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つぐみ龍の伝説  作者: 永田常雄


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4/6

④ 永田重兵衛常充

まぁ…何と申し上げましょうか…

令和の時代に生きる夫婦が戦国時代にタイムスリップして豊田治親、石毛政重、原外記・与五郎親子、飯岡道鎮達と共に多賀谷勢を倒しながら彼等の無念を晴らしていく…的な話になる予定です…

 早速その日から私は道鎮殿に付いて剣術の稽古や馬の乗り方等の手解きを受けることになったのだった…

因みに私の身体は30歳程若返っているのだろうか?…

30年前の私と言えばハードロックバンドのヴォーカルをやっていた頃で…

凄く長髪だったので直ぐに丁髷を結うことが出来たのだった…

侍らしい姿に変身した私は奥さんの処へ行ってみた…

奧さんは奥方様の侍女として忙しそうに働いていた…

因みに奥さんも30歳程若返っているようだった…

「お互い随分若返っているみたいだね?」

「本当、あなたバンドやってた頃に戻ってたもんね?!」

「腰も首も痛くないよ!」

「うん、身体が軽くて何でも出来ちゃいそうだわ!」

「しかし…どうやら…本当にタイムスリップしたんだね?!」

「うん!でも何だか楽しいの私!!」

「えっ?!だって…もう…あの時代に戻れないかもしれないんだよ!」

「ユウちゃんの事は気になるけど…あの子ももう大人よ!何とかなるわ…それにあなたと一緒にタイムスリップなんて何か楽しいじゃない?!」

「いや、だって…学費とかは?!」

「大丈夫!あの子なら何とかするわ!きっと…」

「いや、大丈夫って…ママ…」

「あっ、道鎮殿よ!」

「お主等は真に仲が良いのう?!」

「あ、いや、その…」と私。

「はい!ラブラブです!!」と奥さん。

「ん?!何じゃ?!らぶらぶじゃと?!」

「あ…いや…何でもござらん…道鎮殿、さぁ参りましょう!!」私は道鎮殿の小袖を引っ張って二の丸の方へ向かった…

奧さんは笑いながら此方に向かって手を振っている…


 二の丸の前には領民の方々が集まっていた…

「道鎮様、雷神様の御遣いは…そちらの方かいのう?」

「いんや、龍神様の御遣いだっぺ?」

「あいや…暫く…皆の衆、此方の方は永田常充殿と申す…去る遠き西国より参られた…当家の客人じゃ!」

「客人?!雷神じゃねぇのけ?」

「いんや、龍神だっぺよぉ?!」

「あー、暫く暫く!孫兵衛どんに庄兵衛どん…この方は客人じゃと申しておるじゃろう!」

「んだかぁ…では雷神様の御遣いは何処さ行ったのかいのう?」

「それが…わしにも判らんのじゃが…金村の雷神宮へ…さぁーっと飛んで行ってしまったと言う話じゃ…」

「おお、やっぱり雷神様の御遣いだったんだべ…」

一同ざわついているので私は大きな声で自己紹介を始めた…

「皆様!某、去る遠き西国より参りました永田常充と申します!!本日より暫く此方で厄介になり申す!以後お見知り置き下さいますよう宜しくお願いいたします!」私は深々と頭を下げた…

