第二十七話 『黎明』幹部
話は少し翔たちのところをはさみます。
翔達は指定された場所で、『黎明』の幹部の一人と会っていた。いつ見てもむかつくその顔は、余裕すら見受けられる。
「なんのようなんだよ、こんなときに。」
翔のいらいらは頂点に達しようとしている。嫌いな団体の幹部が目の前にいるのもそうだが、真琴が倒れているのにこんなところに来なければならなくなったのもある。だが、若奈と春奈がつかまっているという以上、来なければならない。いま目の前にいる幹部はたしか、石川宗二とかいったはずだ。トップの姿はない。『黎明』はメンバーこそ10人ほどと少ないが、能力者殺しのエキスパートってやつだ。あらゆる手段を使って能力者を殺していく。『不知火』の能力者も殺されているらしい。翔達はそこらの能力者とはケタが違うため、危うくなったことはない。いま港のとある倉庫内にいるのは、翔達三人と『黎明』の幹部が一人にひらが3人だ。なめやがって。
「何かあったのか?」
「お前らには関係ないっしょ。で、関係ない女の子たちは帰してよー?」
「お前らに用が終わって直無事だったらな。」
「は?俺らに何か用?」
「用・・・か。お前ら最近、『白姫』の事を嗅ぎまわり過ぎてないか?」
「別に、お前らより先に手に入れようとしてるだけだ。お前らにつかまって利用でもされたら、俺らはおしまいだからな。」
「よくわかってるじゃねーか。いい加減、わかれよ。もうこの時代に能力者なんかいらない。存在すらこの世界から排除される運命だ。」
「そんな運命聞いたことねーっての。」
「能力者といえど、弱所がないわけじゃない。昔最強だと言われていたとある能力者とその時代の『白姫』は俺らの先代に殺されたしな。」
「最強の能力者?」
「お前らが一番知ってんじゃねーの?とくにお前はな、翔。」
「気安く呼ぶな。」
「当時最強と呼ばれた能力者は複数の能力を併せ持ちながら、その全ての能力は群を抜いて強力だった。『破壊』、『拒絶』、『封印』。」
「『拒絶』と『封印』って・・・・まさか!!?」
「名は確か・・・・・。」
「大谷・・・大谷稔・・・・俺の父親か・・・・・。なるほど、それじゃ・・・母さんは『白姫』だったわけね・・・・。」
「そうそう、その通りだ。そいつらは今のボスが殺したと聞いている。つまり、もう能力者に勝ち目はないのさ。」
「はっ・・・勝ち目がない・・・か。誰にいってんだ、それ。」
ぎりっと奥歯に力がこもる。体中から力がわきあがり、開かれた目は青く輝きを放つ。
「その最強ってのは昔の話だろ?それに、あの父親が負けたからって俺が死ぬとでも?はっ!ばっからし、俺があの父親と同じな訳があるか。俺はずっとあの父親を越えようと思ってた。『破壊』の力しか受け継がなかった俺は、それだけを鍛えた。今では俺は父親を超えたと思ってる。それに、お前らのボスが俺の父親に勝るとはみじんもおもわない。」
「なに?」
「あの時、父親は母親をかばうように死んでいた。母親が『白姫』なら戦うすべなんかなかったはずだ。つまりお前らのボスはそこを利用したんだろ?母親をかばう父親ごと、お前らのボスは殺したんだ。うすぎたねー手使いやがって、殺すぞ。」
どっと、言う音が聞こえたのは空耳ではない。隣にいた護や充でさえ思わずここからいなくなりたいとも思ったほどだ。久々に翔が本気を出した。いや、怒りのあまりに力を制御することを忘れているのだ。翔からあふれ出る気が、あたりの空気を震わせる。次期『不知火』当主候補である翔は、護や充よりも強い力を持っている。もし完全に翔がキレて本気を出していたら、護達も無事では済まない。
