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つぐみ龍の伝説  作者: 永田常雄


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5/6

⑤ 告白

明けましておめでとう御座います!

勝手に以下の様な…夢のキャスティングを妄想しながら…楽しく執筆中の筆者です…

豊田治親…岸谷五郎

石毛政重…寺脇康文

永田常充…草薙剛

飯岡道鎮…香取慎吾

原 外記…稲垣吾郎

(以上敬称略) 

…なんてね。




 朝飯を戴いた後…もう一度、道鎮殿と剣術の稽古をしていると…栗崎城主原外記様が、筋肉の塊の様な漆黒の馬体の気性の荒そうな、一頭の馬を連れて来た…

ブルッブルッ…ブルルルルルルッ…

「重兵衛、これに乗って吉沼周辺を散策してから石毛城に行って参れ!」

「えっ?あ…はい!」

「こいつは乗り手を選ぶ…柔な奴だと振り落とそうとする…さて、御主にこの馬を御せるかな?」

「殿…流石に…千代王は…重兵衛でも…ちょっと…」

「そんなに…気性が荒い馬…なんですか…この馬…」

私は馬の鼻面を撫でてみた…

馬は私の頬をベロンと舐めた…

「流石じゃな?!『千代王(ちよのおう)』は御主の事を気に入った様じゃ!」

「さ、左様でございますか?」

と言って私は『千代王』に跨がってみた…

「流石じゃ…千代王に一回で跨がれるとはのう…重兵衛、行って参れ!」

「はい!」

千代王は何故か私に懐いてくれて可愛かった!

道鎮殿より手渡された吉沼周辺と石毛城迄の地図を頼りに地域の散策を命じられたのである。

道すがら領民の方々と談笑したり、吉沼付近の外記様の家臣の方々とお話する機会を得られた。

 領民の方々に挨拶をして千代王に跨がって暫く進んで行くと…小柄だが鋭い視線を送ってくる一人の侍に出くわした!

「御主が永田重兵衛常充殿か?」

「あ…はい、左様にございます…」

「わしは豊田家家臣肘谷小治郎と申す。吉沼の北、豊加美を任されておる…」

(おぉぉぉぉっ、来たぁぁぁぁっ!この人が肘谷小治郎殿かぁっ!)

私は直ぐに千代王から降りて膝を着き、改めて挨拶をした…

「知らなかった事とは申せ御無礼仕つりました!どうか平に御容赦下さい!某、先日より豊田治親様の命により栗崎城主原外記様の元に仕えることを許されました永田常充と申します!どうか宜しくお願いいたします!」

「うむ…しかし御主、殿より『重兵衛』の名を授かったのであろう?」

「はい!」

「ならば、有り難く『永田重兵衛常充』と名乗った方が良い!御主の事は道鎮から聞いておるぞ!剣も馬乗りも何でも来いの強者じゃと…」

「あ…いや…そのような事はございませぬ…剣も馬乗りも未だ未だ未熟な若輩者にございます!」

「ふむ…しかし、その暴れ馬をそこまで手懐けて居る者をわしは他には知らぬがな?…まぁ良い、そんな事より今日は御主に会わせたい者達が居る!ちと付きおうてくれぬか?」

「はい…」(千代王って…そんな暴れ馬なの…?)

小治郎殿が指笛を吹くと…何処からか一頭の馬が此方に向かって走って来た…

小治郎殿はヒラリと馬に飛び乗った…

「重兵衛殿、付いて参れ!」

「えっ、あ…はい!」

私も慌てて千代王に飛び乗って小治郎殿の後に付いて行った…


 2里程走った処で小さな集落が見えてきた…

小治郎殿は速度を緩めて馬から降りた。

「此処は唐崎と言う処じゃ。」

私も千代王から降りた。

すると少し大きな屋敷から男が1人出て来た…

「おおっ、小治郎、重兵衛殿も!先日…栗崎城内で会ったな、良く参った!わしは下栗の常楽寺と申す!さぁ入ってくれ!」

(おぉぉっ、来たぁぉっ!この人が下栗常楽寺殿かぁっ!)

