第十三話 『不知火』動く時
翔たちに出番はなく、真琴と第三者の話。
また真琴ピンチ。ほんとに幸薄いね、真琴。
某所にある、『不知火』本家。その建物は辺りの建物よりも高く、高層ビル丸々一棟本家なのだった。その最上部にある大広間は昼間だというのに薄暗い。外の洋式な感じとは全く違い、中は全面和風なのだ。ビルに似つかわしい襖をあけ、その広い空間に足を踏み入れる一人の男。内装はもはや、ビルの中にいることを忘れさせるような作りで、横は全て襖のように見える。が、これは実は壁紙である。床は全て畳張りで、一か所だけ、真っ赤な絨毯が、一直線に伸びている。ま正面の壁には『不知火』のエンブレムが刻まれた垂れ幕が下がっている。襖を閉めたその男はゆっくりと奥の方に進んでいく。その眼前には一人の男が悠然と、豪華なソファーに肩肘ついて横たわっていた。何とも偉そうな格好である。だが、そんな彼を特に気にもせず、入ってきた男は横たわっている男から2メートルほど離れたところに膝まづいた。
「ごようとは何でしょうか。」
「すこし、やってもらいたいことがある。」
「何なりとお申し付けください。」
それを聞き、えらそうな男はにっと、口を釣り上げた。
偉そうな男が、部下らしき男に何かを支持してから数時間後の街中。真琴は図書館に行った帰りだった。借りた本をわきに抱えて家へと向かっていた。元来真琴は読書好きなのだ。借りた本を早く読みたい衝動に駆られながら、真琴は自然と足早に歩いていた。
そこで彼は出会ってしまった。
おのれの運命を変革させてしまうであろう人物に。その人物は真琴の前から、ゆっくりと歩いてきた。初めはなんの気もかけなかったのだが、次第にその人物が気になり始めたのだ。何かはわからないが、なんとなくその人が不審に思えてきたのだ。何故かさっきから、真琴に視線を送ってきている。真琴はぐっと、胸の前で本を抱えるとだっと一気に走り、その男の傍らを駆け抜けた。
「それで逃げられると思いましたか?」
「え・・・・!?」
そこで、真琴はその男と目があってしまった。彼の怪しく光る金の目はいったい何なのか・・・。そんなことを思っていたら意識が遠のいてった。くらっと崩れた真琴をその男は抱えた。ばさりと、借りた本が地面に落ちる。
「あと少しで、帰れたんでしょうけど。少し用があるんですよ、中澤真琴君?」
そう言った彼の傍らに、一台の黒い車が止まった。彼はその中に、真琴と共に乗り込んだ。車はそのままどこかへと走り去った。翔達が真琴が帰ってこないと慌てだすのはそれから数時間後になる。
今回短いですね(これでも千文字はある)。私の小説の長さとしては短いということです。
誘拐はれっきとした犯罪です。
もちろん真琴を連れ去った人も能力者です。