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Magical Encounter  作者: 朝比奈 黎兎
第三章 『過去』
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第二十四話   混乱

うーん・・・


ちょっと嘔吐表現ありなので注意してください。

 その日の夜。真琴は一人、リビングのソファーでくつろいでいた。真琴の傍らには、あの日から真琴を守ってくれているらしい式の黒い獣と白い獣がいる。真琴はその二匹をそのままコクとビャクと呼んでいた。本を片手で持ちながら、もう片方の手でコクの毛をいじる。するとガチャリとドアが開き、そこから入ってきたのは夕食をごちそうした香月だ。


「お、なんだよ、お前だけかよ。他の奴らは?」

「翔さんはお風呂、充さんは部屋にこもって捜査活動、護さんは夜の街にナンパ。ってか、まだいたんだ。」


やっぱなんか苦手だ。香月は二頭の式を見て、にったりと笑った。


「ふーん、そいつらがお前の騎士様ね。」

「騎士って、そんなじゃないし・・・・。何か用?」

「そんな怪訝な顔すんなって、虐めたくなんだろ?」

「・・・・・・・。」


「お前、何者だよ?」


「は?」

「お前ほんとに一般人な訳?うそだろそれ。」

「知らないよ・・・。能力者かどうかなんて・・・・。そんな人たちいるってしったのここに来て初めて知ったし、僕は一般人だよ・・・・それ以外の何物でもない。」

「へぇ・・・・ちっさい頃の記憶がないと不便なもんだな。」

「!?どうして・・・それを・・・・。」

「俺は知ってるぜ?お前の出生とかいろいろ。知りたいか?」

「・・・・・・いい、自分で思い出す。」

「はっ。イジはってんのかよ。」

「そんなんじゃない。けど・・・これは自分の問題だし、人にとやかく言われたくない。」

「いうね。ちっさいながらよくやるわ。じゃ、こう言われてもまだ強がれるか?」

「なにを・・・・・・?」


「俺とおまえは、おんなじだよ。」


「え・・・・・?なにそれ、冗談?」

「冗談なんかじゃねーよ?マジな話、どういう意味にとらえるかはお前の勝手だけどな。」

「意味って・・・そもそも意味わかんないよ。」

「それと、お前がここにいたら、翔達死ぬな。」

「なんで・・・・なんでそんなことになるの!?なにがいいたいの!?いい加減にしてよ、さっきから

言いたい放題。訳分からない事ばかりいって、そんなに僕混乱させて楽しい?」

「別に楽しいからって言ってるわけじゃねーし。でも、嘘じゃない。あの人が、お前のことを知ってたのは何故だと思う?あの爺がそれほどまでに一般人であるというお前にこだわる理由は?お前は何故あのとき記憶を覗かれずに済んだ?」

「そ・・・・・れは・・・・・。」


 わからない。その事は自分も考えてた。でも、結局なにもわからないままだった。思い出そうとしても、考えようとしても、何故か頭が痛くなる。思い出してはいけないとでもいっているように、頭に激痛が走る。でも、思い出したいのは事実。痛みをこらえながら必死に考えた。でも、思い出せない。自分のことなのに、なにもわからない。自分がだれなのか、不安になる。『ナカザワマコト』この名前はだれがつけた?僕はどこで生まれた?両親はどこにいる?何故僕は施設に預けられた?何故繁春さんは僕の記憶を見れなかった?僕・・・ぼく・・・・ボク・・・・。ボクハイッタイダレナンダ・・・・・。


