【警句の書】
【警句の書】
ある時、魔剣の売買を生業にする商人は考えた。
――もしかして、魔剣の効果や名前を記した図鑑を作れば売れるのではないか?
彼にとって、情報は命綱だ。
そして情報が命綱であることは、広く知られている常識である。
そんな中で彼は、危険な魔剣の売買をしている。
つまりこのアイディア、少なくとも彼には非常に良いものに見えたのだ。
そして、商人は図鑑を作ってみた。
思い出せる限りの記憶を引っ張り出して、警句を添える。
その完成度に、商人は一人で納得した。
――これは売れる。
そう思ったのは、もはや確信に近かった。
しかし、蓋を開けるとまあ売れない。
いや、売れるには売れるのだ。
思ったよりも売れなかった、が言葉としては正しいだろう。
そして商人は、赤字になった計画を眺めてようやく気が付く。
――なるほど、魔剣が減らない訳である。
そして商人は、最初の項目に一つの警句を書き記して最後の書物を売った。
――警句は、必要なものほど読まない。
これが読まれたのは、この書物が魔剣と呼ばれるようになってからである。
~~~~~~~~~~~~~~~
幾つかのページが破り取られている、本の形をした魔剣。
この魔剣には、真実正しいことしか書かれていない。
しかし魔剣に書かれた正しい警句は、
実は、誰にも読まれない。
故にこの魔剣は「正しい警句で人を惑わす」とだけ伝わっている。
~~~~~~~~~~~~~~~




