第十八話 明かされる真実
うーん・・・とりあえずどうしましょうか・・・
あと結構長くなってしまいました。
翔はそのままベットに腰かけた。
「今まで黙ってたのは謝る。けどそれは真琴には関わりを持ってほしくなかったからなんだ。さっき真琴を襲ったのは護の父親の繁春さん。繁春さんみたいな能力者が、俺の家系はよく生まれるらしい。俺も、護も、充も皆能力者だ。俺は『破壊』って力で、これは文字通りの能力だな。護は『催眠』って能力と、俺と同じ『破壊』の二つの能力を持ってて、充は『接続』と『破壊』の能力を持ってるんだ。俺の両親も能力者だったらしい。それで、能力者達は『不知火』っていう集団に所属してるんだ。当主は今は俺の爺さんがやってる。」
真琴はゆっくりと身体を起こした。まだふらつきながらのそれは、危うさを残している。眼鏡をはずしている今、よく見えていないその瞳を凝らすように翔を覗き見ている。
「おじいさんが?」
「そう。俺の父親が早くに他界したから、引退するに出来なかったってのもあるけど、たぶんあの人はやめる気なんかなかったんだろう。でも、そろそろ歳みたいで俺に後を継げって言って来てんだ。まぁ、俺は継ぐ気なんかないし、どっちかって言うと俺は『不知火』をつぶしたいんだ。」
「え・・・・?」
「やり方がな、気にくわないんだ。それにもう縛られるのはごめんだからな。俺たち三人は、生まれてから自由に外に出してすらもらえなかった。常に監視の目が光ってたしな。今も時々盗聴とか、隠しカメラとかしかけられたりしたけど、最近はおとなしくなったんだ。たぶん、探すのに力を注いでるからだと思うけど・・・。」
「探すって・・・。」
「今『不知火』ともういっこ『黎明』って組織があんだけど・・・。ふくざつだからまぁ、俺達と敵対してるって思ってくれればいいよ。それで、その『不知火』、『黎明』そして俺達三人は、ある人を探してるんだ。」
「人・・・・ですか・・・?」
「『白姫』って言うんだ。でも、その名称以外、その人物の素性はなにもわからない。充でも探し出すのは困難。『不知火』は莫大な財力と力を使って探してるみたいだけど・・・結局見つかってはいない。でも探し出さなきゃいけないんだ、特に『黎明』の奴らよりも先に。」
「もし、『黎明』の人たちが先に見つけ出したら、どうなるんですか?」
しばしの間があった。
「・・・・・・・俺達は、殺される。」
「え・・・・・?」
「『白姫』は能力者の力を封じる『抑制』という力を持つ数少ない人物らしい。現時点においても『抑制』の力を持っているのは一人しかいない。でも、『白姫』はそいつよりも強い『抑制』の力を持つと言われてるから、もし『白姫』が『黎明』の奴らにつかまったら・・・俺らは力を使えない。」
そこで真琴は思い出した。あの時の繁春の言葉を。
『君は我々能力者の前では、無力に等しい・・・・。』
「力が使えないと、能力者には勝てないから・・・・・。」
「ああ、だから何があっても探しださなきゃいけない。真琴に仕事だと言って出かけてたのはそう言う事なんだ。」
「そうで・・・すか・・・・。・・・・じゃあ・・・あれも・・・能力者なのかな・・・・。」
「なにがだ?」
「僕には記憶がないんです。生まれてから、隆兄ちゃんのいたあの施設に行くまでの十年間の記憶が・・・。つい最近までそんなこと気にしてこなかったんですけど・・・ついこの間、夢に出てきたんです。黒い獣と白い獣が・・・。その黒い獣が言ったんです、お前の記憶は俺が封じたって・・・。だからその人も能力者かなって思って・・・。」
「黒い獣・・・・?」
「大きな犬みたいな・・・狼みたいなそんな感じで、黒い方は真っ赤な目をしてました。白い方は金色の目をしてました。そこで改めてそう言えば、記憶がないなって思ったんですよ。誰も知らない僕の記憶を、その獣は知ってるみたいですけど・・・。」
そこで翔は、この前の充の言葉を思い出した。真琴に出たエラーは誰かに封じられていたからだったのだろう。それにしても、いったいなんなんだろう。その獣は・・・。
「そういえば・・・・あの人は・・・・?」
「あの人・・・ああ、繁春さんか?」
こくりと真琴はうなずいた。
「あの人ならどっかに逃げたな。瞬間移動できる能力者もいるからな。そんなに気になるのか?」
「そう言うわけじゃないです・・・さっきのは、今思い出しても怖いので・・・。なんで、あの人は僕のことを知ってたんですかね・・・。翔さんは、教えたりしていないんでしょう?」
