【何にでも合う鍵】
【何にでも合う鍵】
これは、とある家に伝承する魔剣である。
この家の当主は、どんな鍵穴にでも合うこの魔剣を使って大きな財を成したと伝わっている。
やがて当主は冒険家業を引退し、家族に囲まれた半生を過ごす。
当主には、三人の息子が居た。
まず長男が、当主が老いたのを契機にこの魔剣を譲ってくれと強請ったそうだ。
どうしてこれを欲しがるのか不思議に思った当主は、長男にそれを聞いた。
――この魔剣があれば、どんな冒険も成功させる事ができるではありませんか。
その言葉に、なるほど、と当主は納得した。
この魔剣の正しい使い方を、どうやら長男は教える前から知っているらしい。
――うむ。ばれないように使えよ。
二人にとって、気持ちの良い話が終わった。
そして長男は、暫くすると命を落とした。
どんな宝箱であっても開けられると信じて冒険し、魔物に殺されたそうだ。
当主は、使い方を間違えていると天を仰いだ。
長男が死んで、次男が魔剣を強請った。
当主は長男と同じことを次男に聞くと、次男はこう答えた。
――私はこの鍵を、父上と同じように契約の締結のために使います。
その言葉に、当主は少しだけ考えた。
――その使い方は難しいのだが…… まあ、いいか。使い過ぎるなよ。
そして次男は、暫くすると命を落とした。
話を聞けば、この魔剣を使って様々な契約の締結を行って人に殺されたらしい。
やはり、使い方を間違えている。当主は天を仰いだ。
最後に、当主は三男に魔剣を譲った。
正直譲りたくなくなっていたのだが、しかし譲らないわけにもいかない。
当主は考えに考えて、こう言い残して魔剣を譲った。
――絶対に、見られないように使え。自分から使うな。それだけで良い。
そして、当主は息を引き取った。
しかし、彼は幸運だったのかもしれない。
高名な冒険者が持ち込んだ魔法の宝箱を開けられず、
偽物の魔剣を使っていた、と噂されて没落する家を見なくて済んだのだから。
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幾つもの鍵を柄尻に吊るしている、短剣の大きさの魔剣。
短剣サイズではあるが、その扱いが非常に難しい――らしい。
何人もの手を渡ってきたのだが、
誰も使いこなせなかった――と、伝わっている。
老いた骨董商はそういう物を探し求めていると言っていたが、
老いてもその魔剣を見つける事ができないでいる。
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