第八話 刑事さん来たよ
またキャラが増えました。こんど登場キャラ紹介その2を載せようと思います。
「こんにちは神門警察署のものですが。」
ただいま玄関で、警察の方と対面中。え・・・なんで?
「はぁ・・・・。えっと・・・どのようなご用件で?」
「そんな怪しまなくても、今日は世間話をしに来ただけですから。馬鹿三人組はいるかな?」
そういって、にこやかに笑いかけてくるその警察官は、きっちりとスーツを着こなし、真面目そうな感じだ。何より仕事優先、みたいな感じ。
「さ・・・三人ですか?えと・・・ちょっと待ってください・・・。」
「待つ必要なんかないよ。ここにいるから。で、何か用?」
そういって、真琴の横に現れたのはこの家の住人の一人、充だった。
「まぁ、立ち話もなんだし、中へどうぞ。はい、お邪魔します。」
と、いきなり独り芝居をしたかと思うと、不機嫌そうな充を尻目にその刑事は入っていった。その後に部下らしい若い青年が続く。さらに不機嫌になった充は、もう知らないと言い残し、玄関から出てってしまった。あとに残された真琴は急いでリビングに向かった。
リビングに入ると、一つのソファーに先輩刑事の方が座り、後輩刑事はその傍らに立っている。そして向かいのソファーには翔と護が座っていた。何かカオスだ。
「だからさぁ、それって俺らのせいじゃないじゃん?もともとあの爺が悪いんだしさ。俺らはそれでも他に迷惑掛かんないように考慮してやってんだよ?ねぇ、翔。」
「ああ、それなのになんで俺らが文句言われなきゃなんないんだ?文句なら本家に言えばいいだろうが。」
なんか、刑事さん相手に二人とも上から物いってる気がするのは気のせいではないはずだ。真琴はいそいそとキッチンに行き、人数分のお茶を入れてきた。それをローテーブルに出した時、後輩刑事が真琴を見て驚いていた。
「ま・・・・こと・・・・?」
「え・・・・?」
その後輩刑事の顔を見て、真琴は昔のことを思い出した。そうだこの人は確か。
「あ・・・・・た・・・隆兄ちゃん!?」
「すいません、池谷さん、俺ちょっとこっちで話してきていいですか?」
「あー、いいよ。こっちはまだまだ話があるからね。」
という事で真琴達はダイニングテーブルに向かいあって座った。
「え・・・え・・・・?ほんとに隆兄ちゃんなの!?」
「そうだって、まぁ落ち着けよ。」
「う・・・うん。でも、びっくりしたよ、隆兄ちゃん刑事さんになってたんだね。」
隆兄ちゃんこと金谷隆。真琴が施設にまだいたころ、唯一仲良くしてくれていた3歳離れたお兄ちゃん的存在の人だ。真琴は隆に10歳の時に初めて会ったのだが、隆が18になって施設を出ていったとき以来の再会だった。
「三年ぶりだね。見違えちゃったよ、あの時は僕とそんなに背も変わんなかったのにさ。いま170センチくらいありそうだね。」
「176だぞ!!真琴は相変わらずちっちゃいな。」
「むぅ!!それ気にしてるんだぞぉ!!」
「ごめんごめんて。でも、なんで真琴がこの家にいるんだ?」
「え・・・・なんでって言われても・・・。訳あってね・・住まわせてもらってるんだ。ほら、僕も18になったから、施設にいられなくなってさ。」
「そっかー。真琴ももう18になったのかー・・・そんな風には見えないけど。」
「一言余分!!」
「ははは!!」
「隆兄ちゃんって、刑事さん目指してたっけ?」
「いや、最初は普通に職探ししてたんだけどさ、途中で刑事に憧れてさ。それで、必死に勉強して、今は新人刑事だな。」
「へぇー。えらいなぁ、隆兄ちゃんはさ。僕なんか、アルバイトばっかしてて、最近クビんなっちゃったんだ。今はここにお世話になってるだけだし、僕に独り暮らしはできないのかなって思えるんだよね・・・。」
「そうかもな!」
「酷い―――。そこはちょっと否定してくれてもいいとこだよ?」
「ははは、でもほんとのことじゃん?真琴はそれでもいいんじゃないか?ひとりより、皆と一緒にいる方が真琴にはあってるんだよ。」
「まぁ、たしかに、今楽しいんだ。ここの人たち優しいから。そうだ・・・なんで隆兄ちゃんたちここに来たの?」
「さぁな。それは池谷さん――あそこにいる先輩刑事なんだけどな、あの人がここに行くっていいだして、俺はただの付き添いみたいな感じだな。新米はどこ行ってもこんな感じだよ。」
「大変だね、隆兄ちゃん。でも、隆兄ちゃんも楽しそうに見えるよ。」
「まぁな、大変だけど、楽しいこともあったりするし、やりがいあるからな。おっと・・・わり、電話入った。」
「うん。」
隆が立ちあがり、少し離れたところで電話をとる。少し離した後、電話を切った。