「ああ・・・全くな。真琴のことを知ってるのは、俺達だけだと思ってた。だけど、あいつらの事だから、どっかから集めてきたんだろう。」
そう言った翔は、ゆっくりと真琴の背中に腕をまわしてしっかりと抱きしめた。
「か・・・翔さ・・・?」
「もう、お前をこんな目にあわせない・・・今度は俺が守るから・・・・。」
「え・・・・・・?」
首をかしげるその顔は、翔がなにを言ってるのかがわからないようだ。あどけなく、幼げに首かしげている彼を、翔は可愛いと思っていた。最初はほんとに、そんな気はなかった。だけども、気づいてしまったのだ。自分が、彼のことを・・・・。
「真琴のことが・・・好きだから・・・・・。」
「え・・・・・・?」
大きな瞳を、さらに大きくひらき驚いた真琴。それはそうだと思う。すぐに理解出来たらそれはそれで翔の方が驚く。だから、こういう反応は普通の反応なんだろう。
「俺が真琴の事・・・この世の誰よりも大切だって、思ったから。」
「え・・・あの・・・・僕は・・・その・・・・。」
「返事なんかいいさ。まだ・・・・な。」
「でもっ・・・・。」
「今日はもう、余分なこと考えないで寝ると良いからさ。いろいろあって、疲れてるだろ?」
翔はそう言うと、真琴をベットに横たわらせて、布団をかけた。まだ聞きたいことがあった真琴だったが、睡魔には勝てずそのまま眠りについてしまった。翔はその寝顔を見て、穏やかに笑った。だが、その表情は一瞬にして凛とした物に変わった。本家の人間には、確かに真琴の事は知らせてもいないし、そうする必要などないと思った。だから、ほんとに今回の事は想定外のことだった。とうとう、真琴にまで危機が迫った。今回は結果的になにもなかったのだが、次回があるのだとしたらもう今回のような幸運には恵まれないかもしれない。だからこそ、翔は自分の思いを伝えた。そして、守ると伝えた。この存在を失いたくない。そう考えて、翔は思わず苦笑を洩らし、頭をかきむしった。
「まっさか・・・俺にもそんな存在ができるなんてな・・・・。」
翔は、家を飛び出した時から胸に決めていたことがある。どんなに自分が傷つこうと、自分が守ると決めた人は守ろうと。今までは護と充の二人だけだった。それが、今では真琴もそれに含まれるようになった。でも、真琴は他の二人よりもさらに失いたくないと思えている。これを恋と呼ばずなんというのか・・・・。それこそ護に茶化されるだろう。
ホテルから去っていったように思えた繁春だったが、実はそのホテルの屋上にいた。瞬間移動能力の男は、先ほど立ち去らせた。屋上の手すりに腕を置き煙草に火をつけた。吐きだした煙が、夜の漆黒の空に吸い込まれた。まさか、任務に失敗するとは思っていなかった。相手は一般人、そう告げられていてこんなことになるとは誰が想像できるだろう。おそらく全員がそうは思わないだろう。なのに、現に繁春はいま記憶の断片すら覗けなかったのである。これは一体どういう事なのか、知ってるやつがいたら聞きだしたいものだ。なんにしろ、彼――中澤真琴がただの一般人ではない事は判明した。それに、彼ら――特に翔にとっては大事な存在であることも、あそこに駆け付けた時点でわかった。あんな必死そうな顔を久しぶりに見た。だからこそ、自分はあの子の記憶が気になって仕方がない。
「だが・・・そう簡単にはいくまい・・・。こんなことがあった後では、あの子らが隙を見せるとは考えにくい。だが、『白姫』を探しだすには、より多くの情報がいる。真琴君の記憶も少なからず必要だと、あのお方は御考えだ・・・・。」
あのお方の考えている計画は、繁春達『不知火』のメンバーでさえその一端しかしらないのである。それでも、彼らはそのお方に誠心誠意尽くし、働くのだ。たとえどんな犠牲が出ても、決してそれを止めることはない。犠牲を乗り越え、踏み倒し、彼らは目標のために進んでいく。かつての栄光を取り戻さんと・・・・・。
「能力者が影で生きる世界は、もうすぐ終わりを迎える。」
足で踏みつぶした吸殻が、じりっと火花をはじかせた。繁春は夜景をふっと見つめた後、顔をそらし、ホテルの中へと消えて、暗躍飛び交う街の中に消えていった。再び会うときは、いつになることか・・・・・。
長い!!
ほんとにすみません!!ですがどうしても切れなかったんです。
説明も含めてますので長すぎです。
そして、とうとう告白されましたよ真琴君。どうするんだろう・・・。