第十四話 記憶
真琴ピーンチに変わりないですね。
もう少し真琴ピーンチは続きます。
「どういう事だよ!!いくらなんでも遅いだろ!!」
翔は家の中で叫んだ。現在午後11時である。
「晩御飯が・・・・・。」
「充、そこじゃねーだろうが!!」
「んー、夜遊びじゃないだろうしねぇ・・・・。」
「お前じゃないから、それは無いな。ちょっと俺探してくるわ。」
「俺も行くー。」
「僕はパソコンで探してみるよ。」
しかし、彼らがどこを探しても真琴を見つけることはできなかった。いったん捜索をやめて、充の結果を聞きに来た翔だったが、充の方も空振りばかりだそうだ。
「何にも引っかからないってのがおかしいんだよね。もしかして・・・能力者関係かも・・・。」
「不吉なこと言うなよ。真琴は一般人だぞ。」
「だけど現に、何の情報もないんだから・・・。誰かが妨害してるようにしか思えないんだよね。引き続き捜索してるけどさ。」
「ただいまー、琴ちゃん見つかったー?・・・って、んなわけなさそうだね。」
「そう言うお前はどうなんだ?」
「俺?俺はこの本しか見つけらんなかったよ。」
そう言って護が取り出したのは、夕刻、連れ去られたときにおとしたあの本だった。
「おまえ、落し物は交番だろうが。」
「・・・・護、ちょっと貸して。」
「ん、はい。」
充はその本を受け取ると、本を開いたり、拍子を見たりしていた。すると、裏表紙を開いて目を止めた。そしてパソコンを手繰り寄せ、何かを打ちこんで、捜索を始めた。
「どうかしたのか?」
「これさ、図書館の本なんだよね。しかもこの町のさ。だから、これなら誰が借りたのかわかるからさ。図書館の記録覗けば。」
「あーなるほどな。」
すると、すぐに図書館の今日の貸し出し記録の表が一覧で出てきた。そしてその中から、その本の題名を探すと、一人の名前が出てきた。
「護・・・たまには役に立つじゃん。」
「充―それはどういう意味?」
「これ、真琴が今日借りた本だよ。しかも、夕方にね。」
「つまり・・・・。」
「やっぱり真琴はだれかに連れ去られたんだ。」
「「!!?」」
ようやく彼らは、真琴の身に起きたことを理解するのだった。
気がつくと、そこはどこかのホテルの一室だった。ベットの上で真琴は思わずあたりを見回した。どうやら真琴の他には誰もいないようで、すぐに真琴はドアへと向かった。だが、何故かドアが開かない。外から別のかぎで閉められているようだった。なんどもかしゃかしゃやってもびくともしなかった。
「ど・・・どうなってるの・・・?」
真琴はとりあえず、連絡を取ろうと思った。だが、持っていたはずの携帯電話はなかった。
「あれ・・・・もしかして・・・取り上げられた?」
もうただ立ち尽くすしかない。これからどうすればいいんだろうという気持ちがこみ上げてきた。ふらふらと、大きな窓の傍に近付いた。そこからの景色は見覚えがある街並みだ。どうやら、家がある街と同じ町に在るホテルのようだった。窓の傍にへたりとしゃがみ込んだ。なんでこんなところにいるのか、全く分からない。大体、あの人は一体何なのかもわからない。覚えているのは、特徴的な金色の目だ。あの目が嫌に頭から離れない。それに、あの人どこかで見覚えがある気さえする。でも、どこかなのかがわからない。
「気がついたようですね。さっき見張りのものが中から音がすると言われましてね、一階の喫茶店からきたんですけど・・・・。」
そういって、先ほど閉ざされていたドアから、あの金色の目の男が入ってきた。だが今は、何故かその目は黒かった。キッ!と、その男を睨みつける。
「ふ・・・ひどく嫌われてしまったようだね。」
「当たり前ですよ。なんなんですか?僕をこんなところに・・・拉致して・・・。帰らせて下さいよ。」
「無論、用さえ終われば、すぐにでも帰らせてあげますよ。」
「用って・・・なんですか?貴方誰ですか?なんで僕に・・・こんなこと・・・・。」
「私に関することは今はまだあなたには言えませんね。翔君達は貴方にはまだ、なにも言っていないようですので。」
「翔さん達を・・・・知ってる・・・・。」
「ええ、貴方よりも知ってますよ。あの恩知らず達の事は。」
「っ・・・翔さん達は・・・恩知らずなんかじゃない・・・・。」
「ほう?最近知り合って、なにも知らされてもいない君が、そんなわかり切ったような口を叩くんですか?」