 屋鋪の中に入ると四人の侍が車座になって此方を見ていた…

「永田殿をお連れ申した!」と言って小治郎殿は私の左側に座った…

「皆の衆、此方が永田重兵衛常充殿じゃ!」と言って常楽寺殿は私の右側に座った…

ので、私はその真ん中に座った…

「小治郎はもう良いな?その隣が伊古立の掃部、その隣が長萱の大炊、そしてそのまた隣がここの主の唐崎修理、そのまた隣が総上の袋畑右京、そして改めまして、わしが下栗の常楽寺じゃ。」

(うぉぉぉっ、来たぁぁぁっ!伊古立掃部殿に袋畑右京殿!)

「永田重兵衛常充です!皆様どうぞ宜しくお願いいたします!」と言って私は小さく会釈した…

「さて、今日ここに集まってもらったのは他でもない…多賀谷の侵略がまた始まりそうなんじゃ!」と常楽寺殿。

(史実では…確か…ここに居る方々は…もうすぐ多賀谷方に…寝返る筈…だが…)

「小治郎の調べでは、多賀谷政経の命により高道祖の白井全洞が何か企んで居るらしいと言う事じゃが…」

すると小治郎殿が…

「白井全洞めが多賀谷の城から高道祖の屋敷へ戻ってからと言うもの、入れ替わり立ち替わり侍達の出入りが頻繁になり、忍びの者らしき者共の姿も見受けられ申す!恐らく直ぐにでも攻め込んで来るものと政重様にもお伝えして、常楽寺様と右京殿と某で警戒して参りましたが…一向に動く気配無く…何か企んでいる様子にござる!」

すると続けて常楽寺殿が…

「そこでじゃ!四百七十年も後の世から迷い込んで来たという重兵衛殿ならこの後、白井全洞めが何を企んでいるのか判らんかと思ってのう…」

(えっ?)

「じょ…常楽寺様…何故…その事を?…」

「すまぬ…実はあの日…わしも栗崎城に居たと申したな…その時、聞いてしまったのじゃ…」

一同私を見た…

「さ…左様でしたか…しかし…この事は治親様より…絶対他言無用と言われ居た筈では?…」

「解って居る!ここに居る者達は皆、口の固い者ばかりじゃ!心配は要らぬ!」

私はいろいろ…少し考えてから…言った…

「判りました!しかし470年後の世でも、今、この地で起ころうとしている事の詳しい文献があまり残されておらず…某も何が起こるのか定かでは御座いませぬ…。」

一同シーンとしている…

と、常楽寺殿が溜め息混じりに…

「左様か…。」

「はい…ただ全国的に戦乱の世となって参ります!来年には武田信玄様と上杉謙信様の間で北信濃の領土を巡って川中島の合戦が始まります!この戦は十一年、計五回も行われ、最終的には決着が着きませんでした…」

「何と…」「ほほう…」「そんな事が…」

一同、驚きの様子…

「歴史上…このように西国の大きな戦の影に我ら東国の戦は隠れてしまっていたようです…が、この南常陸や下総でも激しい戦が各地であった事も事実でしょう。」

「うむむむ…」

一同、固唾を飲んで私を見つめている…

「ただ、白井全洞なる者が中々の調略家と言う事らしいので、皆様、これまで以上に細心の御注意をお願い致します!」

「うむ…そうじゃな皆の衆、今、重兵衛殿が申した事も絶対に他言無用じゃ!」

一同頷いた…

「我等、四箇村と北域の豊田侍、連携し合って治親様、政重様の御為、共に戦おうぞ!!」

「おう!」「おう!」「おう!」「おう!」…

一同、目と目を合わせて深く頷いた…


 程無くして私は唐崎修理殿の屋敷を後にした…

「やはり治親様・政重様御兄弟は家臣の皆さんに慕われているんだなぁ…四箇村・北部最前線の六人衆も結束が固そうだし…とてもこの先、多賀谷に寝返るとは考え難いなぁ…」

等とブツブツ呟きながら私は千代王と共に石毛城に向かって行った…。


 石毛城に着くと早速、政重様直々のお出迎えである…

「遅いぞ重兵衛!待ちくたびれたわ!!」

「はぁっ!申し訳ございません!ちと寄り道をしておりました…」

「まぁ良い!良く来た、さぁ上がれ!」

「ははぁっ!」

私は千代王を馬廻りの方々に預けて屋敷の中に入って行った…

 470年後には、史跡石毛城跡地として住宅街のど真ん中で八幡神社となっている…この石毛城の中に居るのは何とも不思議な気分である…

 「のう、重兵衛…今日お主を此所へ呼んだのは他でも無い…実は御主に相談したき議があるのじゃが…」

「はい…」

「実はな…多賀谷の事は知って居るな?」

「あ…はい!」

「奴らの動きが読めんのじゃ…不穏な動きがあった故、我等…警戒して居ったのじゃが…あ奴ら一向に攻めて参らぬ…今迄なら直ぐに動きがあって合戦になっておる処なんじゃが…此度はまるで攻めて参らぬ…奴らは一体何を企んで居るのか…お主なら何か知っては居らんかと思ってな?」