「わり、仕事入っちゃった。また今度話そうな。先輩!事件ですけど!!」
「私はまだ終わってないから、金谷君、先に行ってくれたまえ。」
「お前帰んないの!?」
「まだ話は終わらないんです。」
「って、ことで、真琴またな!!」
「うん、頑張ってね。」
隆は慌ただしく、家から去っていった。一人残った真琴は、しばし三人の話に耳を傾けることにした。
「あんたしつこい!!しつこい男は嫌われるんだよ!!」
「それは今関係ありません。」
ごもっともな返答をする池谷。
「関係大有りだし!!俺達忙しいの!あんたにかまってる暇ないし、話聞きたいんだったら本家に行って。あっちの方が過激よ?」
「あちらも今話していますよ。それよりも、貴方がたの方が被害は大きいんですけど?」
「気のせいー。そんなの蜃気楼だよ。それか幻覚?とにかく現実のことではありません、すべてフィクションでーす。」
「そんなわけはありませんけど?なんなら、証拠でも出しますか?」
「あんな話聞いてて楽しいか?真琴。」
「ふえ?あれ、さっきまであそこにいませんでしたっけ?」
気がつくとさっきまで隆が座っていたところに、翔がいた。
「いたけど、あれに入ろうって気はさらさらないね。いつものことだから、気にすんな。」
「気にするなと言われても・・・・。普通刑事さんとか家に来ないですよ?」
「だよなー。ま、俺達は普通じゃないからな・・・・。」
「え・・・・・?」
「ん、なんでもないさ。あ、真琴お茶お代わり。」
「あ、はい今持ってきます。」
翔のカップを持ってキッチンに向かっていく真琴を、翔はダイニングテーブルから見つめていた。
「危ない危ない。危うくしゃべっちゃうとこだった。まだ真琴に話す気はないからな。俺の・・・俺達の家の事は。」
結局、池谷は1時間ほど、護と話をした。
「さて、言いたいことは言いましたから。そろそろ帰ります。真琴君、見送りしてくれるかい?」
「え・・・・あ・・・はい。」
池谷と共に、真琴は玄関に向かった。
「君はこの家の三人とは、血縁関係とかはないんですね?」
「はい、ちょっとしたことで知りあって、住まわせていただいてるだけですね。」
「そうですか・・・・。君からなら何か聞けるかなとも思ったんですけど、それは無理そうですね。」
「え・・・・・?」
「彼ら、不思議でしょう?」
「不思議ですか?」
「君は鈍感なんですね。ま、それも君の良さか・・・。」
「ど・・・鈍感・・・・・。」
「彼らがなぜ、親元を離れてここに生活しているのか。仕事と言って出かけて何をしているのか。なぜ我々刑事が訊ねてくるのか、知りたいとは思わないんですか?」
「それは・・・・・。」
確かに、真琴は今まで、彼らについて尋ねることはしてこなかった。人の事だから、そんなに聞きだすようなまねはしたくなかったし、真琴もあまり自分の人生は話せたものじゃないからだった。
「翔さん達には翔さん達の暮らしがあるんです。それを僕が踏み込んでいいものかどうか、それは全く別の話になってくると思うんです。だから僕は聞かないことにしてるんです。翔さん達が話してくれるなら、その時は聞きます。けど、それ以外で僕が自分から聞こうとは絶対にしません。それが・・・普通だと思います・・・・。」
「そうですね。その通りです。人は自分以外の人物の人生に、おもむろに踏み込んではいけないんです。しかし、踏み入れることで、出来ることが増えていくのもまた事実。」
「?」
玄関で靴をはいた池谷は、ごそごそとポケットを探り、携帯と一枚の名刺を取り出した。しばし、携帯を操作して何かを名刺の裏に描きこむと、それを真琴に差し出した。真琴はそれを受け取った。それは池谷の名刺のようだった。表に池谷俊輔とかかれており、所属している警察署と課、その下には携帯電話の番号とアドレスが書かれていた。
「それは私の連絡先です。困ったときなど気軽にかけてきてください。裏には金谷君の連絡先も書いてあります。知り合いのようでしたのでついでですが。」
「隆兄ちゃんは、昔仲良くしてくれたんですよ。あの、いいんですか?僕に連絡先を教えてしまって・・・・。」
「ええ、貴方は一般市民。私達は貴方がたを守るような職務についてますからね。金谷君には気軽にいつでも連絡してあげると喜ぶと思いますよ。」
「わかりました。僕のはあとでメールで送ります。」
「そうして下さい。では、私はこれで失礼します。金谷君のところに行かなくてはいけないので。あ、それあの三人には内緒にしてください。知られたら取り上げられますから。登録したらその名刺は破って捨ててくださって構いませんので。」
