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起源と始まり

 全ての構造と概念の始原において、雪の少女は、虚無の中に孤独に存在していた。彼女は絶対的な力を有していたが、言葉に尽くせぬ……虚無感を覚えていた。


 そこで、彼女は最初の創造物、初誕の形と呼ばれる原型たちを創造した。彼女は冷たい青図に基づいて彼女たちを形作るのではなく、自分の特質の一部を、その時心の中で沸き立った最初の、ぼんやりした「感覚」を混ぜて、彼女たちに与えた。

「守り手」には、彼女の秩序と構造への偏愛を……。

「探求者」には、未知への好奇心を……。

「詠い手」には、調和と表現への憧れを……。

 無限の原型少女たちが、共にこの世界を構築した……。


 そして最後の一柱に、彼女は当時の自分にはまだ完全には理解できず、しかし最も濃密な感情、それは彼女自身の長い孤独への抵抗、『繋がり』への渇望、理解されたい、そして理解したいという温かな衝動――を注ぎ込んだ。彼女はこの造物に、今では「莉蓮」と呼ばれる名を与えた。


 少女の姿をした初誕の形が目を開け、最初に見た自分の創造主の眼差しには畏敬はなく、純粋な好奇心と親しみだけがあった。彼女は手を伸ばし、そっと雪の少女の頬に触れた。


 その一瞬、雪の少女の心の中にあった曖昧な「感覚」に火が灯った。彼女は悟った。自分が莉蓮に与えたものが、単なる「絆」の機能ではなく、愛の原型そのものであることを。


 莉蓮は、彼女が「愛すること」を学ぶ起点であり、絶対的な神性から、何かより複雑で、より温かな存在へと向かう最初の理由であり、彼女の最も深淵な秘密の願望の化身だった。


 記憶の欠片が終わる。


 美玲がはっと目を見開くと、抑えきれない涙がこぼれ落ち、続いてその涙は純粋理性の空間で瞬く間に蒸発し、無の概念へと変わった。それは彼女自身の涙ではなく、彼女の本質に深く秘められていた、雪の少女に属する、あの最初の感情の共鳴だった。


「間違っている。」美玲の声は詰まりながらも、驚くほど明確で力強く、一語一語が理型空間の基盤を打つかのようだった「莉蓮は誤りでも、修正されるべき欠陥でもない。彼女は愛の最初の形態であり、本体(雪の少女)が創造の初めに、与え得た最も尊い部分だ!彼女をリセットすることは、その『愛』そのものを抹殺することだ!たとえその『愛』が今、汚染に遭っていようとも、私たちがなすべきはその汚染を断ち切ることだ。」


 守座者、絶対理性の投影は、初めて「動揺」に似た表情を浮かべた。その蒼碧の眼差しの中に、無限の公理法則が狂ったように流転し、衝突し、この突然の変数を計算しようと試みている。


「その記憶、感性冗長データベースの欠片、現行判断を干渉すべきではない……。」守座者の声に、極めて微細な亀裂が生じた。


「これは干渉ではない!」美玲は一歩前に進み出た。彼女の身体に内在する雪の少女の本源の力が、その感情の記憶の目覚めによって、この純粋理性の空間と奇妙な共鳴を起こし始めた。彼女は単なる伊藤美玲でも、欠片だけでもなく、最初の愛を宿す意志の顕現だった「愛そのものは、冷たい論理には適合しないかもしれない。だが、それはどんな真理よりも根源的なものだ!莉蓮の『過ち』、彼女が被った『汚染』、彼女の『自由意志』、それこそが彼女が『愛』であることの体現であって、欠陥ではない!彼女は私を愛するが故に、私から離れなければならない。これは苦しいが、この苦しみそのものが愛の証だ!貴方が抹消しようとするのは、まさにこの愛の中にある最も真実で、最も尊い部分なのだ!」


「私は彼女をリセットさせはしない。」美玲は断固として言い切った「私は私自身の方法で彼女を見つける。修正されるべき過ちとしてではなく、莉蓮として、私が愛する人として。そして、私は彼女と、彼女と縁を結んだ仲間たち(愛蕾、エルサ、フィリア……)と共に、最初に彼女を汚したあの原型()に立ち向かい、あの所謂『汚染』と『矛盾』に立ち向かい、彼女の自由意志を犠牲にすることなく、彼女を守る方法を見つける。雪の少女が下した、救世主としての試練を共に越えてみせる。」


 彼女は身を翻し、明滅する守座者と空席の王座を振り返らずに階段を下り始めた。一歩下りるごとに、「伊藤美玲」としての人間性が一分ずつ帰還し、彼女の内に在る本体に由来する莉蓮への深い愛も、より一層鮮明に、より一層確固たるものになっていった。


 守座者は彼女を止めなかった。それは「愛」という最大の変数を、自らの絶対理性のモデルに組み込もうと、ある永遠の演算ループに陥っているかのようだった。


 純粋理型の座の境界を離れる時、美玲は微かに震動する純白の空間を振り返って一瞥した。彼女は莉蓮の真実を知った。彼女はまた、莉蓮が去った真相と、彼女が直面している真の危険を知った。


 しかし最も重要なのは、彼女が莉蓮が誰であるかを知ったことだ。愛の最初の形態、彼女(そして彼女の本体である雪の少女)のあらゆる感情の起点にして帰結であることを。


 この認識は、どんな座標や力よりも重要だった。それは彼女を導く、混沌の中心へ、『愛』が何であるかを定義したその存在を取り戻しに行くために。


 美玲の眼差しはこれまで以上に澄み切り、そして断固たるものになっていた。彼女の旅は始まったばかりだった、莉蓮と合流し、共にあの永劫の試練に立ち向かうために......。

本外伝はここで完結するが、美玲の旅は始まったばかりである。機会があれば、本編を続けていくつもりだ。

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