「たしかに、僕はなにも知らないけど・・・でも、一緒にいればわかることだってあります。」
「面白いたわごとをいうんですね。ですが、あの三人は無知無能ですよ。自分達に君がかかわって、なにも起こらず平和に過ごせると高をくくっているのかは知りませんが、いくらなんでも警戒心なさすぎでしょう。こうもあっさり、君をここに連れ去ることができたんですから。」
徐々に徐々に、その男は真琴に近付いて来ていた。真琴はしゃがんだまま後ろへと下がる。
「君は確かに一般人だ。それは既に調べはついている。それなのに、あのお方は君を調べろと言ってきた。その理由は定かではないが、私に頼んだという事は君の記憶に何か情報があることは確かだろう。」
「記憶?」
「そうか・・・君はなにも知らされていないんだったね。いいだろう。ここで少しだが説明しよう。私は普通の人間ではないんだ。とある能力を使う能力者でね。そして、君が共に暮らしている、翔君達も私とは違う能力を使う。彼らが仕事と言っているのは、とある組織をつぶすことで、その一つが、私の所属する『不知火』。そしてもう一つは『黎明』と呼ばれる、非合法集団だ。もともと彼らは『不知火』だった。だが、あるとき彼らはそこを抜け出し、独自の立場で動く第三集団になった。とまあ、話せるのはここまでだ。あとは帰って翔君達に聞くと言い。まぁ、帰れたらの話だけども。」
早口で説明され、真琴の頭には一部しか記憶されなかった。だが、とんでもない内容だという事はわかった。そして、ここにいたら自分も危ないという事も分かった。
「僕の記憶・・・どうする気なんですか?」
「安心したまえ。消したりはしない。ただ、少しのぞかせてもらうだけだ。今まで君が過ごしてきた過去をね。」
「!?・・・そんなこと・・・絶対にやだ・・・・。」
「君がどんなにいやがろうと、それはただの悪あがきにしか過ぎない。君は我々能力者の前では、無力に等しいのだから。」
ぞくり・・・と背筋にいやな寒気が走った。怖い。そう思ったのだ。次第に真琴の方に伸びてくる男の手。それを真琴はすりぬけて、ドアへと走る。
「無駄だと言っているんだよ。」
真琴の視界が、ドアから天井へと移った。ベットに倒れこんだ真琴の上に、その男が乗りあがってきた。
「え・・・・・・。」
そして、真琴は再び、あの奇怪な瞳の色。あの金色の瞳が、自分の真上にあった。そして、それと同時にとてつもない違和感を、身体の中から感じた。内側から引き出されるような、何かが内側をはいずりまわるような、そんな感じがした。
「っぅ・・・あ・・・・ぅあ・・・・。」
抵抗しようと、両腕を伸ばすが、簡単にシーツの上に縫いこまれる。目をそらしたいのに、何故か体の自由が利かない。全く力が入らなくなった。それどころか、思考さえ止まってしまう。これが、この人の能力なんだろうか・・・・。思考が止まりかけた真琴の脳裏に、今まで出会ってきた人の顔、今まで起こった出来事、過ごした日々がよみがえってきた。だが、ここで能力者の男にとって予想外のことが起きる。真琴の意識を手に入れていた男だったのだが、突如はじかれてしまったのだ。しかもその拍子に、真琴は意識を失ってしまった。
「なに・・・・・・これはまさか・・・。」
男はよろよろと真琴から離れた。真琴の額に浮かび上がった紋章を見て、男話思わず苦笑した。
「お前らしい。なるほど、無知無能だったわけではないか。こういうことを見越して、この子に術をかけるとは、さすがとでも言っておこうか、護。」
すぅっと、真琴の額に浮かびあがっていた紋章は消えていた。だが、今すぐに再開するのは無理そうである。何より、真琴の意識が戻らない限りは、探り出すことはできないからだった。
「どれだけ邪魔をすれば気が済むのだろうな。」
そういって、男はその部屋を出た。見張りの男に、真琴が起きたらまた知らせてくれと伝えた。彼はその足で同じ階にある部屋に入った。彼名義で借りた部屋だ。そしてその部屋に置いてあった真琴の所持品の中から携帯を持つと、アドレス帳を開きとある人物に電話した。
あれ・・・今回は長くなっちゃいました。
統一性がないこの小説。というか私はそういうの苦手なのです。
お読みくださりありがとうございます。
あと、遅くなりましたが、お気に入り登録感謝です。