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おっとりの秘訣は夫を窓から落とすシミュレーションをしているから〜一人旅で出奔、のはずがずっと夫がついてくるので〜  作者: リーシャ


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91/119

91王がトカゲドリをどうにかしてくれと言うが夫は素知らぬ顔を貫く

土地の永久権利書を持って役人と、王が共に来た。


国の長というのは多忙なはずなのだが、よく時間を詰められたなと感心する。


まあ、誰だってトカゲドリ相手となれば話を聞きたくもなるから。


他のことなど、後回しにもなるというもの。


王が横で役人を伴い、説明を受ける。


二つの土地と新しく建つ新居の土地が、コレスの名義に変更されていく。


「では、サインをお願いします」


足されて男はカリカリとペンで用紙に名を記載した。


それにニッコリと笑うエレラ。


(やっと!安心して、魔法温泉に堂々と入れるー!)


紙を渡されてコレスはさらりと見やり、エレラも覗き込む。


そこには王族もとれない、強力な権利が書かれていた。


頬が緩む。


「私たちの土地になったね」


コレスは頷き亜空間にしまいこむ。


盗まれず安心なしまい場所に今や、なっている。


「こほんっ」


王が咳払いをするので二人は彼を見る。


王というが、結構若い人で父親世代よりは若い世代の顔つきをしていた。


二人の注目を向けさせた王は顔を真面目にさせて、にこりと外行きの笑みを浮かべる。


エレラでさえアルカイックスマイル、つまりは偽物の笑顔だなとすぐにわかる笑みを浮かべている相手。


緊張しているのだろうなと思う。


「あー、えー」


多分、トカゲドリのことを言いたいんだろうけど……。


どう言ったものかという感情が相手から滲み出始めた。


確かにね。


街中で育ててはいけない生物に指定されてないから、指摘してもなんの意味もないと彼も思っているのかも。


「この家にいるトカゲドリのことなのだが。えー、あー、そのぅ」


トカゲドリの名前を出した途端コレスが眉をぴくりと動かす。


「そんなもの、いたか?」


「…………なっ!?」


そっちの方向に誤魔化すのね。


「いやいやいや!いるではないか?あのトカゲドリが!外に!」


首を振ってこちらへ目を向けられるけれど、首をエレラも傾けた。


「なっ!?エレラ殿までっ」


卵のおいしさはなにより優先される。


「と、とにかく!あのトカゲドリをだなぁ!」


と言い終える前にコレスは首をさらに傾けて、エレラもうんうんと頷く仕草をする。


言うと思った。


その通りで、エレラもこの展開にやっぱりなと、王の言うであろうセリフに二人は何通りか予測していた。


「勝手に好きにすればいい」


可能性の高い言葉に思った通りだな、と二人してやっぱりと目だけで言い合っている。


「退かしてくれとっ、へ?あ、あの、コレス殿?」


王はトカゲドリをどこかへ移してくれと言ったが、途中で男からの言葉にぽかんとする。


「こちらはなにもしない。やりたければそちらでなんとかすればいいと、言っている」


「ななな、なんと!?そ、そんなことは無理に決まってっ」


「少し、いいですか?」


手を上に上げて、笑みを浮かべたまま言葉を繋げる。


「え、あ、ああ。構わない。好きに話してくれ」


話し合う台に登れないと理解しかけている王が、力無く許可してくる。


「夫はあれをどうこうするつもりはないです。ただ、卵を食べるためだけにあそこで飼ってるんです」


「卵……ああ!トカゲドリの卵か!まさか、食べているのか?」


「食べてますよ、毎日。クッキーに使ったりもしてますよ」


王は小さくクッキー、と呟く。


食べることが滅多にできない卵をクッキーに使った。


クッキーとはこちらでしか使わないが、焼いた菓子を食べたことを思い出して、そちらを思い浮かべたのだろう。


卵をそのまま使わずに、他の素材と混ぜるなんて絶対にやらないのだろうな。


「トカゲドリの卵を」


「な、なんてことだ」


トカゲドリの卵は本当に貴重なもので、王族でも滅多に食べることはないので考えられないらしい。


軽くびっくりな悲鳴まじりの言葉を周りも呟く。


先ほどの土地のサインをしてくれと言った人もまだここにいて、話を聞いている。


「もっと静かにしろ」


コレスがじっとりとした顔をして口だけで周りを黙らせる。


「す、すまない」


「いや、しかし」


「シッ、何も言うな」


護衛騎士のような人が何か言いかけたが、同僚みたいな人に止められていた。


「コレス殿」


王が彼に問いかける。


「トカゲドリは我々ではどうにかできない」


「さぁ、おれにもどうにもできない。困ったな」


これっぽっちも困ってない言い方に王は震える。

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