ネコカーが通ります!道を空けて!
「……胸が苦しいっ!」
あまりの痛さにフローリングの床に膝をついてそのまま仰向けに倒れた。
「……ヤバい。これはヤバい」
俺の愛猫のマチャドも心配そうに俺を見ている。
どうする?救急車を呼ぶか?
でも『救急車をタクシー代わりに使うな。緊急時以外の救急車の要請は罰金』ってポスターを最近よく見るし、本当にタクシーを呼んでも痛みで普通にしていられる自信はない。
救急車を呼んで罰金か。タクシーを呼んで暴れて胸が痛いまま警察行きか……どうする?
「ネコカーを呼ぼう!」
マチャドがそう鳴いた。
いや、幻聴だ。
猫が喋るか。
ネコカーってなんだよ。
ピーニャー!ピーニャー!うぅぅぅ!
ニャオーーん!
『ネコカーが通ります。ネコカーが通ります!そこの犬!道を空けて!』
外が騒がしいなと思った矢先に玄関の扉をこじ開け、白いヘルメットを被った猫たちが俺の部屋になだれ込んできた。
「……2足歩行!?」
猫たちが俺の全身をベタベタとヒンヤリした肉球で触る。
「血圧は!?」
「知らん!」
「外傷は!?」
「わからん!」
「持病や薬の使用は!?」
「皆目見当つかん!」
実りのない会話だなぁと思っていたら笑えてきた。
……
ベッドの上で目覚めた。
マチャドは隣でまだ寝ている。
いつも通りの朝?
あれ?夢?
胸はズキズキと痛む。夢じゃない?
でも昨夜程じゃない。
仕事帰りに一応病院へ行っとくか……。
……
先生が俺のレントゲン写真を見て言った。
「筋肉痛ですね」
筋肉痛だった。
「後から来るタイプの」
後から来るタイプか。俺も年を取ったな。
日曜日に気合い入れて草刈り機で頑張りすぎたか。
「でも何か……ガンの『痕』みたいな影もあるんですよねぇ」
「先生。やめてくださいよ」
「すみません。ガンは自然治癒なんてしませんよね」
ネーコー!ネーコー!ううううぅ!
「?」
変わったサイレンの音が聴こえる。
『ネコカーが通ります!ネコカーが通ります!そこの犬!道を空けて!よしっ!病院へ移動するぞ!1、2のニャー!患者が担架から落ちた!気にするニャ!』
……いつも犬に邪魔されてるな




