【誰にでもなれる仮面】
【誰にでもなれる仮面】
この仮面は、思い浮かべる事さえできれば誰にだってなれる。
既に死んだ人にも。愛し届かなかった人にも。
御伽噺の英雄にだって。
あるいは……姿を描けるのなら、神にだってなれる。
勿論、自分にだってなれる。
そしてこの仮面がなれるのは、姿だけだ。
何かの力を得る訳でもないし、賢くなる訳でもない。
性別が変わる訳でもない。
要するにこの仮面、「誰かに見えるようになっている」だけの仮面である。
つまり、自分で自分の姿を見る事ができない。
しかし、人の世には鏡という便利な道具がある。
これがあれば、なんと自分で自分の姿を見る事ができるのだ。
そして、鏡は珍しくない。
この仮面がひそかな人気になるのも頷ける。
元来、人は「何かになりたい」と思っている。
しかし本当に「誰かになりたい」と考えた時、それはきっと呪いになる。
だって「誰かになると」願うほどに、仮面は固く張り付くそうだ。
故に、これはきっと呪いである。
だって、外せるのに外そうと思えなくなるのだから。
~~~~~~~~~~~~~~~
誰にでも見えるようになる、と伝わる仮面型の魔剣。
人に害は与えないが、しかし外すと付けていた者が嫌がるそうだ。
故に皆、変わったなと思いつつ、やんわりと外すように促すそうだ。
やがて優しさの中で、人は仮面の下の素顔を忘れるという。
あるいは使用者本人でさえも、それを望むように。
~~~~~~~~~~~~~~~




