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魔剣蒐集録Ⅰ  作者: 健康な人
4章:本質と異質の寓話
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【警句の書】

【警句の書】


 ある時、魔剣の売買を生業にする商人は考えた。

 ――もしかして、魔剣の効果や名前を記した図鑑を作れば売れるのではないか?


 彼にとって、情報は命綱だ。

 そして情報が命綱であることは、広く知られている常識である。

 そんな中で彼は、危険な魔剣の売買をしている。

 つまりこのアイディア、少なくとも彼には非常に良いものに見えたのだ。



 そして、商人は図鑑を作ってみた。

 思い出せる限りの記憶を引っ張り出して、警句を添える。

 その完成度に、商人は一人で納得した。

 ――これは売れる。


 そう思ったのは、もはや確信に近かった。



 しかし、蓋を開けるとまあ売れない。

 いや、売れるには売れるのだ。

 思ったよりも売れなかった、が言葉としては正しいだろう。

 そして商人は、赤字になった計画を眺めてようやく気が付く。

 ――なるほど、魔剣が減らない訳である。


 そして商人は、最初の項目に一つの警句を書き記して最後の書物を売った。


 ――警句は、必要なものほど読まない。


 これが読まれたのは、この書物が魔剣と呼ばれるようになってからである。 




 ~~~~~~~~~~~~~~~


 幾つかのページが破り取られている、本の形をした魔剣。

 この魔剣には、真実正しいことしか書かれていない。

 しかし魔剣に書かれた正しい警句は、

 実は、誰にも読まれない。

 故にこの魔剣は「正しい警句で人を惑わす」とだけ伝わっている。


 ~~~~~~~~~~~~~~~



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