「はい、実は先程迄…唐崎修理殿の御屋敷にて四箇村・北域六人衆の合議に呼ばれておりました…其処でも同じような質問をされました…」

「ほう…して、お主は何と答えたのじゃ?」

「はぁっ、判らぬと!」

「何と?!判らぬとな?」

「いえ…実は判っております。」

「何と…判って居るのに何故…常楽寺殿達に教えてやらなんだのじゃ?」

「はぁ…其が…あまりに衝撃的な内容なものですから…先ず政重様にお伝えをせねばと思い…某…白を切り通しまして御座います…」

「うぬぬ…して…その衝撃的内容とは何なのじゃ?!」

「はい…それが…その…」

「重兵衛、気にせず申せ!我等、未来の事など判らぬ故…信じられぬ様な事でも…お主の口から聞いておきたいのじゃ!」

「はぁっ、それでは申し上げます!これから二年後、原外記様・与五郎様父子が多賀谷の急襲にあって…お二人共…御自害遊ばされます…」

「なっ…何じゃとぉっ?!…つ…続けよ!」

「はっ…道鎮殿も栗崎城を最後迄たった一人で守り抜いて討ち死になさいます…」

「な…何ぃっ?!…い…いや…良い…続けよ…」

「はぁっ…更にその二年後、多賀谷共は向石毛城に攻め入り館武蔵守様を滅ぼします…」

「何と…」

「また…その二年後…長峰原・蛇沼の戦いでは当家が多賀谷に勝利いたします!」

「良し…ん?…ちょ…ちょっと待ってくれ…先程より…お主、二年後、二年後と申して居るが…その間は何も無いのか?」

「はい、いろいろ御座いますが…先ずは大きな出来事を政重様にお伝えいたして居ります!」

「うむ、しかし…多賀谷の奴等が栗崎城や向石毛城に攻め込むには…小治郎や常楽寺殿を倒さねば成らぬであろう?」

「はい!小治郎殿も…常楽寺殿も…間も無くかと思いますが…間も無く…四箇村・北部の六人衆は…白井全洞の諜略により…皆様…順々に…多賀谷の軍門に降ります…」

「な…何ぃっ?!…常楽寺も小治郎も掃部も大炊も修理も右京も…六人…皆…多賀谷に…寝返るじゃとぉっ?!」

「はあっ!史実では…そのようになっております…ですが…」

「何じゃ?申せ!」

「はぁっ!皆様、白井全洞の汚い手によって止むに止まれず軍門に降っていったと思われます…下栗常楽寺殿は戦で止む無く置き去りにされた豊田家家宝・蟠竜旗を自ら建立した寺院にて大切に保管してくれておりました!これ常楽寺殿の豊田家に対する忠義の心の為せる業かと…他の方々もお気持ちは皆、同様であったかと推察されます!」

「侍ならば何故戦わずして敵の軍門に降ったのじゃ?!忠義の侍ならば何故…原親子や道鎮の様に最後迄侍らしく戦わぬのじゃ?!」

「外記様や道鎮殿は別格に御座ります!坂東武士の鏡の様な方々と一緒にしては成りませぬ!六人衆の皆様にも御家があるのです!御家族が御座います!奥様に、可愛い子供達に御両親…皆各々に暮らしがあり、小さいながらも何十年も続いてきた御家があるのです!それを御自分達の代で終わらせる様な事はどうしても出来なかったのでしょう…」

「うぬぬ…」

「政重様…某は470年後の世から…この戦乱の世に迷い混んで来た身…先程申し上げた様な事が起こらぬ様…今ここで…これから起ころうとしている事、起こるであろう出来事を全て…私の知り得る限りの事を…政重様…あなたにだけは…包み隠さず…この場にてお話しさせて頂き…共に対策を講じて参りたいと存じまする…」

