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魔剣蒐集録  作者: 健康な人
2章:神と伝承の寓話
12/14

【天空王の槍】

天空王の槍が、人の手に渡ったという話がある。

これは、その一片の記録である。

【天空王の槍】


 あらゆる学派が研究し、吟遊詩人が最初に覚え、神官たちが欠かさず祈りを捧げる神が居る。

 天空王とだけ伝わるその存在。

 かの者は雷の槍を携え空を駆ける戦神であり、弱きを助ける慈悲深い神であり、人の姿を借りて数々の伝承を残した英雄でもあるらしい。

 神々は彼を様々な言葉で讃えるが、しかし最後には必ず「でも、死んでいるからな」と言葉を締めるそうだ。



 古今東西の老若男女に、幅広く受け入れられている天空王は、知られていないことが殆どない。

 どんな来歴で産まれ、どうしてそう呼ばれ、どのような場所で何をやったか。

 そして、いつ死んだのかまで。



 ――そしてこれは、あくまでも噂だが。

 神とは、語られることによって姿や性質を変える気質があるらしい。

 程度の大小はあるらしいのだが、古い時代にその気質を誰よりも強く備えた一柱の神が居た……

そんな噂が、学者たちの間で密かに語られている。

 星を見て羊飼いが星座を描いたように、理由などなくても噂は生まれる。

 おそらくこれは、そういう類の話なのだろう。



 天空王と呼ばれるその神は、幅広く世界に受け入れられている。

 今日も新たに記録が作られる。

 天空王がどう生きたのか。そして、どう死んだのか。


 神々は天空王を殺していない。

 ただ讃え、讃えさせただけだ。

 その結果、不思議と彼は死んだことになっている。

 そして彼が死んだとされる記録だけを、今日も更新している。

 故に天空王は、確かに死んでいる。

 今は、まだ。




 ~~~~~~~~~~~~~~~


 雷が槍の形になっている、と噂される黄金の槍。

 来歴は不明であり、天空王の神殿にいつの間にか表れていた。

 神々は迷い、この槍を神殿に飾ることにした。

 新たな物語を生み出さぬために。


 ~~~~~~~~~~~~~~~


この物語には、続きがある。


『王翼の歴史書』では、神話が静かに完結する。

『空の書』では、その裏側で新たな神話が生まれる。


興味があれば、手に取ってほしい。

もちろん、この物語だけで完結するのも良い。

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