95水筒と愛し子のこと(他者サイド)
王家はトカゲドリのことについてもてんやわんやだったが、実はクッキーが話題に上がり、また食べたいと王はぽつりとこぼしたとか。
庶民の人々の口からは、水筒の話題が今沸騰している。
便利な持ち運べる長細い水筒は長持ちするし、中でこぼれてという事故も起きない。
それに、なかなか頑丈で冒険者達も重宝し始めている。
「おい、この水筒、本当にすげぇよな」
「ああ。とても長持ちするからびっくりだよ」
「暑いものもかなり長く熱いままだぞ」
「おれ、もう一つ欲しいなぁ」
「毎日箱の中に入ってるから、買おうと思えば買えるけど、ほかのやつも買っていくからなぁ」
男達は冒険に今や、必需品になっている水筒を前に語り合う。
箱は自動販売のボックスのこと。
略式で箱、箱と言えば大体通じる便利アイテムになっていた。
「すごいよなぁ、あの販売なんちゃら」
「お金を入れると出てくるってな」
水筒も話題だが、水筒を買うためにお金を入れるための魔導販売機と名付けられているもの。
機器ではなく魔法による無理矢理なシステムなので、機器ではない。
エレラが混乱するので穏便上そう呼んでいるに過ぎない。
この世界の者達は機器など知らないので、単に機器という名前だと全員思っている。
特許を受理した事務も名前だと思っている。
複雑怪奇な上に力技の魔導販売機は、だれもまだ再現できていない。
理屈ではなく、無理矢理な方法で出るようになっていたので事実上、独占。
「あれ、欲しいな」
「ああ。欲しい」
たくさんの人達が欲しいと願う。
毎日補充されるが、それでも一日一回だけしか買えず。
なんとか知り合いと買い合う。
彼らは必死になり、水筒を得ようとしている。
冒険者にとって必需品。
「それより、聞いたか?」
「あ?なにがだ?」
「今の筆頭愛し子がよぉ、なぁ?」
話題は愛し子の方へ変わる。
「変更されたとか、代わったとか聞いたぞ」
この国で愛し子についてのことは、耳にすれば話題にする程度の大きな変化。
「実は小耳に挟んだんだけど」
女冒険者は小さな声で囁く。
とはいえ、ギルド内なので全体的に声は響く。
「どうやら、妖精がいなくなっちゃったらしいのよ」
「私も聞いたわ」
「いとこの愛し子が怒ってた」
火の国の妖精は地元ではかなり深刻なことなのだ。
見えずとも、彼らはその存在を信じている。
小さな頃から、寝物語で聞かされるからだ。
元筆頭愛し子のミナイサがあんな風に傲慢で、妖精らを軽く扱ったのは見えないからというのが強い。
「えー、そんなに?」
「ミナイサって子が居たでしょ?」
「いたいた。愛し子にしてはやけに顎をあげて、まるで王女になったような歩き方をしてた子でしょ?」
「そう、その子」
こくりと頷く冒険者。
「その子さ、ポカやって妖精を離反させたか、離れさせたか、嫌われたんだって」
やれやれ、と女は首を振る。
「ごっそりいなくなったとか」
「そんなに?それって普通じゃないよね?」
「普通じゃない。いとこによると妖精って本当に見離さないらしいから、なにしても」
愛し子の間でミナイサは一体、なにをやらかしたのだという話題でいっぱいだ。
「どうなってるの?」
「もう筆頭は変わったから問題はなくなったのでは?」
「それが、妖精がいなくなった原因を調べなきゃでしょ」
「愛し子協会の中じゃ大事ってわけね」
女冒険者らはキャアキャアと騒ぐ。
「愛し子って、凄くわがままだったってその子言ってたわ」
「ふふ。筆頭なのだから誰だって自尊心が大きくもなるわよ」
二人のギルド員は、コップを揺らして違う話に花を咲かせた。