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【正直者の槍】
【正直者の槍】
ある時、戦いに赴こうとした若者が居た。
若者は旅の途中で休憩しながら先に進んでいたのだが、
その道筋で怪しい商人に出会う。
その商人が言うには、己が持っている槍が魔剣だから買い取らせて欲しいと言うのだ。
若者は、それは違うと答えた。
これは今日の朝に買った何の変哲もない槍で、魔剣などではないと答えた。
そうすると商人は、ますますその槍を欲しがった。
積まれた金は、今から村に逃げ帰っても歓迎されるような額だった。
しかし、若者は槍を譲らない。
その様子にますます商人は確信を強め、更に倍の金額を提示した。
それでも若者は、己はこの槍で戦い国を守るのだと、頑として譲らない。
若者の言葉に感心し、商人はようやく諦めた。
そして気持ちよく分かれたのだが、そんな若者に別の人間が声をかけた。
――その槍、ほんとはどんな凄い槍なんだ? と。
それに、若者はこう答えた。
――知らないけど、目立ったら狙われるじゃないか。
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この槍は、正直者にしか気づかれない魔剣である。
この魔剣を持つものは、嘘つきから姿を隠すという。
正直者とは、もしかすると何者でもないのかもしれない。
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