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魔剣蒐集録  作者: 健康な人
1章:人と神の寓話
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【背徳の連鎖】

【背徳の連鎖】


 ある国に、親を知らない双子の兄妹がいた。

 妹は歩く事もままならず、横になるのが常であるほどに病弱であった。

 妹の兄は優しく、言葉足らずの妹の言葉を聞き分けられる聡明さを持っていた。

 妹の心は、兄に向いていた。


 最初は憧れだったのかもしれない。

 しかし女へと成長した少女の心には、子どもが物語の英雄に憧れるような感情は既にない。

 少女は求めていた。兄を。兄の心を。兄と呼ばれる男を。


 大地が紅く燃え上がり、痛々しく広がる大地の亀裂から灼熱の溶岩が噴き出した。

 焦土と化した灰の大地で暴れ狂うのは、双頭の片方を失い燃え盛る深紅の血を流す紅く巨大な竜であった。竜から逃げ惑う人の流れに逆らい、鮮やかな紅髪の青年が竜に挑む。

 暴れ狂う竜はその顎で青年を喰らい、歓喜の咆哮を上げた。


 国が焦土となって十数年、生存者が作った村の片隅には一つの孤児院が建てられていた。

 孤児院の庭では今日も子供たちが元気に走り回る。

 子どもたちの中には体が病弱な妹と聡明な兄の兄妹が居た。

 彼と彼女の髪は、鮮やかな赤色だったそうだ。


 ~~~~~~~~~~~~~~~


 柄尻を太い鎖で繋がれた、二刀一対の肉厚の短双剣。

 鎖は何処までも伸びるが、刃同士が離れるとその距離が遠ければ遠いほど強力な炎を纏い、急速に元に戻ろうと縮み始める。


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