第三十七話 『破壊』
しばしの無言が続いたが、翔がそれを打ち破った。
「どういう事だかわかってないのは・・・俺らだけってことか。いや・・わかりかけてるって言った方が良いのかもしれないけどな。」
翔は、目の前にいる譲にそう言った。譲はただ静かににったりとほほ笑んだだけだった。
「真琴は・・・一体何なんだ?」
「そんなに気になるか?お前には関係ない一般人だろうに。」
「一般人に、能力封印装置はいらない。なぜあれを真琴はつけている?」
「一般人ではないからという理由以外に何か?」
「・・・・・真琴は・・・いったい・・・・・・・。」
「それは本人に聞いたらどうだ?」
「え・・・・・!!!?」
カシャンという音がしたかと思ったら、ひんやりとした感覚が翔の左手にあった。その方を見たら真琴が翔の手を握っていた。さっきの音は真琴がつけていた、能力封印装置がはずれて床に落ちた音だった。
「つか・・・まえた・・・・・。」
「え・・・・・・・っ・・・!!?」
その時、翔はようやく自身の身体の異変に気がついた。能力が使えない。それどころかあるのさえ分からなくなったような感覚に、翔は思わず膝をついた。能力だけでなく、全身の力もなくなってしまったようだ。
「それがその子の能力だ。名は『抑制』。」
「『抑制』・・・・まさか・・・・!?」
「勘づいたか?そう、その子こそ我々が、そしてお前達が探していた『白姫』だ。」
「真琴が・・・・『白姫』・・・・・・?嘘だろ・・・・だって・・・いままで能力なんか使えなかったのに・・・・。」
「我がせがれのせいでな。」
「せがれ?父さんのことか?」
「そうだ。その子はお前の父親稔とも、そして母親の美琴ともあっている。それ以上のこともあったようだがな。」
「それであの二人があんなことを・・・・・・。」
かちっと音がした。何かと思って翔が自分の手を見るとそこには今まで真琴がしていた、能力封印装置がはめられていた。さらに真琴はそれに鍵をかけた。未だに真琴の能力の余波が残っていた翔は動けずにいる。その間に真琴は歩いて譲の方に向かった。そしてその鍵を譲に手渡すとそっと譲の腰かけている長椅子に座った。譲は真琴の肩を抱き、自分の方に寄せた。
「これで、我が望みの物はすべて手に入った。この何年か探し求めた『白姫』。そしてこの『不知火』を継ぐ素質のある孫までもな。」
「くっそ・・・・なんで真琴が・・・『白姫』なんだよ・・・・。だって『白姫』は・・・母さんのはずだろうが・・・・。それなのに・・・なんで・・・・。」
「この子は美琴であり、美琴でなく。、真琴である。・・・・そう言うものなのだよ。」
「意味・・・・わからねーよ・・・・。いいからさっさと真琴を離せ。」
「条件次第だな。」
「条件?」
「お前が私の条件に従うというのなら、この子と共にいられるようにしてやらんでもない。」
「どうせ、継げとか言うんだろ?」
「その通りだ。何、無理強いはしないさ。いまとなっては『白姫』さえいればよい。この子は永久にここに縛られる運命なのだからな。そうなるために生まれてきたようなものだ。我が望みのためにな。」
「真琴の人生は真琴のもんだろ。お前なんかの望みだか何だか知らないが、勝手に決めんのはおかしいだろうが!」
なんとかして立ち上がった翔だが、封印装置が外れない限り、能力は使えない。能力が使えないので、壊すこともできない。困ったものだ・・・。
「無理強いはしないとかいってさ、周りに隠れてるやつらはなんなんだよ。」
「気付いていたか。お前の返答次第だ。素直に従えば、襲わせはしない。さぁ、どうする?」
本当にむかつくくそ爺だと翔は思った。翔の中でふつふつと怒りがこみ上げてくる。
むかつく。
何にむかついているかって・・・この今の現状にむかつく。何故気がつかなかったのかが理解できないし、そもそもくそ爺の隣に、真琴がいるのもむかつく。ああ、嫉妬してんのは分かってるけどさ。さわんじゃねーよこのくそ爺。
・・・・・・・・・・ああ・・・もういいや。
ならすべて壊せばいい。ここ全てを。最初から俺の望みの一つでもあったんだ。ここを再起不能にまで陥らせるまで、壊してしまえばいい。邪魔するものは皆壊す。そう言う力なんだ、俺の能力は。だって『破壊』だもの。
「くっ・・・・くくくく・・・・・そうか・・・そうだな。そのためにあるような力だ。」
「何?」
「邪魔するものは皆壊せばいい・・・・簡単な話だな。」
パキンと、翔の手首についていた能力封印装置が砕けた。その直後、翔の足元の床にひびが入り、砕け散る。さらに壁にも亀裂が走り、天井からはかけらがぱらぱらと降り注ぐ。
「お前・・・何をする気だ?」
「ここを・・・壊させてもらう。」
翔の瞳が青く輝き、『破壊』の能力が
発動する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
戦闘という戦闘シーンは皆無です。
また長くなってしまっている今日この頃です。
読みにくい小説をお読みくださりありがとうございます。