「は・・・はぁ・・・。」
「それではまた、お伺いするかもしれませんが、その時はどうぞよろしくお願いいたします。」
「はい。隆兄ちゃんにもよろしくお伝えして下さい。」
「ええ、わかりました。」
ぺこりと、池谷は会釈して、家から去っていった。真琴はもらった名刺をポケットの中にしまうとリビングに戻った。
「帰った?ね、帰ったあいつ。」
入って早々、護にそう迫られた。
「帰りましたよ?」
「よっしゃ―――このまま一生来なくていいし!!そういえば、琴ちゃんって、刑事さん関係だったの?」
「はい?」
「だって、あの後輩君と仲良かったじゃん?」
「ああ、隆兄ちゃんですか?隆兄ちゃんは施設にいたときに仲良くしてもらってただけですよ?今日まで刑事さんになってるなんて知らなかったですし、僕は警察とは無縁の人生送ってましたから。」
「だよねー。琴ちゃん虫も殺さないような顔してるもんねー。」
「そうですか?」
その日の夜。真琴は既に寝てしまっている、真夜中である。遅い風呂から上がった翔は、冷蔵庫から缶ビールを取り出した。リビングのソファーでは他の二人がすでに、飲み始めている。翔もそこに行き、どっかりと座る。ぷしゅっと缶を開けて一口飲んだ。
「これが、爺からの手紙ね。」
「そんなもん捨てろって言ってるのに・・・。どうせ催促状だろ?」
缶をローテーブルに置いて手紙の封を開けた。そして中身を読むと案の定催促状だった。
「ったく、だから俺は継がないっていってんの。」
「ぷっ、あっちも必死だからねぇ。今年でいくつだっけ?」
「74だったと思うよ・・・これ、捜査報告書。不備あったら言って。」
そういって、充がデータの入ったメモリースティックをとりだした。
「充、コピーくらいしてくれよ。」
「そんな暇ないの。そろそろ、動きが本格化して来てるし、データ集めも一苦労だしね。あっちに『抑制』の能力者がいない分ましだけどね。」
「そりゃそうだー。あっちにあれがいないから、今血眼になって探してるんでしょ?ま、それは俺達も一緒だけどね。」
「充の能力を使っても、みつからないとはな・・・・。」
「そもそも、データ不足なんだよね。『抑制』の能力者は片手で数えられるほどしかいない。そして今はわかっててなおかつ生きてるのは一人だけ。」
「香月か・・・・。」
「そ。そしてもうひとり、俺達とあいつらが探してる人だけだよ。」
「あいつらよりも先に見つけないとな・・・・。」
「俺達の死期が早まっちゃうってね。」
「引き続き探ってみるけど、本家のパソコンにはジャックできないから。そのつもりでね。」
「あ、パス変わっちゃったんだっけ?」
「そ。今そのパスを解析中。けどまだ時間かかる。」
「俺達で、探しださなきゃなんないってわけか。急ぎだし、引けを取るわけにはいかないってことで。」
「ところでさぁ、琴ちゃんにはこのまま黙っとくわけ?」
「そりゃ・・・巻き込んだりすんのは嫌だし?もともと真琴はこっちとは関係なかったんだし、知らせていらない心配させたくないしな。」
「聞いた、充。あの翔がこんなこと言うんだよー?これで琴ちゃんに気がないとか、信じらんないよねー。」
「お前・・・・またそれを言うのか。」
「だってさー。翔がそこまで気にしてるんだよ?いい加減素直になんなよ。恋愛に男女もないんだからね。」
「護が言っても、説得力無い。」
「充、それはどういうことだい?」
「そのまんまの意味。でも、真琴はいい子だと思うよ?この現代にあんな子いたとは知らなかったよ。それに・・・ちょっと興味深いところあるんだよね。」
「ま・・・・さかおまえ・・・・。」
「翔?何考えてるか大体分かるけど、そう言う意味で言ったんじゃないからね?真琴の事、初対面の時調べたじゃん?あの時、ちょっとエラー出てさ。」
「エラー?そんなのでるの?」
「ほとんどないかな。大概の人はそんなことないんだけど、要人とかこっち関係で力がある人の情報はエラー出て跳ね返される。真琴もそうだった。一か所って言うか、過去の一部分に大きなエラー部分があった。今の歳から考えて、生まれてから・・・10歳くらいまでかな。」
「10年も?」
「そう。出生どころか、10歳になって施設が変わった時以前のデータを探れなかった。」
「どういうこと?琴ちゃんはそれこそ一般人だよ?」
「だから、興味深いって言ったじゃん。あの子には何かあるんじゃない?」
「・・・・・・・・・・・・・。」
今二階で寝ている、話題の少年の夢の中にその原因が訪れていることに三人が気付くはずもなかった。
次に続きます。
10年のブランク。これには訳ありなので今は深くは言えません。