第三十三話 ナカザワマコト
真琴の過去に入りますね
二・三話続くと思います
時は、今から18年前にさかのぼる。大谷稔、美琴夫妻は四歳になる息子を家の手伝いに預けていた。それは美琴の能力が彼に影響しないようにである。美琴は『白姫』と呼ばれる存在だった。『白姫』は代々『抑制』という力を持っている。その『抑制』という能力が、小さい翔の成長に影響を及ぼしてしまうのを防ぐためだ。
「さびしい、思いをさせてしまってるわね。」
「・・・・・・・・・・。」
「貴方は、会いにいったっていいのよ?なんなら、一緒に暮らしたっていいのに。」
「・・お前が会えないのに、俺だけあったって仕方ないだろう?」
その言葉に、美琴はくすりと微笑した。
「それより、本当にいいのか?」
「あの計画の事かしら?・・・・ええ、もう決めたことですし、あの子が生まれた以上、あの存在は必要なの。貴方と私のように。」
「・・・・おまえがいいなら、俺はいいんだが・・・。」
「でもきっと、つらい思いをさせてしまうわ。私はもう、そんな長くは生きていられないかもしれないから・・・・。」
「だからこそ、準備をしておかなければいけないな。」
「ええ・・・私これから本部に行ってくるわ。」
「わかった。俺も行く。」
そして美琴は、本家で自らの細胞の一部と、遺伝子、卵子を取り出し、人工子宮の中に取り入れた。あとは、能力者に任せるしかない。稔と美琴の前には十個ほどの人工子宮があった。美琴の他にも、研究対象は多くいるのだった。
「生まれて、生きていってほしいわね。こんなことで、死んでいく命があってはいけないもの・・・。」
「・・・・そうだな・・・・。」
その様子を、真琴の意識はやや高いところから見降ろしていた。
『あれが・・・翔さんの両親・・・・。でも・・・あれは一体・・・・。』
時は移り、今から15年前。再び、あの人工子宮の前に、稔の姿があったが、その表情はいいものではなかった。真琴はその隣まで移動し、その視線の先をたどる。
『っ・・・・!!?』
そこには一つの人工子宮を除いて、おぞましい肉の塊しかなかった。
「結局・・・生き残ったのは・・また一人か・・・。しかも、美琴が提供した奴とはな。」
稔が見上げた先に、三歳くらいの小さな子どもが、溶媒液の中に浮かんでいた。
『まさか・・・まさかこれが・・・・僕?』
『そうだ。』
『!?』
辺りは一瞬にして暗闇に変わった。
そして、真琴の後ろに現れたのは、翔の父親の稔だった。
「稔さん・・・・。」
「おまえはとうとう、俺の封印を解いてしまった。知らなければいいものを、お前は知りたいと思うなど。俺には理解できない。だが、美琴の遺伝子を継いだのならあり得るかもしれないな。あいつもそう言うところがあった。」
「僕は・・・人じゃないんですね・・・・。人のようで、人じゃないんですね。僕は自然のおきてにそむき生まれた存在なんですね。」
「あの時、お前のほかに九体の実験体があった。だが、その九体は全て、失敗に終わった。最初の一年は、人の形をなしていたが、次第に崩れていった。死んだと言っても良い。」
「そんな・・・・・。」
「どうする?これからのことが知りたいか?お前があの中から出て、施設に預けられるまでのことを、お前が望めば、話してやろう。」
「・・・・・・おねがいします。もう、知らないのは嫌だから・・・・。」
「・・・・・・・わかった。」
再び周りは過去の映像へと変わっていく
新たに現れたそこは大谷家の屋敷だった。
真琴は人工的に作られたヒトであったのでした。
次回はなんで真琴が施設に行くことになったのかのおはなしです。