【言葉を整理するインク入れ】
【言葉を整理するインク入れ】
このインク入れを使っていた学者は、
言葉を整理すのが下手だった。
だから何度も何度も書き直しをしなければならなくて、
最初は使ってもインクが減らない道具として作ったそうだ。
そうしてインク入れを使っていた学者であったが、
使っているうちに、最初から整理すればよいのではないか?
と、考えるようになっていた。
正しいとされる文章や人気のある表現を組み込んで、
最初の一つは完成した。
試してみると、これが中々に、もどかしくも面白い。
拙い言葉で日記に言葉を書けば、インクが返事をしてくれるのだ。
おかしなことを聞けばおかしな言葉が返って来て、
奇麗なことを聞けば、綺麗な言葉が返ってくる。
望む言葉を引き出すために、まずは自分の言葉を整理する必要がある。
これがこのインクの本当の力なのだと理解して、
学者はすぐに思いついた。
――これをみんなに使って貰えれば、この論文の完成度が上がるのでは?
そうして学者は、周りの人物にこれを勧めた。
自分の言いたい事が整理できる、素晴らしい、と皆が喜んでくれた。
学者は自身と共に確信を得た。
そして、問題は暫くして起こった。
このインク入れについての論文が却下されたのだ。
便利だと言っていたじゃないかと思い、
どうしても納得できない学者は理由を尋ねた。
――ああ、すまない。有名じゃなかったから読み飛ばしてた。
中身は読まれていなかったらしい。
自分が道具ではなく危険な魔剣を作ったことに、学者はようやく気が付いた。
失敗した。これは違いを理解する力を奪うのだ、と。
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使っても減らず、自分が言いたい言葉を整理してくれる魔剣。
使うことは禁じられているのだが、使えば恐ろしく便利である。
しかしこの魔剣の真に厄介なところは、
複製が容易である上にかなりの数が作られていることだ。
学者が書き上げた論文は誰にも読まれなかったが、
魔剣の製法は広く知られている。
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