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魔剣蒐集録  作者: 健康な人
1章:人と神の寓話
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【名もなき神の墓標】

【名もなき神の墓標】


 その刃には、名があった。

 しかし誰にも、それを読むことができなかった。

 それは神が振るった刃であり、同時に神の墓標であった。


 刃は、よく斬れた。

 振るえば骨を肉ごと切り裂き、鋼の鎧を布のよう切り裂く。

 敵の名も、恨みも、勝利の理由も残らない。

 手の中で少しだけ重さを増した刃だけが、何があったかを覚えている。


 ある兵士は、その刃を置いて村に戻った。

 畑を耕し、子を育て、穏やかに暮らした。

 夜更け、ふと何かが足りない気もするのだが、それが何かは覚えていない。

 そしてその男は、自分の名前が呼ばれていないことにも気がつかない。


 刃は今もどこかにある。

 だが、探す者はいない。そうとした理由を、誰も覚えていないから。

 やがて兵士が長老と呼ばれるようになった頃、どこかで聞いた事がある気がする名前の新しい神殿が建てられた。

 その神殿では、誰も名で呼ばれなかった。

 役割だけがあり、人はいなかった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~


 名前を刻まれた刃。しかし誰もその名を読めない。

 この刃を振るった者は、やがて名前を失う。

 そして刃は、その名前を記憶する。

 刃が重くなるたびに、世界から名前が消えていく。


 ~~~~~~~~~~~~~~~


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