「お…おう…良し、解った…聞かせてくれ、重兵衛!」

「はぁっ!それでは、その五年後…」

「おう、五年後…どうした?」

「多賀谷の大軍が岡田・猿島に侵攻して参ります!政重様は古間木城主渡辺周防守様と共に岡田・猿島勢約3400を率いて五家・千本木に布陣し、約5000の下妻多賀谷勢と激突します!」

「うむむ、そしてどうなったのじゃ?!」

「はぁっ、大激戦の末、政重様率いる岡田・猿島勢の大勝利にございました!」

「良し!連戦連勝じゃ!」

「はぁ…しかし…結城晴朝様の仲裁を受け入れて和睦いたします…」

「な、何ぃっ?!和睦じゃとぉっ?!」

「はい…しかし、お陰で10年間は平穏な日々が続きます!」

「さ…左様か…」

「はぁ…しかし…その10年後に…また多賀谷の軍勢が金村台に攻め寄せて参ります!」

「おのれぇっ、多賀谷の奴らめぇっ!」

「しかし、この合戦も小田氏治樣の援軍を得て多賀谷勢を撃退し勝利を納めます!」

「うむ、流石、伯父上じゃ!有難い!」

「この年、甲斐の武田信玄樣が御亡くなりに…」

「何と…甲斐の武田殿が?!」

「はい、そしてその年、御館樣の小田城が…完全に落城いたします…」

「何じゃとぉっ?!伯父上の小田城が完全に落城じゃとぉぉっ?!」

「はい…翌年…後を追う様に豊田城・石毛城も…」

「な…何ぃっ?!こ…此所も…兄上の城もかっ?!」

「ははぁっ…」

「しかし、重兵衛…お主、豊田城は四百七十年後の世にも在ると申したではないか?」

「如何にも、然れど…あの城は400年以上も後の平成という時代に建てられた物に御座ります…殿を偲び…領民達が領民達の手で建てた城に御座ります!」

「何と…兄上を偲び…領民達の手で…とな?」

「はい、400年以上も後の世でさえ、治親樣・政重様御兄弟がこの土地の領民達に慕われ続けていた証が470年後の豊田城…天空にそびえる天守閣を擁する豊田城なので御座います!」

「むむむむ…兄上は解るが…このわしも…領民達に慕われておったのか?」

「はい、政重様は強面で、何時も戦の事ばかり考えて居るような方だと思われがちですが…それもこれも全ては領地領民達の為、何より兄である治親樣の御為であると領民達は皆、解って居りました!」

「ま…真か?…重兵衛!…そ…それは…真なのか?!」

「はい!」

「わ…わしは…何だか…嬉しい…ぞ…重兵衛…うっ…うっ…」

「斯く言う某も470年後の世で豊田城に参る時は必ず、治親樣、政重様、御家来衆の方々を想って居りました…」

「左様か…左様であったか…重兵衛…ううっ…うっ…」

「ははぁっ!」

「して…重兵衛、兄上や…わしの…最期は…どのようなもので…あったのかのう?」

「はい、政重様は脳卒中の為、石毛城内にて敢え無い最期を…」

「な…何じゃ?…その…脳卒中…とか言うのは?…流行り病か何かか?」

「はい、470年後の世では成人病と言われております。」

「成人病?」

「簡単に言うと贅沢病です。」

「ぜ…贅沢じゃとぉっ?!」

「はぁ…何と申し上げましょうか?…まぁ、好きなものばかり食べている方が…よくかかる病でして…酒や肉ばかり毎晩召し上がっている様な方が…」

「た…たわけ!重兵衛…わ…わしは、この土地で採れたものしか…食っとらんわ!まぁ…たまに…しし鍋等も…喰らったりもするが…酒も…まぁ…飲むことは飲むが…毎晩…しょ…少量じゃ…」

