王族の密談
世界を“救う”者は、
自分が壊していることを、決して認めない。
彼らは言う。
これは選別であり、必要な犠牲だと。
だが――
犠牲と呼べるのは、選ばれた側だけだ。
白の間に、温度はなかった。
床に刻まれた世界調律紋が、淡く脈打つ。
壁には、世界の鼓動図。
崩落域は黒く、延命域は白く、そして中央に赤が灯る。
最年長の王族が言った。
「循環は、何度目だ」
蒼環位が即答する。
「九度目。
今回も、歪度は限界を超えつつあります」
紅環位の女が口を挟む。
「では、終わりは確定している、と?」
「終わりではない」
白環位が訂正した。
「淘汰だ」
最年長が頷く。
「世界は、疲弊した器だ。
捨てねば、次はない」
蒼環位が地図を拡大する。
「刻印の共鳴点。
第九番目の徴が、再び反応を示しています」
紅環位が低く笑う。
「また、“鍵”か。
都合のいい生贄ね」
「鍵ではない」
白環位が淡々と返す。
「扉を開かせる“犠牲”だ」
沈黙。
最年長が続ける。
「祠は、選別機構だ。
残す世界を決める。
残さぬ世界は、削除される」
紅環位は、壁を見つめた。
「では民は?」
最年長は答える。
「廃棄予定資源だ」
その言葉に、誰も顔をしかめない。
蒼環位が報告を続ける。
「調律は不完全。
影と器の意志が一致しなければ、拒絶が起こります」
「歪刻、異形化……」
紅環位が呟く。
「失敗作だ」
最年長は切り捨てた。
「再利用の価値はない」
蒼環位が、命令を待つ姿勢を取る。
「……ご指示を」
最年長は、視線を上げない。
「回収。
彼女が“選ぶ”前に」
白環位が続く。
「紅環位、狩りを。
蒼環位、実行。
灰環位は――処分対象とせよ」
紅環位の女は、かすかに笑った。
「歯車は、よく回る」
最年長は答えない。
壁の赤が、鼓動する。
次の世界は、すでに“選ばれつつある”。




