第三十四話 訪れる悲劇
これで真琴の過去は最後になると思います。
結構簡潔にまとめて書いてます。
時間があれば番外編として細かな話などを載せられたらな、と
真琴は、人工子宮の中で生きながらえて、成長していった。そして、身体が安定して外に出たのは真琴が五歳になった時だった。
人工子宮の中から出た真琴は、そのまま稔と美琴の家に引き取られた。美琴は、翔の代わりと言わんばかりに真琴の世話を買って出た。美琴は、あまり外に出られないため、真琴に知識を教えて行っていた。それを日課にしたようで、真琴もよくなついているようだったが、決して表情は変えなかった。人格が欠落しているようである。それでも、美琴は笑みを絶やさず、真琴の世話をした。
「これは、『あ』よ。あひるの『あ』。」
「・・・あ・・・・・。」
「そう。それでこれは『い』。いるかの『い』。」
「・・・・・い・・・・。」
もちろん、翔の世話も怠らず、出来る限りのことを、陰ながらにやっていた。そして、彼が中学に入る時が来るのを楽しみにしていた。
真琴は再び自分の過去をやや上空から眺めていた。傍らには稔がいる。
『美琴は息子が増えたかのようにうれしそうだった。翔は、美琴の能力の影響を受けて成長に支障をきたす恐れがあったからな。お前は一応、美琴のクローンだ。その心配はなかった。』
『それで・・・翔さんが中学生になるまで離れて暮らしてたんですね。ある程度成長するまで、会えなかったんですね。』
『そういうことだな。だが、平穏な日々も、長くは続かなかった。俺らは結局、あいつと生きて会う事はなかった。』
『・・・・っ!?』
そうだ。この後二人は・・・・ころされちゃうんだった・・・・・。
『・・・・あの・・・聞いても良いですか?』
『殺した奴のことか?』
『はい。』
『殺した奴は今、『黎明』のトップをやっている男だ。』
『『黎明』ですか・・・・。』
『知っているのか?』
『いえ・・・『黎明』のことは、名前だけしかわかりません。翔さんに教わっただけですから・・・、詳しいことはなにも・・・・。』
『そうか・・・・。』
『あの・・・もうひとついいですか?』
『なんだ?』
『僕を施設に預けたのはだれですか?』
『俺の使いだな。なんとなく、やばそうな気配だったからな。お前だけでもと思って俺の使いにお前を託した。その数時間後だったな、殺されたのは。だが悔いはないさ。それだけの行いはしたつもりだし。人生に悔いなしだ。』
『そうですか・・・。』
『お前も、悔いることがないように生きろよ。』
『・・・・・はい。』
『では、別れだな。意識を取り戻したと同時に、俺の『封印』の力も完全に解けるだろう。お前は全てを思い出す。それからどうするかはお前の自由だ。俺の父親がなんと言おうが、お前はおまえの道をすすめばいい。じゃあな・・・・・・・・・・俺のもう一人の息子。』
暗闇がはれていく。それと同時に、真琴の脳裏に自らの過去がよみがえってきた。
悲しくもあり
胸が痛む時もある
けれども、今思い返せば、自分がどれほど愛されてきていたのかが分かった。
たとえ、自分が真の人間でなくても、
『ナカザワマコト』
であることに変わりないのだ。
たとえ、母体を介してなくとも、生物的には人間となんら変わりはないのだ。
そして、自分は今のこの世では、唯一無二の存在だとも知った。
そうか・・・僕が・・・
『白姫』だったんだ
美琴のクローン=真琴=『白姫』ということです。
一般人じゃなかった真琴。能力者としての自覚をもった真琴は・・・・