「政重様、酒も、しし鍋も、たまには良いですが、毎晩となると流石に身体には良くありません!」

「うぬぬ…し…して、兄上の…最期…とは?!」

「はい、…それが…大変申し上げ難いのですが…」

「兄上の最期とは…そんなに酷いものであったのか?」

「はぁ…実は…」

「実は何じゃ?!重兵衛っ!申せっ!!」

「はぁ…それが…その…」

「重兵衛!今は戦乱の世じゃ、何があっても不思議無いこと…申してみよ!」

「はい…殿は…殿は…謀反にあって…毒殺されます!」

「な…何ぃっ?!謀反じゃとぉっ?!」

「はい…」

「だ…誰じゃっ?!一体誰の仕業なんじゃっ?!申せっ!申してみよっ!!重兵衛ぇっ!!」

「はい…飯見…大膳…樣に…御座います…」

「な…何じゃとぉっ?!…い…飯見…大膳…となっ?」

「はぁっ…飯見大膳樣に御座ります…」

「飯見大膳と言ったら…重兵衛…わし等兄弟が幼き頃から面倒を見てくれてきた譜代の家臣なるぞ…何故…何故大膳は兄上を…豊田家を裏切ったのじゃっ?!」

「はぁっ、それもこれも全ては多賀谷の重鎮・白井全洞めの謀に御座ります!」

「また白井全洞かっ?!あ奴許さんっ!叩っ斬ってやるっ!!」

と言って政重様は刀を取って立ち上がった…

「それは成りませぬっ!」

「どけっ!重兵衛っ!!」

「成りませぬっ!!」

「どくのじゃっ!重兵衛っ!!」

「政重様っ!焦っては成りませぬっ!未だ…何も起きては居りませぬっ!」

「しかし重兵衛っ?!」

「今っ、誰かを斬ってしまわれたら政重様っ!あなたは…乱心者と…相成り申すっ!」

「なっ、何じゃとぉっ?!わしが…乱心者じゃとぉっ?!」

「左様に御座いますっ!未だ誰も死んでは居りませぬっ!」

「それが何じゃぁっ?!」

「未だ誰も死んでは居らぬのですっ!未だ何もっ…されてはっ…居りませぬっ!!」

「うぬぅぅっ…」

「解って頂けましたかっ?政重様っ?!」

「うむぅぅっ…してっ…大膳はっ…大膳はっ…豊田城主と…なったのか?」

「いいえっ…豊田城は…豊田城は…多賀谷に…乗っ取られます…」

「うぬぅっ…多賀谷めぇぇっ…兄上の…兄上の子供等は…どうなったのじゃっ?!」

「はいっ、治親樣婦人と幼い二子は真瓜に身を包み武蔵柿木(現埼玉県草加市)に逃れますっ!」

「そうかっ!姉さんと…子供等は…無事なのだなっ?!」

「はいっ!」

「大膳や他の家臣達はどうなったのじゃ?!」

「はい、奥方様や幼子達の無事を見届けた豊田・石毛の忠臣達は血路を開き石毛城に集結します!」

「おう…籠城戦じゃな?!」

「はい…直ぐに白井全洞が700余兵を率いて石毛城に攻め寄せて参ります!」

「うむ…」

「ですが豊田・石毛250余兵頑強にして、白井全洞は攻め倦み…一端、兵を退いて援軍500を加えて再度石毛城に来襲、豊田・石毛勢死闘を繰り広げるも…流石に1200対250では形勢不利は否めず…七歳の幼君太郎正家樣の安泰と、主君殺しの大罪人飯見大膳の引き渡しを条件に下妻に降ります…」

目を閉じて、これを黙って聴いていた政重様の瞼からは大粒の涙がボタボタ零れていた…

「すまぬ…皆…わしのせいじゃ…すまぬ…うぅっ…わしが…贅沢病等で…死ななんだら…その様な…うぅっ…何と云う…事じゃ…何と云う…兄上…うぅっ…皆…本当に…すまぬ…うぅぅっ…わしは…もう…酒は飲まぬぞぉっ…重兵衛っ…肉も…食わぬからっ…許せよ…皆…うぅっ…

許してくれぇぇぇぇっ…………………………

して…大膳は…どうなったのじゃ?」

「はい…飯見大膳樣は多賀谷政経に呼び出され、石毛城内に引き渡されます…」

「な…何と…」

「憐れ大膳樣は…金村郷士・草間伝三郎殿の手により…首をはねられ…大膳殿の一族36人も…皆…首をはねられ…大宝の堤にて…晒し首と相なりました…」

「な…何と云うことじゃ…わしさえ…生きて居れば…何と云うことじゃ…大膳にも…すまぬことを…許せよ…大膳…それも…これも…わしさえ…のう…生きて居れば…その様な事を…施ずに…済んだであろうに…」