「何だか道鎮様と違って小綺麗な御侍様じゃのう!」

「んだなぁ、道鎮様の様に薄汚れてねぇなぁ…」

「な、何じゃとぉっ?!わしの何処が薄汚れて居ると申すのじゃ?!」

「いんや、道鎮様はそこが良いとこだっぺよ!」

「んだ、親しみやすくてえがっぺな!」

「しかし、永田様は何かこう…今迄見た御侍様とはどっか違うっちゅうか…何か不思議な感じのする御方じゃのう…」

「いやいや、永田殿もわしと何も変わらん普通の侍じゃ!暫くこの吉沼の地に滞在するので皆の衆、宜しく頼むぞ!」

「皆様宜しくお願いいたします!」

「此方こそ永田様、宜しゅうに!!」

皆さん気さくで優しそうな方達だ…


 明朝、私は道鎮殿に乗馬と剣術の稽古をつけてもらっていた…

「お主、なかなか筋が良いな!」

「いやぁ、道鎮殿が教えるのが上手いのです!」

「いやいや、二日でここまで上達する者をわしは見たことがないぞ!」

「そんな…」

すると、いつの間にか奥さんが来ていた…

「あなたカッコイイ!」

「おっ、ぶらぶらな御妻女のお出ましじゃな?!」

「道鎮殿、ブラブラじゃなくてラブラブですよ!」

「おおっ、らぶらぶじゃったな?!わっはっはっはっは…お主の御亭主は剣豪の素質があるぞ!」

「まぁ、あなた凄い!」

「いや…何か道鎮殿の教え方が上手いので自分でもビックリする程…剣を振ることが出来るんだョ!」

「これだけ剣を操ることが出来れば、今すぐ多賀谷の連中が攻めて来ても充分に太刀打ち可能じゃ!」

(た…多賀谷…遂に来た…宿敵のワード…)

私と奧さんは顔を見合わせた…

「ん?!どうかしたか?」と道鎮殿。

「い、いえ…何でも御座らん…ただ…多賀谷と言えば我等にとっては宿敵…ちと身構えました…」

「左様、あ奴等め、汚い手を使って、あの手この手で我が殿の領地に攻め込んで来やがる……おっと、御妻女には退屈な話じゃったな?…この後、御亭主を豊田城迄連れて参るが留守を頼むぞ!」

「はい!」と奧さんはいつの間にか薙刀を手に構えていた…

「頼もしい御妻女じゃ!」

 

 私と道鎮殿は馬に乗って豊田城に向かっていた…

「お主の言うところの四百七十年後の世と今のこの戦国の世とでは何か違いはあるのか?!」

「はい、人々が馬に乗って移動することは先ずありません!」

「何?!…ではどうやって遠方迄参っておるのじゃ?!」

「はい、470年後の世の中にはクルマと言う乗り物があって人々はそれに乗って遠方迄行き来しております!」

「何じゃ?!そのクルマとか言う乗り物とは?…」

「はい、タイヤと言う輪っかが4つ、小さな部屋に付いておりまして…エンジンと言う動力装置によって、その4つの輪っかが回転して移動して参る物でございます。」

「ふうむ…何か…よう判らんが…面白そうじゃのう?!」

「はい!小さな部屋の中にはハンドルと言う細い輪っかがあって、それを回すことで進む方向を変えたり…ブレーキと言う踏み板を踏むと停まったりします!」

「ほう…なかなか楽しそうじゃな?!」

「はい!クルマに乗ることは楽しいことでございます!」

「わしも…いつか…その…クルマと言う物に乗ってみたいものじゃ!」

「はぁ…」

「おっ、間もなく豊田城じゃ!しかし、お主、馬に乗るのも達者になったのう?!」

「はい!道鎮殿のお陰にございます!」

私と道鎮殿が豊田城に着くと…何と治親様が直々に出迎えてくれた…

「おぉっ、よう参った!さぁ上がってくれ!」

「はぁ!」「はぁ!」

私と道鎮殿は治親様の後について本丸へと向かって行った…


「殿、本日は御招きに預かり…」

「道鎮、その様な堅苦しい挨拶等せんで良いと申しておろうが?!」

「はぁ…しかし…殿…」

「道鎮!!」

「ははぁっ…」

「はっはっは…まぁ良い…二人とも面を上げよ!…さて、永田殿…見違える程の侍っぷりじゃな?!吉沼での暮らしには慣れたか?」

「はい、道鎮殿にいろいろと教えていただき、充実した日々を過ごさせていただいております!」

「ほう…道鎮は飲んだくれては居らぬか?」

「と…殿っ…また…そのような…」一同笑う。

「はい!道鎮殿には朝から晩まで侍の『いろは』を教えていただいております!」

「ほほぅ!」

「殿!この永田殿は教えたことを直ぐにこなしてしまう程の剣術の才がありまする!馬も一日で乗りこなす程の達者ぶりで、最早如何なる戦であろうと堂々と参戦出来ましょうぞ!」

