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【正しさを計る天秤】
【正しさを計る天秤】
この天秤は、あらゆる行為の価値を数字で示したそうだ。
善行も、努力も、勇気も、犠牲でさえも。
その全てを、具体的に計測できた――そう伝わっている。
やがて王も神官もこの天秤の裁きに頼り、
人々も何かあればこの天秤での解決を望むようになっていた。
これは平等だと皆が讃え、真実その国の価値基準になっていた。
しかしその裏で、数値が低い行為は語られなくなってもいた。
天秤に乗らない見えない善は、
やがて存在しない扱いになっていた。
見えない善は、やがて善である必要が無くなっていた。
しかし、誰も気づかない。気にしない。
だって、秤に乗らないのだから。
天秤はいつしか、見えないものを信じる力を奪っていた。
やがて国から義務の楔が消えた時、国から人も消えていた。
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人の正しさを数値にして図ることができる天秤。
かつて正しさの絶対性によって、一つの国を滅ぼしたと伝わっている。
国は正しさではなく、義務によってできている。
しかし不思議と、義務を語る人間はいない。
正義の重さを主張するものは、幾らでも居るのだが。
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