【減らない黄金林檎】
【減らない黄金林檎】
とある高名な魔術師が、晩年に一つの計画を打ち立てた。
この国から飢えを無くしてみよう。
なんというか、そういう荒唐無稽な計画だった。
消費されるものが、消費されない。
そんなこと不可能に決まっている。
誰もが鼻で笑ったが、しかし貧民街の住人は期待した。
もしかすると、これは凄いことになるのではないか、と。
やがてしばらくの時間が経ち、
旅から帰った魔術師は不可能と思われたことを可能にした。
なんと、本当に絶対に減らない林檎の木を作り出したのだ。
その実はたっぷり蜜を蓄えて、まるで黄金のように輝いていたそうだ。
最初は話を信じて飛びついた貧民街の住人が。
次にその動きを見て興味の湧いた平民たちが。
そして最後に味を聞いた王侯貴族がその林檎を口にした。
林檎は、天に上る様な味だったと伝わっている。
皆が林檎を求めたし、その林檎は全く減らないのだ。
皆が魔術師を湛え、その様子に満足した魔術師は、
最後の旅の疲労がたたり静かに息を引き取った。
魔術師の名は各地に広まり、
他国からも林檎を分けてほしいと使者が訪れた。
その林檎は「成功の証」と呼ばれるようになった。
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甘くおいしい黄金の林檎を実らせていた――と、伝わる林檎の木。
この林檎の木があったから、人々は森の恵みを考えなくなった。
林檎は減らないのだから、他の実りは些細なものに見えた。
林檎は毎日、黄金色に実っていたから。
砂に呑まれた廃墟の木に、実った林檎を見た者はいない。
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