「真か?!それは頼もしいのう永田殿!このところ多賀谷の奴等の動きが怪しいとの事…充分に備えておいてくれよ!」

「はぁっ!当方このような貴重な戦力を得て腕が鳴り申す!」

「はっはっは、其でこそ闘将道鎮じゃ、いつも勇ましくて頼もしい奴め!」

「ははぁっ!」

「ところで永田殿、お主に新しき名を授けようと思うのだが…」

「新しい名を…でございますか?」

「左様…重兵衛…じゃ。」

「重兵衛…」

「そうじゃ!重兵衛じゃ!如何かな?」

(確か…私は470年後の世の豊田城に行って治親様や政重様や御家来衆に願い事をする時は『永田重兵衛常充』と名乗っていたよな…ただ単にカッコイイ名前だと思ったので…)

「勇ましい侍が付ける名かと…」

「うむ、お主に相応しい名じゃ!」

「殿!解りましたぞ!」

「何じゃ道鎮?!」

「夢ですな?」

「????」

「某、夢の中で永田殿にそっくりな侍が『重兵衛』と名乗って居ったと申し上げたではござりませぬか?!」

「そうか…そうじゃそうじゃ!お主もそのような夢を見ておったと申していたな?!」

「はい!」

「真に不思議なものよのう?」

「如何にも…」

「であるから…永田殿、わしは御主を『重兵衛』と呼びたいのじゃが…」

「有り難き幸せ、重兵衛、恐悦至極に存じます!!」

「うむ、今日から御主は『永田重兵衛常充』と名乗るが良い!」

「ははぁっ!」


 豊田城から栗崎城に帰る道中…

「のう、重兵衛…」

「はい?」

「やはり良いなぁ…御主にぴったりの名じゃ!」

「有り難うございます!」

「何か…こうして一緒に馬に乗って居ると、御主がまるで竹馬の友のように思えてくるのじゃ!」

「某も同感にござります!」

「治親様も政重様も我が吉沼の殿も皆素晴らしい殿様じゃ!、わしはこんな素晴らしい殿に仕えることが出来て真に幸せ者じゃ!おまけに御主のような友も出来た!」

「はい!某もあのような良き殿と…良き友を得て幸せに存じます!!」

「御主、巧いのう!よぉし、今宵は飲もうぞ重兵衛!!」

「はい!」(今夜は飲み過ぎないようにしよう…)


 明くる朝早く…私と道鎮殿とで朝稽古をしていると何処からか蹄の音が聞こえてきた…

雪のように白い立派な馬から降りてきたのは石毛政重様であった…

「朝っぱらから精が出るのう?!」

「はぁ!おはようございます政重様!!」

私達は片膝を付いて頭を下げた…

「挨拶等良いから続けろ!」

「はぁっ!」「はぁっ!」

…………………………………。

「御主中々太刀筋が良いな…何処で習った?」

「ここで道鎮殿にでございます!」

「ほほう…たった二~三日で出来る太刀捌きとは思えんが…ところで其の方、兄上に『重兵衛』の名を授かったらしいのう?」

「はい!」

「重兵衛…何か…似合うのう…御主に…」

「はぁっ!有り難き幸せに存じます!!」

「良い良い手を休めるな!(うんうん中々良いぞ…豪快な太刀捌きだな…)何時多賀谷の奴等が攻め込んで来るとも知れぬ!励んでおいてくれよ重兵衛!」

「はぁっ!」

「うむ。」政重様はヒラリと馬に跨がって疾風のごとく去って行った…

(豪快な方だなぁ…)

「政重様は御主を気に入った様じゃな?!」

「えっ?」

「あの方は滅多に他人を褒めたりする様な方ではない…恐らく、御主が治親様より『重兵衛』の名を授かったと聞いて祝いに来てくれたのじゃ!御主の太刀筋を見て目を細めて居ったぞ!良かったなぁ、重兵衛!」

「はい!」

私と道鎮殿は、政重様と真っ白い馬が見えなくなる迄見送ってから、朝飯を頂きに屋敷の中に入っていった…。






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