第十七話 奪還
もう少しサブタイを考えられないのかと思うこのごろです。
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振り返り目を見開いて驚く護の様子を見た繁春は、愉快そうに口を釣り上げて笑った。
「そっちが本陣だ。お前はまんまとおびき出されたわけだ。この部屋にな。これでもうお前は、逃げることもできない。私ははなっから二人とも逃がすつもりはない。この子は実に面白い子だね。私を自力ではねのけるとは、この子は本当に一般人か?」
「琴ちゃんが・・・お前を跳ね除ける?そんなこと・・・できるわけが・・・・。」
「だがげんに、私は跳ね除けられ、この子の記憶を覗く事はできなかったんだ。いったいどういう事なのか、本家に連れ帰ってくわしく調べたいものだ。」
「この変人!!誰がそんなことさせるか!!」
「その通りだな。」
どかっばきぃというなんかとてつもなく物騒な音が背後から聞こえた。護が後ろを振り向くと、本陣だそうな男達は全員床に伏せていた。そしてその傍らにはいるはずのない翔と充がいた。
「なんで二人がここに?」
「お前ね、嘘つく時とか何か隠してる時のくせって言うのがあるんだよ。それ、バレバレ。」
「僕の能力なめないでね?護の行き先くらい、調べようと思えば簡単なんだから。」
そう言い放った二人は護の傍らにやってきた。
「お久しぶりですね。またずいぶん小汚いことしてくれたじゃないですか。」
翔が怒りを押し殺した笑顔で繁春に言った。
「君達がそろっているところなんて何年振りだろうね。相変わらず仲は良さそうで。しかし、君らが総出で探すほどこの子は大事かな?」
「大事とかそんなんは関係ない。ただ、お前らの計画に巻き込まれるのが許せないんだ。どうするんですか?このままで俺達と敵対します?」
「いや、それはやめておこう。君が出て来ちゃあ勝ち目はないよ。それに、こうなったらもうどうしようもないからね、私はこれで失礼するよ。」
「このまま帰らせると思ってんの?」
すると、繁春の傍らに突然男が現れた。そしてその男の肩に繁春が触れた。そして、あっという間に二人の姿は消えてしまった。支えを失った真琴の身体が、どさりとベットの上に倒れこんだ。すぐに三人が真琴に駆け寄った。真琴はすーすーと規則正しい寝息を立てていた。それを見て、三人は少なからず安堵した。だが、護だけは未だにうかない顔をしていた。
「ごめん・・・二人とも。あのバカ親父のせいで・・・。」
「別に・・・・。」
「俺らはなんも思ってないさ。真琴が無事だったんだ、それでも良かっただろ?」
「でも、一番琴ちゃんにはつらい目にあわせたのに変わりないじゃん?」
「だったら、真琴に謝ればいいだろ?それにお前は真琴になにもしてない。害になることはな?だからお前が謝る必要ないね。」
「かなぁ・・・・。」
「護はいったん、頭冷やしなよ。翔はここに残ったら?真琴起きないんじゃ今動かさない方が良いんでしょ?」
充が護に聞いた。こう言うのは護の専門なのだ。
「うん・・・結構精神に来てるだろうから、今はそっとしてあげてた方がいいかも。」
「いいよ、どうせこの部屋はあの人の名義で朝まで借りてるみたいだし、俺がここで見てるから、お前らは帰って休んでくれよ。」
「そうする。」
「あ、充、車のカギ!」
翔が投げた車のカギを、充は器用に片手でキャッチした。
「ありがと。じゃ、また朝になったら迎えにくるよ。」
「琴ちゃん起きないからって変なことしちゃだめだからねー。」
「お前は一言余分なんだよ。」
二人が去った後、翔はベットに腰かけて真琴の顔を覗き込んだ。閉じられた瞳から流れ出た涙の無数の道筋がきりりっと翔の胸を締め付けた。そっと頭に手を載せて優しく撫でる。さらさらとした茶色い髪の毛が、手の動きに合わせて揺れた。
「いつまで嘘寝してる気だよ?」
「・・・・そう言うのは気づかないふりするんですよ・・・。」
「ははは、悪い悪い。気分はどう?」
「まだちょっとくらくらしますけど、大丈夫みたいです。心配かけてすみません。」
「いいのさ、真琴は巻き込まれただけなんだし。」
「・・・・・翔さん、もう良いですよ・・・もういいですよね?だから・・・全部教えてください、能力者の事、翔さん達の事、翔さん達の家の事、あの人の事・・・・。全部、もう・・・・知らないのは・・・わかんないのは・・・いやなんです・・・。お願いします・・・翔さん。」
きゅっと、弱弱しく翔の服の裾をつかんできた真琴の眼は、いつになく真剣なまなざしだった。翔は目をそらさずに、ゆっくりと話しはじめたのだった。
いよいよ真琴は、翔たちのことを知ることになるんですよ・・・
白姫編も折り返しかなぁと・・・