89見張りをトカゲドリの前に連れて行くのがわかりやすい
彼が帰ってきた後、エレラは王の配下たちがまだ近くにいる、と伝える。
当然、彼は知っているので、舌打ちをしながら邪魔だなと呟く。
彼らを動かしに行くと言って、外に行く。
家に入る前から既に家の前に張り付く彼らのことを目にしていただろうけど、エレラに伝えることで頭がいっぱいであまり気にしていなかったのだろう。
自分が気にしたからこそ腹が立ったし、邪魔に思っただけだろう。
言わなければ、いつまでも張り付かれても気にしなかったなと思う。
彼らを追い払うために、脅すかのような怒りの雰囲気で配下たちに何か言っていた。
彼らは青ざめて、さらに逃げるように向こうへ行く。
王に恐らく見張る様に言われたのに、あっさり逃げていいのかと言いたくなったが。
「ひっ、も、申し訳ありません!」
「二度と来ません!」
トカゲドリと最強の男がダブルで近くにいるとなれば、どんな存在でも怖気付くことなど、当たり前だろうけど。
こちらを見たコレスは、もう大丈夫だと仕草で伝えてくる。
(王様が今度こそコレスを怒らせたら、絶対に国自体に制裁を加えるからなぁ)
見張られるのは前の街でもう充分だし、彼らが同じような真似をするのならば、今度こそ容赦しないと意志を硬くする。
見張られるのはうんざりだ。
中に入ってきた夫にありがとうと礼を言う。
相手は照れる照れる。
相手は驚きながらも、嬉しそうにこちらを見てぎゅっと手をつないでくる。
腰を引き寄せたら引っぱたかれると本能的にわかっているのだろうね。
「あいつらは、追い払っておいた」
賢いなと褒めておく。
見られている気配もなくなりホッとしていく。
ギルドはどうだったかと聞く。
依頼は子供を雇うことなので、簡単に許可が出たとうれしそうに伝えてくる。
Sランクの男が依頼をしたので信頼度は高い。
「予定は空いてるやつが多いから、また聞きに行けば日にちがわかる」
「わかった」
納得してこくりと、首を振る。
彼は、また王が余計なことをして見張りを置いていくだろうと、予想を伝えてくるけれどそんなものはまっぴらごめん。
「はぁ、やだな」
見張やこちらを見ようとする者は縛って適当に、どこかに捨てておいてと、怒りを口に表す
コレスも当然だと頷く。
エレラは共感してお願いねと頼む。
「まかせろ。ふんじばって捨てる。なんなら、トカゲドリの前に捨ててやったなら……二度と見張なんてやるやつもいなくなる」
それはいくらなんでも、精神が崩壊してもおかしくない所業である。
そうだ、回数を決めておけばいいのだと提案。
「二回目は理解できてないからいいとして、三度目にトカゲドリの方に連れていくってことで。それ以降は、トカゲドリの前に連れて行けば誰も見張る人なんていなくなるだろうね?」
簡単に想像できる結末に、王のやり方は不味いと頭が痛くなる。
取り敢えず温泉の源泉の土地の件を済ませてから、今回のことをやるべきだと思うんだけど。
彼らはその場限りのことをやってしまい、コレスのことをこうやって怒らせている。
コレスが前に言っていたが法的に町に入れてはいけない生物として、決められているのだ。
それに、住む土地が正式に私物として認められて仕舞えば街でよくなくても、飼えるようになってしまう。それに、トカゲドリをそれでも飼えないと法律を変えたとしたら王城でも買うのは許されなくなると思うのだがと疑問が湧く。
「もし、飼うのダメって言われたら空中に浮かせればいいと思う」
それと、やはりトカゲドリを移すことも動かす気もない男なのでどれだけ言おうとトカゲドリがここから動かされる方法は今の所ない。
Sランクに頼んでも、他のSランクに恨まれるリスクを背負えるのかという問題が出てくるし。
そんな依頼を受けるか不明なところはあるし。
王家という権力を嫌うSランクは、多いと彼から聞いている。
言うことは聞かないと、どう転ぶのかわかりきっているコレスはニヤッと笑う。
「そうなんだ。のんびりしたいから見られると気が散るし」
ボソッと、捨てろと言われたら王城に捨てると言う、最強のズボラ男。
王よ、下手につつかない方がよさそうである。
次の日、また見張りがいるので手紙を渡すようにとコレスに手紙を渡す。
「やつらにこういうことをしても無意味だ。ああいう政治に身を置く奴らは人の話を聞かない」
「知ってるよ。でも、トカゲドリについて警告するのはそっちというより配置される人たちに向けてかな」
「そうか……その優しさはおれだけに注がれても構わないと思わねぇか?」
「今は手紙に嫉妬してないで早めに通達してきて」
次はトカゲドリの前に放り出すと書いておいた手紙とコレスを、見張りをしている人たちへ送り出す。
「な、なんだっ!?」
こそこそしていて、姿が見えていないからとバレているとはほんの少し思い込みたかった彼らの悲鳴が聞こえる。
Sランクに隠れられるなんて、本気で思ってないだろうし。