政重様の目からボタボタ…ボタボタ…大粒の涙が溢れ落ちて行った…

「政重様…その様な事にならぬよう…某、政重様と充分に策を講じて参りとうと存じまする…」

「うむ…」

政重様、刀を置いて着座す。


 「これから起こるであろう歴史上の出来事を…これより、事細かく政重様にだけ…お話して参ります。」

「うむ…」

「そして…当家にとって不吉なことが起こらぬように…私と政重様とだけで策を講じて参ります故…これから話すこと…絶対に他言無用に御座ります!」

「うむ。」

「しかし…これから起こるであろう歴史上の出来事を…我々の手で変えてしまうと…恐らく…歴史は…違う形で代償を要求してくるやも知れません…」

「歴史が…代償を?」

「はぁっ、例えぼ治親樣が毒殺されるのを防いだとします。」

「ふむ。」

「しかし、その代わりに御館樣が亡くなったり、又或いは政重様が亡くなったり…ということが起こるやも知れませぬ…」

「うぬぅっ…誰かの命を助けると…他の誰かが死ぬる…と云うことか?」

「はぁっ、確証は御座いませぬが…恐らく…その様な感じに…歴史は釣り合いを取るために亡くなるはずだった方と同等か…或いは…それ以上の方の御命を奪いに来るかと…」

「むふぅ…そう言うことか…そういう心配があるから…お主…なかなか本当の事を申せなかったのだな?」

「はい…実は…その通りに御座います…そして…某が、この戦国の世に迷い混んできた理由を考えて居りました…」

「お主が…この戦国乱世に…迷い混んで来た理由…とな?」

「はあっ!」

「して…その理由とは…解ったのか?」

「はい…某…470年後の世にて…志半ばで頓死してしまわれた政重様や、譜代の家臣に裏切られて毒殺されてしまった治親樣の無念を…いつも考えて居りました…」

「うむ…。」

「そして…この度の…この戦乱の世…政重様や治親樣が未だ生きて居られる…この戦国乱世の豊田の地に…某が迷い混んで来た理由とは…この…豊田家の悲しい歴史を変えることなのではと…実は某…470年後の世で…刀など握ったことも御座いませぬ…馬に跨がったことも御座いませぬ…が…どういう訳か道鎮殿の手解きを受けた途端に…自分でも驚く程の技量が備わるのを感じました…腕力も…元々、力は強い方だとは思いますが…自分でも信じられない程の腕力が…備わって居りました…そして…飛び上がる能力も…ちょっと…皆様のそれとは比べ物にならない程の…跳躍力が備わって居りまする…走る速さは人並みでしたが…政重様、ちょっと…お庭を失礼致します!」

「どうした?重兵衛?!」

私は石毛城の庭に降り、大きい岩の前で片膝を着いてしゃがみ…政重様に一礼してから…一番大きい岩を片手でヒョイっと持上げてみせた…

「じゅっ…重兵衛っ…おっ…お主っ…何と云う馬鹿力…」

「政重様、この通り…」

そう言って私は大岩を降ろし…今度は、そのまま…石毛城の屋根までヒラリと飛んでみせた…

「お…お主っ…何と云う身の軽さ…」

私は、またストンと庭に降り立ち、片膝を着いて「大変失礼を致しました!」と言って一礼し、スッと石毛城内に戻った…

「重兵衛…お主には凄い能力が…備わっておるのじゃな?!」

「どうやら…その様に御座います…この力…全て…余す事無く…治親樣と政重様の為だけに…使い切る所存に御座います!!」

私はしっかりと政重様の目を見て言った。

「うむ、頼むぞ重兵衛っ!!」

「ははぁっ!」

「何とも頼もしき奴よっ!」


そして、その日の晩…


政重様と私は遅く迄…


これから起こる事への対策を綿密に話し合っていったのだった…


が…


やはり…


その後…


政重様が…


「よしっ!重兵衛っ!これでもう大丈夫じゃ!…今宵は最後の酒宴じゃ!!」


と言って…


酒盛りになっていったのは…


言う迄も無い…。


私は心の中で密かに呟いた…


(この人…やっぱり…脳卒中が心配だわ……)


と…。


いやぁ、結構長くなっちゃいましたが…

最後まで読んでいただいて有り難うございました!

物語ほ未だ未だ続きますが…

今宵は、ここまでにしとう存じます…

其ではまた、次回に…

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