サイトー君はどーぶつに好かれる
ある高校の生徒達が、校外学習で比較的近くにある動物園に来ていた。その動物園では動物達との“ふれあい”を売りにしている。もっとも、珍しい動物があまりいないから仕方なくそう謳っているだけなのかもしれないが。
その“ふれあい場”の一つで、サイトー君が犬達に囲まれていた。佐伯さんはその様を眺めている。犬なら人間が大好きだからそれくらい普通だと思うかもしれないが、そうでもない。この動物園の犬達は、人間に触られ過ぎていて、普通はそこまで人間に寄って来ないのである。
しかも、さっきまでサイトー君は他のふれあい場で猫達に囲まれていた。その前はモルモット、ハダカデバネズミ……
「本当に、よくどーぶつに好かれるなぁ」
佐伯さんはそう独り言を漏らした。
やがて校外学習が終わった。現地解散。帰り道。佐伯さんの近くにはサイトー君がいた。話しかける。
「たくさんどーぶつと触れ合っていたわね」
すると、サイトー君は明るい声で。
「そうだね。そう言えば、佐伯さんもふれあい場によくいたね。動物が好きなの?」
少し考えると佐伯さんは返す。
「どーぶつが好きってよりも、わたしもどーぶつなのかもしれない」
サイトー君は不思議そうな顔でこう返す。
「人間も動物だよ、佐伯さん?」
「ええ、そうね。サイトー君」とそれに佐伯さん。
どうせ伝わらないと思って言ったのだろうけど、それでも佐伯さん軽く溜息を漏らした。