【無銘の魔剣】
【無銘の魔剣】
戦士は魔剣を求め、長い旅路をしていた。
「魔剣」の噂を聞いてあらゆる場所を訪れ、ふらりふらりと世界を旅する。
見つけた魔剣はへし折った。
折る事ができない魔剣は、誰の手にも渡らないようにと、使いもしないのに背中に背負う。
旅の理由はあったのだが、語る相手はもう居ない。
――ただただ背中が重たくなるだけの、果てなき旅路がそこにあった。
戦士の旅路は果て無く続く。
終わりの見えない道半ば。
たった一人の孤独な旅
終わりの見えない道筋に疲れ果てながら、戦士は町に立ち寄った。
――その町は、どこか彼の生まれ故郷に似た花の匂いが香る、美しい町であった。
「無数の魔剣を背負った災厄」「人殺しの刀狩り」「関わるべきではない」
遠巻きに眺められながら酒を飲むいつもの行為の最中に、しかし唐突にその背に声がかかる。
「黒騎士! この町から出ていけ! お前に勝負を挑む!」
振り向くと、そこには青臭い正義感を振りかざす、若い戦士が居た。
まるで昔の自分を見ているようで腹が立った黒騎士は、短く告げる。
――決着は、一瞬でついた。
若い戦士が地面に倒れる頃には、黒騎士は既に背を向けていた。
そして戦士の背負っていた魔剣を、一本残らずへし折った
その町の無縁墓地には、何時からか騎士の墓がある。
墓には無数の魔剣が、墓標のように立てられている。
魔剣は誰でも持ち出すことができる。
――しかしやがて、黒騎士と共に帰ってくるそうだ。
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無骨な作りの大型の両手剣。
決して折れず、曲がらず、切れ味を落とす事がない。
そしてこの魔剣を抜いたものは、必ず戦いの中で命を落とすと伝わっている。
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