさかいるんだ。俺に対抗できる奴がいるかもしれないしな。」
さらに、亀裂がい大きくなった。手加減など最初からする気はない。ただここを壊せればもうそれでいい。そうだ・・壊せ・・・こわせ・・・コワセ・・・・コワセ・・・・。
「朽ち果てろ・・・・・なにもかも!!」
刹那。翔は譲の方に向かって跳躍し、そのこぶしを振り下ろした。だがそれは、見えない障壁に阻まれた。真琴が『抑制』の力を使って防御しているのだった。力がぶつかり合う間、その境目からは火花と稲妻が走っている。そうしているときに譲が呼んでいた能力者たちが次々に現れる。
「っ・・・・・・!!」
ついに力に差がつき、真琴が徐々に押され始めた。能力値でいえば五分五分のはずなのだが、今日の翔は手加減などしていない。それに経験の差というのが原因だろう。死からがはじけ飛び、真琴の身体は宙を舞って離れた床の上に落ち、譲は既にその場から離れていた。長椅子が翔によって破壊され、破片が飛び散っている。
「翔―そんなことしたら琴ちゃん死んじゃうよー。狙うのは爺だけでしょうにー。」
「邪魔するものは皆・・・壊す・・・・・。」
繁春と激突しながら護が翔に声をかけるが、全く聞く耳持たずである。
「よしよしよし・・・ありゃ駄目だな。完全に暴走してやがる。やらせておきゃいいんじゃね?中澤にはいいお仕置きになるんじゃねーの?」
コクと戯れながら香月が言った。
「ってか、なに遊んでるの?こっち手伝ってよ。ま、もうすぐ出終わるけどさ。ね、清忠。降参しちゃいなよ。」
「は!誰がするかよ!てか、なんでもう一匹の方は香月なんかに懐いてんだよ!!今は俺のしもべだろう!!」
「残念だったな。『抑制』のちからでお前の能力を無効化したに決まってんだろうが!!まだまだ甘いんだよバーカ!」
なんともふざけたような戦いであるが・・・もうすぐ決着はつきそうである。
直も翔の破壊行為は続いていた。次々に能力者達を床に沈め、この建物を破壊して行く。さながら破壊神が降臨したようだ。
おそろしい。
真琴はその光景を、離れたところから茫然と見ていた。意識は戻っているのは、護と繁春が戦っていて余裕がなくなったからだろう。だがこういうときになにも気がつかなくてもいいと思った。今の翔はほんとに怖い。壊すことが楽しいとでも言うように、笑いながら床を壁を壊していく。離れている真琴でも思わず背筋に寒いものを感じた。
そのため危険が自分に迫ってきていることに気がつかなかった。翔の能力の影響で床は次々にひび割れ、そのひび割れは徐々に間隔が広まって来ていた。そして、真琴の下の床が、ぱっくりと大きな口を開いた。
「あ・・・・・・っ!!」
なすすべもなく、真琴の身体は下へと堕ちていく。手を伸ばすが、床には手が届きそうにない。あきらめて、落下して行くのを受け止めて目をつむったその時。
誰かが真琴の手をつかんだ。真琴の身体は落下して行くのをやめて、ぶらぶらと揺れている。真琴はゆっくりと目を開いて、上にいる人影を見た。
「ぎりぎりセーフ!さっすが俺だよねー。」
「自画自賛とかうざい。早く引き上げなよ。」
「おい、大丈夫かよ。」
真琴をつかんでいるのは護で、その横に充と香月。それにコクとビャクもいる。護に引き上げられた真琴はそのまま護に抱き締められた。ふんわりと、優しく包み込まれた。
「探したんだぞう。心配かけるなんていけない子だねー。お母さんプンプンだからね!」
「だれが真琴の母さんなの?気持ち悪。でも、安心した。」
「護さん・・・・充さん・・・・。」
「ったく、なんで来ちまうのかがわからん。だいたい、お前につけてたやつは取り外し自在だっただろうが!」
「あぅ・・・だって・・・何となく・・・翔さん達くる気がしてたし・・・あ・・・会えるかなって・・・会いたかったんだもん・・・皆に・・・それに・・・。」
真琴の声は、爆発音に似通った音にかき消された。真琴達がその方を見ると、もう部屋は見る影もなく、がれきの山と化していた。立っているのは翔だけで、譲やその他の能力者の姿はない。
「か・・・・翔さん・・・・?」
「あちゃー、あれどうやって止める?」
「俺まだ死にたくねーからなぁ。」
「爺達は逃げたね。気配がないし、ああなっても翔は人殺しはたぶんしないだろうし。」
たぶんとか気になる発言が聞こえたが、今はそれどころではない。真琴は、きゅっと着物の襟をつかむと、護の腕の中から飛び出した。
「琴ちゃん!?」
翔に向かって、真琴はただ走った。
今思ったんですけど、護は真琴に抱きつきすぎる。
翔より抱きついてんじゃないのか・・・・・
全然今回の話に関係ない感じのあとがきです。