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魔剣蒐集録Ⅰ  作者: 健康な人
2章:神と伝承の寓話
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【祈りを覚えている鐘】

【祈りを覚えている鐘】



 ある時、町で奇妙なことが起こった。

 大聖堂にある鐘が、祈りの言葉を覚えたのだ。

 鐘を鳴らせば、音の代わりに聖句が響くのだ。

 最初は皆が驚いたが、やがて彼らはこれを使うようになった。

 ――鐘が一緒に祈ってくれる。

 そんな風に笑いながら。



 その日、朝早くに鐘が鳴った。

 いや、正確には聖句が鳴ったのだが。

 いつもと違う時刻だったが、住民たちは気にしなかった。

 祈りの時間だと思った住民が家を出た。


 しかし、そこで見たのは祈りで集まる人々ではなく、攻め寄せた戦神の軍勢だった。

 武器を持たずに集まっていた住民たちは、彼らの攻勢によってあっさりと滅んだ。

 国を滅ぼした彼らは、その鐘を戦神に報告するために、

 意気揚々と鐘を持ち帰って彼らの神に説明した。



 その鐘は、戦神の町で鳴らされることになった。

 その祈りの意味を理解する者は、今はもう居ない。

 祈りの一節が、もう居なくなった彼らが讃えていた神のものに、入れ替わっていたとしても。

 しかしそれに気づかぬ戦神の信徒たちは、祈る手間が省けたと喜んだそうだ。



 やがて、あれだけ屈強であった戦神の信徒たちは、とある戦いで盛大に敗れたそうだ。

 屈強な肉体も、戦神から授かった武具も、全く役に立たなかったそうだ。

 まるで信仰を失ってしまったようにも見えたという。

 しかし祈りの言葉は、毎日隣町まで響いていたと報告が上がっている。


 ――それが戦神に向いていないのだと、鐘だけが大声で主張していた。



 ~~~~~~~~~~~~~~~


 叩くと音の代わりに、祈りの言葉を発する鐘。

 人の役割を吞むため分類上は魔剣になるのだが、

 武器として使われたことは一度もないと言う。

 しかしその音には古い祈りの言葉が込められている。

 その祈りは、戦神への祈りに似ている――と、伝わっている。


 ~~~~~~~~~~~~~~~


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