「うっ・・・・いた・・・・い・・・・僕・・・は・・・僕って・・・・。」

「考えろよ。お前の記憶はなにも消え失せたわけじゃねーんだ。お前の中にあるんだ。なら考えろ。そして思い出せよ。封じられた記憶を・・・・。」

「僕は・・・・僕・・・・わか・・・ない・・・。おも・・・・せ・・・・い・・・・。だ・・・れ・・・・?ぼく・・・・て・・・だ・・・・・なの・・・?」


ぐらぐらする頭。痛む頭と心。定まらないしてんの先に、薄気味悪く笑う男。その男と、誰かの面影が重なる。遠いあの日に見た――――――――あの人を・・・・。


「っ・・・・ぐはっ・・・・あ・・・・・。」


こみ上げてくる吐き気に、逆らえず。真琴はすっぱいものを吐きだした。気持ち悪い。だめだ。だめなんだ・・・・。僕は思い出しちゃだめなんだ。思い出したら、もう・・・だめになる・・・・。だから僕の記憶は封じられた。


「っはぁ・・・ごぷ・・・・っ・・・くぅ・・・。」


苦しくて、真琴はソファーから転げ落ちた。ビャクが真琴に鼻をすりよせて心配している。コクは、冷静に真琴を見下ろす香月に牙を剥けて威嚇している。だか、香月は気にせずその場に立っている。以前笑みを浮かべたまま。


「なにも考えんな。思い出すことだけに集中しろよ。思い出せれば、そんな苦しみから簡単に逃れられる。思い出したいだろ?知りたいだろ?もし、結論が出たら――――――――――――。」

「や・・・・だ・・・め・・・おも・・・したら・・・だ・・・・ぇ・・・・・僕・・・は・・・おもい・・・・したら・・・だめ・・・・だ・・・ら・・・・。」


そこで真琴の意識は途切れた。自分の嘔吐したものの上に顔が倒れ、荒い息だけが、その場に聞こえるだけだった。ビャクが真琴の頬を舐めている。


「ちっ・・・まだ精神はおこちゃまか。これじゃ、わかるものもわかんねーか。それに・・・俺の能力は効くってどういう事だよ。」


香月は複数の能力を持っている。いま使っていたのはその内の一つ、『服従』だった。真琴を自分に従わせ、いのままにするもの・・・。その通りに、真琴はなされるがまま記憶を思い出そうとしてしまっていた。自分の頭では拒否していたのにもかかわらず。つまり、香月の考えは外れた――――という事になるのだ。


「こいつが、『白姫』ってわけじゃないみたいだな。『抑制』の能力が使える『白姫』なら、『服従』が聞くはずがない。」


なおも威嚇し続けているコクを一瞥し、香月はその家を出ていった。香月の姿が見えなくなったところで、コクもビャク同様、真琴の方に寄り添った。


 風呂から出た翔は、リビングの電気がまだついていることに驚いた。充はまだ部屋にこもってるだろうし、護は夜遊びに出かけた。ということはリビングにいるのは真琴、ということになる。いつもなら今頃は寝ている時間ではないだろうか。そう思い、翔はリビングのドアを開けた。

「真琴・・・まだ起きて・・・・・!!真琴!!!」


すぐに目に入った真琴は、ソファーとローテーブルの間に倒れていた。傍には真琴の式である二匹がいる。翔はすぐに駆け寄って真琴を抱き起こす。二匹は心配そうに翔のわきに来た。ぐったりとした真琴は、苦しそうに荒い息をしていた。顔や、服は真琴の嘔吐物で汚れ、床にもそれが垂れている。真琴の額に手をやると、やや熱っぽい。


「何があったんだいったい・・・・。」


翔はとりあえず、真琴を真琴の部屋に運び、充にこの事を伝えた。タオルを濡らしてきて、真琴の顔をぬぐい、汚れた服は着替えさせた。充が護に連絡して、すぐに帰ると言っていた。その間にも、真琴の熱は上がり続けた。とりあえず覚まそうと、アイスノンと、冷えピタを真琴にあてがった。二匹の式は真琴のベットのわきに静かに座っている。


「ただの・・・風邪かな・・・。」

「わかんね。要一と・・・優にも連絡してくれ。」

「わかった。」


いったい何があったのか、知っていて話すことができるのは、すでにこの家から立ち去っていた。


香月マジこわいんですけど・・・・


真琴の過去には何があったんでしょうか!!?

じょじょに解ってきます。

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