「翔・・・わかってるよね?」
「・・・・・・あぁ・・・・・・殺しはしないさ。」
「そうじゃなくて、あんまり怒んないでってこと。」
「ああ・・・・三割ほどで抑える。」
そういいながら最終的に止めに入らなきゃいけなくなりそうだと、護と充は思った。
「お前ら、先にあの二人助けてれば?」
「はいはい、そうしますよー。充いこ。」
「そうだね。」
マジギレ寸前の翔のところから、護達は若奈達を探しに走った。それと同時に翔は眼前の敵に向かって走った。『黎明』の奴らもまた翔の方に向かってくるが、宗二だけは向かっては来ず、高みの見物だ翔は宗二めがけて突っ走った。数分後、そこに立っていたのは翔と宗二だけだった。あとの平団員は地に伏している。翔はというといまだ余裕の笑みを浮かべている。こんなところ、絶対に真琴には見せらんないと思いながら、自嘲じみた笑みをこぼしていたのだ。
「ちっ・・・無駄な力使わせやがって・・・ここへ呼び出したのは俺の力を知るためか。なめやがって。」
「翔―終わったー?」
護と充が救出から戻ってきた。
「二人は?」
「ん、無事。あらら、こりゃまた派手にやって、刑事さんに怒られるぞー。」
「正当防衛だからいいんだよ。・・・・帰るぞ。」
「あれ、まだ一人残ってんじゃん。」
「ばーか。立体映像だよ。はなっからいなかったのさあの野郎は。なめてくれてるよ全く。知りたいことだけ知って後はサヨナラってやつだよ。」
「なるほど。そんじゃ、まぁ帰りますかー。」
立体映像を映し出している機械をひと蹴りし、翔達は車で春奈達を送った。そして、誰もいない家へと帰った。
『黎明』本部。
「はぁ・・・・やっぱ疲れるわ。あいつらの相手してると・・・。」
砂嵐が起こってるパソコンの電源を落とし、宗二は本部内にある自分の部屋で大きく伸びをした。と、そこに一人の少年があらわれる。
「あ、宗二おかえりー。って、出掛けてないけどね。」
「真斗、勝手に入ってくるなって言ってるだろうが。」
守谷真斗は『黎明』幹部でも最年少で、歳は18か9くらいだそうだ。相変わらずし
つこくついてくるのはうんざりなのだが。
「ボスが呼んでるよー。」
「ったく、俺は今忙しいってこと知ってるくせにあの野郎。わかった、すぐ行くから・・・・とりあえず足の上からどけぇ!!!」
隙あらば椅子に座ってる宗二の膝の上に乗ってくるわ、後ろからのしかかってくるわ・・・。宗二の悩みの種になっている。
「えー。いいじゃん、このままでもさ。」
「ボスのとこ行かなきゃなんねーんだろ?」
「じゃ、僕も行くー。」
「お前は自分の部屋にでもいやがれこの野郎!!」
「ぶー、ぶー。」
「はいはい、男がブー垂れても可愛くないですよ-。」
「可愛いって思ってるくせに、ツンデレもいい加減にしなよ?ま、そういう宗二も好きだけど。」
「だまれ、このドちび。」
「どってなんだよぅ。ね、『不知火』の次期当主ってやっぱ強いの?」
「あ?ああ・・・どうだかな、まぁ、俺の手下どもは全滅だな。」
「ぷぷ、そっかー。いーなぁ、僕も早く外でたいよ。」
「夜まで待てっつの。つか、お前は待機だろ。」
「けち。」
「俺にいうな、ボスに言えって。さ、もう降りろよ。俺はボスのとこに行くんだからな。」
するとすんなり真斗は降りた。宗二はやれやれと思いながら、ボスの部屋へと向かった。
後半は完全に真斗と宗二ののろけ・・・ではなくただの会話。あの二人もそんななかではない・・・・はず・・・。
どう考えても真斗は宗二が好きなようにしかかけてないですけど・・・
うーん・・・・